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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第1章 幼女時代編
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第16話 初めてのお仕事

 冒険者登録が終わり、レオとフィンレーを探す。

 レオはまだ受付にいるが、フィンレーはもう終わって壁の依頼を見ているようなので、そちらに向かう。


「何かいいのあった?」

「リア。そうだね……無難に薬草集めでいいんじゃないかな。ついでにジェームズさんに森での注意事項とか聞いてさ」

「ああ、いいかもね」


 薬草集めは常設依頼だ。

 この薬草というのは文字通り薬になる植物のことだ。頭痛薬や腹痛に効く薬、傷に塗る薬とか毒を中和する薬などを作るためのもの。


 この世界にポーションのような魔法薬というものは現状存在していない。

 この世界の魔法が魔力回路によって作られるものである以上、液体にそのような効果を持たせることができない。

 固形なら可能かといわれると、正直微妙だ。

 魔力回路が刻まれた固形物を飲み込むというのもあれだし。

 仮に刻んでも呑み込めるような大きさにならないだろう。

 ただでさえ回復魔法系は術式が複雑だし、キチンと作用してくれるかもわからない。

 生成する水に回復魔法を染み込ませるなどの研究はされているようだけれど、今のところ成功例はないようだ。


「これでオレも冒険者だ!」

「こんなところで騒がないで」


 レオも登録が終わったようなので、これから薬草集めに向かうことを話した。


「最初だしな。しょうがねーか」


 念願の冒険者になれて興奮してるようだけど、ちゃんと弁えてはいるようで、反対はされなかった。


 ギルドから出て父と合流した。


「リアー! 大丈夫だったかい!?」


 抱きつこうとする父をかわし、これからの予定を伝える。もうそんな歳じゃないんだよお父さん。


「うん、いいんじゃないかな。それじゃあ薬草の種類とか、出てきたら魔物についても教えよう」


 父からの了承も得られたので、早速街の外へ向かった。


 門から出てしばらく行った先に森が広がっている。

 奥深くへ行くと魔物が出てくるが、浅い場所であれば滅多に出てこない。もちろん絶対ではないので、警戒を怠ると危険だ。


 森の浅い場所にも薬草は生えているので、子供の冒険者たちの稼ぎ場所になっている。大した稼ぎではないが一食分くらいにはなるだろう。


 薬草は種類によって薬になる部分が違う。花の部分を使うこともあれば、根っこを使うこともある。

 集める薬草についてちゃんと調べて、必要な部分を綺麗に持ち帰らないとお金にならないので気を付けないといけない。


 と、いうようなことを父から説明された。薬草については図書館で調べられるだろうから、今度キチンと目を通しておこう。


 三人で薬草を集めながらも、父からの講義は進む。


 森に入るときは警戒を怠らないこと。

 周りの音をよく聞き、生き物の気配を感じ取ること。

 火は燃え移る可能性があるから使わないこと。

 足元や木の上にも注意すること等々、為になるお話を聞けた。


 他にも冒険者同士での争いを防ぐために他人の獲物を横取りしない、なるべく離れて活動する、危険な目に遭っている冒険者がいても、助けを乞われるまでは手を出さないといった冒険者としての注意事項も教えてくれた。

 何事も面倒は避けたいよね。



 薬草を粗方集めたので、少しだけ森の奥に入ることになった。

 魔物の一匹でも見ておけばいざという時の心構えになるだろうと。


「あんまり奥には入らないよ。僕が先導するから、周りの警戒を怠らないように」

「「「はい」」」


 剣を構え、ゆっくり森を進む。


 しばらくすると父が立ち止まり、右の方を指差す。

 その先には薄緑色の肌をした気持ち悪い人型の魔物がいた。手には太めの木の棒が握られている。

 大きさは私たちとそう変わらないか、少し小さいかくらいだ。ゴブリンかな。

 危機察知が反応していない。どうやらこちらには気が付いていなければ危機察知は反応しないらしい。

 まあレーダーとは違うしね。あくまで身に迫る危険に関してのみ反応してくれるようだ。


「この辺りにはあれ一匹だけのようだね。ちょっと倒してくるから、よく見てるんだよ」


 そういって父は剣を構えなおし、ゴブリンに向かって走り出した。

 ゴブリンが父に気が付き、棒を振り回す。

 父は剣を振るい、一振りで動き回る木の棒を切り落とし、二振り目でゴブリンの首を切り落とした。


「すげえ……」


 レオが驚嘆している。フィンレーも声には出さないが同じようだ。私も父の洗練された動きに驚きを隠せない。

 普段の剣術の打ち合いでは多少手加減をされているとは思っていたけど、こんなに強いなんて。

 剣の動きがとても綺麗なのだ。いつか私もあんな風に振るえるときがくるだろうか。


 父が私たちを手招きするので向かう。

 そこにはかすり傷どころか返り血すら浴びていない父と、首から血を垂れ流しているゴブリンの死骸がある。


「これはゴブリンだね。低級の弱い魔物だ」


 討伐証明は耳か魔石だそうだ。ゴブリンは魔石以外使える部分が無いため、魔石を持ち帰ってくるのが一般的だ。

 なので、まずは魔石を取り出すようにと言われた。

 どうやら解体について教えてくれるらしい。


「時間をかけると臭いで他の魔物が寄ってくるかもしれないから、平行して埋めるための穴も掘り始めよう」


 森の中は火気厳禁……なるほど、こういうとき魔法が使えなくて不便なのね。

 ひとまず、レオが解体、私とフィンレーで穴掘りの作業を始めた。



 そこそこの深さの穴を掘り終えたころには、レオもゴブリンの魔石を取り出せたようだ。

 途中レオの呻き声が聞こえたけど、代わってやることはできない。これも勉強だし、私たちも後でやらされると思うから。

 レオの手はゴブリンの血で汚れているし、魔石自体も血だらけだけど、生憎飲み水用の水しかない。

 解体してぐちゃぐちゃになったゴブリンを穴に落として土をかければ終了だ。


「今は飲み水しかないからこれを使うけど、解体をするなら水は多めに持っておくといい。こういう時に水を使える魔法使いがいると助かるんだよ」


 そういって水袋からレオの手と魔石に水をかける。

 せっかく水魔法が使えるんだから水を生成する杖くらい持っておきたいなあ。



 その後も日が暮れる前まで同じことを繰り返し、私たち三人とも穴掘りとゴブリンの解体をすることになった。

 血がすごいし臭いもキツイしで好んでやりたいことではないね。

 ゴブリン自体は全て父が倒した。周りの警戒を……なんて、正直必要ないくらい父はすごかった。


 今日の成果である薬草数種とゴブリンの魔石を持って冒険者ギルドへ向かい、今度は父を含めて四人で受付まで行く。

 受付のお姉さんは父の姿を見て何かに納得したらしく


「ジェームズさんが面倒を見ているんでしたら安心ですね」


 と言っていた。父はどうやらそれなりに有名人らしい。


 今日の成果を渡し、精査をしてもらったあと、お金を渡された。

 全員で分ければそんなに多くはないが、初めて自分で稼いだお金だ。感慨深い。


「今日は冒険者になった記念日だ。僕の取り分は勘定しなくていいから、三人で分けなさい」


 と言ってくれた。頑なに受け取ってくれなかったので、三人で分けてギルドから出る。


「お父さん、今日はありがとうございました」

「「ありがとうございました」」

「どういたしまして。ただいつもこんな風に上手くいくわけではないから、油断はしないように」

「「「はい」」」


 いつか自分達だけでゴブリンと戦ってもらうから、それまで修練を怠らないようにと言いつけられて、今日は解散となった。



 次の日、さすがにあれだけお世話になった父に何もしないわけにもいかないと思ったが、稼いだお金で何かを買って渡してもなぁとも思い、父の好物を母と一緒に作って、夕食に出してみた。

 その際感謝のメッセージも一緒に送ってみたところ、泣いて喜ばれたので、まあいいかなと。

 喜んでくれるのが一番だね。


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