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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第5章 中央大陸・自己分析編
151/212

第150話 今日はお休みします

 特に何事もなく密林から脱出し、エルゲルまで戻ってくる。

 ケガの治療は……どうしようかな。背中だけだし、そんなに酷い痛みでもないからいいかなぁ。

 ケガの多さや深さで治療費って変わってくるからね。問題ないならこのままでいい。


 お金が入ったらコッソリ回復の杖を買おうかな。回復魔法が使えることは誰にも話してないし、血のついた服だって着替えてしまえばバレない、はず。

 バレたらいろんな意味で怖いかも。


 魔石を売るのも明日に回して、宿に帰る。その頃にはすっかり深夜になってしまった。

 集めた椿の種を魔道袋から取り出す。


「うーんと……干しとけばいいんだっけ?」


 干して、殻を剥いて、蒸して、絞る。そんな感じだった気がする。

 とりあえず、しばらく干しておこう。その後のことは明日の朝考えることにして、今日はもう休もう。

 やっぱりエルフたちはまだ帰って来ていない。いつ帰ってくるのかわかんないけど、きっと無事に戻って来てくれるはずだ。


 明日もまた密林に行こうかな。魔石集めと、椿の種をもっとほしい。他にも食べられる植物とかあるかもしれないし、そういうのも探してみたい。

 エルフ達が帰ってくるまで、一人の時間を楽しもう。



 翌朝。外を見ると、なんと雨が降っている。


「マジかぁ。ここに来てから雨なんて初めてじゃないか?」


 南大陸に来てから雨が降ったのは初めてな気がする。何も今日じゃなくたっていいのに。


「うーん……雨の中、密林で、一人、魔物討伐……さすがにやめておいた方がいいかな」


 密林でも雨が降っているかは知らないけど、視界不良の中、面倒な魔物を討伐するのは骨が折れるだろう。仕方がない、今日は大人しくしていよう。


「そうと決まれば、油を搾ってみようかな」


 一晩干した椿の種。次は殻を砕いて中身を取り出す作業だ。


「一個一個潰していくのは面倒くさい……そこで!」


 じゃーん!

 なんて他に人がいるわけじゃないけど、効果音を口で言いながら取り出したのは障壁魔法の杖。

 この前セレニアにこの杖の修復をしてもらった。

 その後何度か使い心地の確認をしていたら、なんと今までできなかったことができるようになっていた。


 まず今までは杖の先に障壁を一枚作ることしかできなかった。

 でも修復したこの杖は、その障壁を変幻自在……は言い過ぎだけど、今までよりも形を変えて作り出すことができるようになった!

 四角い箱のようにすることもできるし、丸いドーム型にすることもできる。その中に入って結界のように使うことができるのだ。もちろん逆に閉じ込めることもできる。

 そして杖を動かせば、障壁も一緒に動いてくれる。まあ、前から動かすことはできたけど、その時よりもずっと楽に動かせる。

 いろいろできるようになって、とっても便利になった。

 そんな障壁魔法の杖を今何に使うかというと。


「硬い板の上に種を置いて、その上から障壁魔法で押しつぶせば、殻をいっぺんに割れるはず!」


 ペンチとかプレスマシンとか、そういったものの代用品として使うのである。

 さすがにセレニアも、修復した杖がこんな使われ方をするとは想像もしてなかっただろうなぁ。私もしてなかった。

 何事もチャレンジ。これで上手くできればそれでいいのさ。



「いい感じですねぇ」


 目の前には見事に殻の割れた椿の種。あとは中身と殻を分けてっと。


「あとは……蒸すんだっけか」


 砕いて蒸すんだっけ? まあどっちでもいいや。どうせ絞る時に潰れるし。


 実は今泊まっている部屋は結構お高いところなんだけど、キッチンが備え付けになっている部屋なのだ。美食の街って言われているからだろうか。今までキッチンが付いている宿なんてなかったけど、ここにはある。

 でも今は料理大会を開催している。世界中から腕に覚えのある料理人が集まって露店を開いているのに、自分でわざわざ料理をしようとは思わない。

 なのでキッチンはあるけど、私たちが使ったことはほぼない。暑いから温かいお茶を飲むこともないし。使った食器を洗う時くらいだ。


「でも、今日は使う。食器や鍋は持ってるし」


 ここにも一つ二つ置いてはあるけど、自分で野営をするときに使う鍋があるから、それを使おう。

 さすがに蒸し器は無いけど、無くてもどうにかなる。ちゃちゃっとさっきの種の中身を蒸す。


 蒸している間にプレスマシンの用意だ。

 そしてそんなものはない。上から押すのは障壁魔法に任せるとして、受け皿は……おろし器でやってみるかな。いい感じに油が流れてくれそう。

 器を割らないように気を付けないとね。



 蒸し終わり、丁寧にプレスして油を絞り取る。

 最後に網目の細かいざるで濾して不純物を取り除いて、小瓶に入れれば完成だ。


「おー、確かに油だね」


 結構な量の種を絞ったけど、それでも採れる油はほんの少しだけ。でも種が結構大きかったおかげで元の量から四割か五割くらいは油に変わったかな。

 それに油だから伸びが良いはずだ。それなりに長く使えるだろう。


「あー、疲れた。お昼過ぎちゃった」


 障壁魔法で細かい作業をするのは難しいね。力加減を間違えると惨事になりそうだし。無事にできて良かった。


「ん~本物かどうかはやっぱりわかんないや」


 噂に聞いていただけで、実際に椿油を使ったことがあるわけじゃないのよね。

 でもこの油が偽物だとしても、肌と髪に良い効果をもたらすならそれで十分だ。まずは自分の肌に合うか試してみよう。


「うん……まあ油だし、よくわかんないけど。特に匂いもしないし、しっとりしてる……ね」


 手に塗っても特に異変はない。そんなにすぐに効果が出るわけでもないし、しばらく様子見だな。


「髪にもつけてみるか」


 手に油を広げて、髪に塗ってみる。全体にまんべんなく。べたつかない程度の少量を薄く伸ばしていく。


「なんか……なんかすごい。ワックスでも塗ったのかってレベル」


 さっきのボサボサ髪がしっとりして纏まってきた。油塗ってるんだからそういうもんなのかな。それとも塗る量が多かったか。


「うーん。これも明日にでもならないとわかんないな」


 とりあえず、このまま放っておこう。目に見えて効果があると嬉しいんだけど。

 油は絞れたし、この後どうしようかな。


「せっかくだし、食べ歩きと行こうか」


 雨は降っているけど小雨程度だし、街中を歩くくらいなら問題ないだろう。魔石を売りに行って、そのお金で美味しいものでも食べよう。

 ピザとか揚げ物とか、そういったものは売ってないのかな。チーズはたぶんあると思うんだよね。揚げ物はどうだろう、さすがにトンカツは見たことないかも。前世に似た料理も探したいな。

 考えただけでお腹が空いてくる。さっそく行ってこよう。


早いものでもう150話です。ここまで読んでくださっている方々に感謝感激です。


タイトルは変更しませんでした。

あらすじを変更しました。

キーワードからご都合主義タグを削除しました。

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