第146話 出立
今日はついにエルフ三人がBランクへの昇格試験を受けに行く日だ。朝早くから行くようなので、私も早起きして宿でお見送りだ。なんだけれども。
「無茶はしないでよ? 危ないことしないでね? 変な人について行ったりしちゃダメだよ?」
「はいはい」
出かける側であるエルシーナが私に向けて再三注意事項を言い聞かせてくる。
さっきからこの調子。信用の無さが浮き彫りになっていますなぁ。まあ、出かけるんですけども。
「わかったから。むしろそっちが気を付けてよ」
「うん……心配。どうして連れていけないのかな……」
「仕方ないでしょ、もう。遅刻するよ?」
試験内容は受験者にしか知らされておらず、例えパーティメンバーでも教えられない。
そんなわけで、私はエルフ三人の試験に立ち会うことはできず、またどこで何をするのかも知らない。街の外で行われるため、帰ってくるまで数日はかかる。
そんなわけで、エルシーナが今日この瞬間まで、一人になった私が何かをやらかさないかと危惧したのか再三注意事項を言い聞かせてくる。
もう子供じゃないのよ……。
「そろそろ行くぞエルシーナ」
呆れた様子で私とエルシーナのやり取りを見ていたセレニアが催促する。
「頑張ってね」
「リアさんもいろいろ気を付けてくださいね」
「はーい」
クラリッサが含みのある言い方をしながら部屋を出て行き、セレニアがそれに続く。
「それじゃあ行ってくるから……ちゃんと待っててね」
「たった数日じゃないの……ちゃんと待ってるから、いってらっしゃい」
終始眉が下がりっぱなしだったエルシーナも、ようやく部屋を出て行った。
そんなに不安かね? 私に信用がないのはわかるけど。
「ん~! まだ朝早いし、二度寝しようかな」
ぐーっと伸びをして、ベッドに飛び込む。
普段は筋トレだの素振りだのをやりに行くけど、今日くらいは二度寝をしてもいいだろう。まだ早朝だし、出かけるにも少し早い。
「久々に一人だなぁ」
エルフ三人と合流してからは、一人になれる時間は少ない。
一人で街の観光に行ったりすることはあっても、宿で一人ということはなかったな。
「あとで依頼受けに行こーっと」
Cランクになったし、難しい依頼を一人で受ければ評価も溜まる。
その分危険だというのはわかっているけど、虎穴に入らずんば虎子を得ず、というやつだ。
「まあ、だからエルシーナがあんなに心配してたんだろうけどね」
私が一人で依頼を受けに行くのが目に見えていたんだろうな。全くもってその通りである。
悲しませるというのがわかっていても、人にはやらねばならぬ時があるのだ。
私の行動は別に必要に駆られて、というわけではないけど。
「二度寝したらギルドに行くかぁ」
無理さえしなければ大丈夫だろうと信じ、タオルケットに包まって目を閉じる。
久々の二度寝。前世では二度寝が大好きだったけど、滅多にできない楽しみだった。朝って大体忙しいもんね。
こっちに来てからも朝が忙しいのは変わらないので、二度寝は滅多にできない楽しみだ。
特に眠かったわけではないけど、目を閉じていれば自然と睡魔がやってきて、私の意識は消えていった。
久々の二度寝を堪能し、数時間後に目が覚める。
お昼には少し早い時間。身支度を整えたら冒険者ギルドに向かおう。
食べ歩きをしながら街中を歩く。まだ料理大会は続いているから、街の活気も相変わらずだ。どれもこれも美味しくていい。
この料理大会は、料理ギルドが主催している。
昔は商業ギルドが主催していて、大会規模も小さかったけど、年々規模が大きくなってくると商業ギルドだけでは対応しきれなくなってしまった。
そこで商業ギルド内で料理大会の開催業務についていた人達に、いっそ新しく料理専門として独立してもらおうという話になり、結果生まれたのが料理ギルド。
なので、この料理ギルドというものはエルゲルにしか置かれていないんだって。
この街の一大イベントだし、きっと収入もすごいんだろうなぁ。
本選で使われるメイン食材は決まったのかな。本選が始まる直前まで売り込みは受け付けているみたいだけど。
運よく食材が見つかったら嬉しいけど、そう簡単にはいかないよね。お金ほしい。
この先も書けてはいたんですが、大きく改編しているので投稿まで時間がかかるかもしれません。




