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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第5章 中央大陸・自己分析編
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第142話 南大陸到着!

主人公視点です

 船は順調に航海を続け、予定通りに三週間ほどで南大陸へと到着した。

 船に取り付けられた魔物避けの魔道具のおかげで、面倒なことも起きずに済んだ。魔道具様様だね。


「ん〜。やっと着いたー!」


 凝り固まった身体を伸ばしながら叫ぶ。青い空、白い雲、心地のいい風、潮のニオイは相変わらずだけど、それもまたよき。ただ日射しは暑い。

 やっぱり陸は良いね。地面があるというのは安心するよ。船旅も悪くないけど、ほどほどくらいで良い。


 それに、今回の船旅の途中には体調を崩してしまったし。


 月のモノが来ていた上に、あの時はとにかく船の揺れが酷くて、船酔いになってしまった。あんなに吐いたのは初めてかもしれない。落ち着いたかと思って部屋に戻ったけど、結局エルシーナに連れられてトイレに逆戻りする羽目になった。

 なんというか、ダブルパンチって感じでしたね。みんなには申し訳ないことをした。

 回復魔法が船酔いに効いて助かったよ。


 月のモノって不便よね……生涯子供を作る気はないので、老化が止まる際にこれも止まんないかな。女神様に言えば止めてもらえるかも?

 エルフはいいね、十年二十年に一回しか来ないんだって。羨ましい。

 そういえば、元気になった後に月のモノが毎月来るのは人間種の証に近いと言われたよ。まさか生理周期で種族を特定されるとは思わなかった。

 寿命云々の話は……老化が止まったら考えよう。どうせ何かしたところでどうにかなるものでもない。


 今は、今後の話でもしよう。ようやく南大陸に着いたんだから。

 南大陸の港町。ここはそんなに大きな町ではない。冒険者ギルドとか宿とか、そういったものは一応あるけど、規模は小さめだ。なので、ここでやることは特にない。


「これからどうすんの?」


 ストレッチ感覚で身体を伸ばしていた私の後ろには、いつものエルフ三人がちゃんといる。

 三人とも心なしか表情が明るいので、やっぱり陸に着いて安心したんだろう。


「船の中で話し合ったように、目的地はドワーフの国だ。だがここは広い。移動には時間がかかるだろうな」


 南大陸はかなり広い。東大陸が丸々三つ以上入るんじゃないかと言われている。

 ここからドワーフの国まで馬車で一月以上、最寄りの街に立ち寄って滞在すればもっとかかる。


「しかし、急ぐ旅なわけではない。今日はここで宿をとって休み、近日中に出発すればいい」

「そうだね」


 のんびり行こう。暑いし。

 ようやく本格的な旅って感じになってきたし、何か新しい発見でもあったらいいな。




 とある町の宿屋。その四人用の小さな部屋にて。


「完成! 『恐怖、湯沸かし器!』です!」


 ジャーン! と口で効果音を出しながらエルフ三人にお披露目したのは、前々から作っていた振動ヤカンの完成品。これで火が使えなくてもお湯が沸かせる!


「それあんまり使わないでほしいんだけど」

「ホント懲りないですね」

「画期的ではあるんだがな……」

「ひ、否定的……!」


 エルシーナが嫌そうな顔をし、クラリッサが呆れた顔をし、魔道具大好きなセレニアでさえも苦笑いをする。

 どうしてこんな反応をされているかというと。


「もうケガしないでよ」

「大丈夫だよ。ちゃんと調整したから」


 そう。これの試作中に私はケガをしたのである。具体的には手に穴があいたのだ。


 元々はヤカン自体を振動させる予定だったのだが、超音波レベルの振動をヤカンでやるのは難しかった。

 そこで、風魔法を使って超音波を発生させることにし、それを水の中に向けて放出する魔道具に変更した。

 音が空気の振動によって発生するなら、風の刃や空気の塊を飛ばせる風魔法なら超音波の放出も可能かと思ったのだ。


 しかしその場合、魔法発動石が必要になる。悩みに悩んだ結果、初級杖を分解して魔法発動石を取り出し、こっちの魔道具に使った。学校で杖の構造を勉強しておいて良かった。

 中級杖もあるし、私の役割は回避盾だ。杖を使う機会は少ない。

 この初級杖はサイラス先生から譲り受けたものだけど、使わないまま魔道袋の中で眠っているよりはマシだろう。そう思いたい。


 そして作られた試作品は尖った巨大鉛筆みたいな形になったけど、まあ許容範囲だ。


 で、問題はここからだった。


 ちゃんとできてるかな? なんて思って、超音波が発生する先端部分に手を近づけて、本体のスイッチを入れた。

 すると、手が痛いな? なんて思った瞬間、手から血しぶきが上がった。

 まるでドリルのように、細かい無数の風の刃が私の手の肉を抉りだしたのだ。びっくりした。

 一瞬にして机の上が血の海になった。手を貫通する前にスイッチは切れたので、机は無傷だった。

 全員が悲鳴を上げて阿鼻叫喚となった昼下がりの宿屋の一室。

 治療や片付けが終わった後、三人から思いっきり怒られた。不可抗力なんです……。


 とりあえず、このままでは危険なので構造を安全な形に変えることにした。


 超音波の放出される先端部分が、向きを変えられないように形を固定型にした。三脚みたいな長い脚の間に水の入ったコップを置いて、三脚の真ん中にある先端部分を下げて水の中に浸けるって感じかな。

 あとコップに穴が空いても困るので、放出距離もごくわずかな短さまで弱めた。

 これでなんとかなるだろう。


 そして試運転の結果、約十分でお茶を飲むには熱いくらいのお湯ができるようになった。うん、成功だ。こんなもんだろう。

 ヤカン要素は消えたけど。


 そんなわけで、この魔道具は『恐怖、湯沸かし器!』という名前になった。



「これで火が無くてもお茶が飲めるねぇ」

「そうだな……むしろこの辺りは強力な魔法として利用できそうなんだがな……」


 セレニアが興味深そうに魔力回路図を見ている。欲しいというので書いてあげたのだ。

 手の肉を抉る威力なので、魔法にしたらまあまあ強力だろうね。その辺りをどうするかはお好きなように。


 魔道具を手に入れるには、自作するか買うかの二択だ。どちらが良いかというのは、その魔道具によるとしか言えない。

 冷蔵庫なら作る方がいい。密閉度の高い箱に術式を刻むだけ。そんなに複雑な術式ではないし、箱もそこまで拘らなくてもいいから買うより安上がりだ。

 私達の場合、魔石は自分で用意ができるからね。


 これで湯沸かし器はできたし、冷蔵庫もできた。

 あとはなんだろう。車かな。


 車はタイヤが無ければ浮遊魔法で浮かせる予定だけど、どうやって移動させるかで悩んでいるんだよね。浮遊魔法自体に推力はもちろんあるけど、普通に歩くよりはマシかなぁってレベル。

 プロペラをいくつもつけたり、大きなプロペラをつけてみたりしても大丈夫だとは思うけど、その辺りは実際に作ってみないとどれくらいの速度になるのかわからない。

 ジェットエンジンでも作れればと思うけど、仕組みがよくわからないから難しい。空気を取り込んで、圧縮して熱して放出? 炎の勢いで速度が出るってことかな。


 それよりも、コレを使ってみる方がわかりやすいかもしれないなーとも思うんだけど……。


「この手の爆弾の分析が終われば、車にも使えそうなんだけどな」


 爆弾の爆発による威力を上手く利用できれば、素晴らしい推力を生み出せるのではないかと思う。

 いやでも瞬間的なものかも。それ以外の推力も考えておかないとダメかな。というか、爆弾使うと危険度が跳ね上がる気がする。安全性も考えないと。難しい!

 どちらにせよ、ドワーフの国に行かないと部品が無い。まだ先の話だ。ゆっくり考えよう。


目指せ総合評価3000pt!

毎日投稿するとクオリティ下がるので程よく更新します!

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