第138話 大漁だー!
障壁魔法で川を渡っていると、初めて川渡りをしたあの時のことを思い出す。何度川に落ちたことだろう。
またロック鳥いないかな。美味しかったし、また空中戦がしたい。
「この辺でいいかな」
川の中央辺りまで行くと遠いので、四分の一ほど渡った場所で止まる。
魔道袋から餌となる魔物の肉を川に大量投下する。大丈夫かなこれ、環境破壊とかにならないよね。水は元々濁っていたし、魔物のせいということにしよう。
一旦岸まで戻り、獲物が集まってくるのを待つ。
「その間にセレニアが障壁魔法に乗れるか試そう」
「リアが背負っておいた方がいいんじゃない?」
「そうだね」
セレニアの方が背は高いけど、私の方が鍛えているし、身体強化もあるし、セレニアは鍛えても貧弱だし、大丈夫だろう。
「大量ですね」
「バッシャバッシャ水しぶき上がってるねー」
餌を投下した場所でたくさんの魔物が暴れているのが見える。
最初のうちは少しずつ集まって来て水しぶきも大したことなかったんだけど、しばらくすると魔物同士で奪い合いが始まったのか、激しい水しぶきと血しぶきと咆哮が聞こえてきた。時折デカイ魔物の頭が見える。どうしよう。
「……セレニアの最大火力を叩きこめばいけるはず!」
「本気か?」
「勿体ないじゃない」
あんなにたくさんの水の魔石があるのに、手に入れないで放っておくなんてできない。駆除にもなるし、やらないなんて選択肢はない。何より、あの魔物を集めたのは私たちであってだな……。
とにかく、セレニアを背負って川を障壁魔法で渡る。
水しぶきが上がっている場所の近くまで行くと、大きい魔物同士が争っているのが見える。魔物同士で攻撃することってあるんだね。
少し高めの位置から見下ろしているので、まだこちらに魔物たちの意識は向いていないようだが、それも時間の問題だろう。早く終わらせるに限る。
セレニアが杖を構え、魔法を発動する。人の頭くらいの大きさがある尖った土魔法が無数に飛んでいき、激しく水しぶきを上げながら沈んでいく。
魔物の悲鳴が響き渡り、直撃したらしい魔物が浮き上がってくるのが見える。このままだと流されてしまう、拾っていかないと。
「ちゃんと捕まっててね」
セレニアに注意をして、障壁魔法を使って移動をする。
魔法が当たらなかった魔物が何匹かいるので、その辺の対処をセレニアに居場所を教えながらどうにかしてもらう。
その間に私は魔物を掴んで絞め殺すなり踏みつぶすなりして息の音を止め、魔道袋に片っ端から突っ込んでいく。片手で障壁魔法の杖を持っているので予想よりも大変だ。
いっそのこと川に飛び込みたいけど、魔物が危険だし背中にはセレニアがいるしで無理。次はもっと川岸に近い位置でやるか、他に方法を考えよう。
釣り……というより、漁だろうか。それを終え、川岸まで戻ってくる。
魔道袋から獲物を取り出して解体。川岸で暇していたエルフたちにも手伝ってもらおう。
「エビ……かなぁ。」
その中の何匹かにエビによく似た魔物がいた。
もしかしたらザリガニの可能性を捨てきれないけど、魔物の生態系など知らぬ。
海外ではザリガニも食べるらしいし、これも食べれば美味しいかもしれない。
もしこれがエビなら……。川エビ……と同じものかはわからない。魔物だし、大きさは一メートルを超えてるから、どう考えても川エビではないんだけども。殻も硬いし。
川エビならやっぱりから揚げがいいよね……この大きさを丸ごと揚げるのはどう考えても無理なんだけど。とりあえず殻を剥いて身を焼いてみようかな。
ザクっと頭を切り落とし、身体強化を使いながら無理矢理殻を剥ぐ。
「殻は硬いけど、身は食べられそう」
火を熾し、フライパンに切ったエビを並べる。味付けは塩でいいかな。でも泥臭い可能性を考えて、香辛料をまぶしておく方がいいか。
しょうゆに近い調味料も売っているし、欲しいな。やっぱり食料を長期保存できる環境を作らないとダメだなぁ。
「エビ好きなの?」
「エビ好き~」
エビが焼けるのをひたすらに待っていた私に、エルシーナが話しかけてくる。
川岸で、今私たちはさながらバーベキューをしていると言えるだろう状況にある。単純にお昼時になったからだけど。
狩った魔物をひたすら解体して魔石を集めると、お金にならない部位は捨て、食べられそうな部位が残る。その肉類などをせっかくだから昼食としていただくことに。
私はしばらくそのままエビを焼いていたけど、他三人もそれぞれ昼食の準備をしていた。
パンを切って焼いたり、簡単なスープを作ったりしてくれている。多少の野菜は港町で購入済みなので、それなりに豪華な昼食になっていく。本当にバーベキューしているみたいで楽しいね。
しばらくしてエビが焼けてきたので、試しに一つ食べてみる。
「うーん……まあ、まあ……微妙」
エビっぽい味はする。でも普通のエビの方がやっぱり美味しい。もしかしたらエビではないのかもしれない。
「ザリガニだろうか」
「そのハサミの大きさから考えるに、ザリガニの方が可能性は高いな」
セレニアから悲しい推測を聞かされる。私もそんな気はしてた。だってここは川だもの。エビよりもザリガニの方が多いでしょう。たぶん。
「むぅ……川だし、仕方ないか。今度は海でもやろうか」
海でやればエビも釣れるかもしれない。
あと食べるにしても、海の魚介類の方が安全そうな気がする。この口の中に広がる、隠しきれない泥臭さよ。
「まだやるの……?」
「この十日間で水の魔石を大量に手に入れないといけないんだから、当然でしょ」
エルシーナが信じられないと言わんばかりの表情で聞いてくるので、これまた当たり前と言わんばかりの表情で返しておいた。というか、エルシーナ何もしてないじゃないの。
「食事取ったら宿に向かって、明日から海でやろう」
今度は全員でやろうね、と付け足してみたら、エルシーナとクラリッサに案の定嫌な顔をされた。セレニアでさえも気乗りしていない様子だけど、最終的には全員了承した。
水の魔石は大事よ。
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さすがに遠いので毎日更新が努力目標になりそうです(泣)




