第135話 妹分の余計な一言があったけど…
ニナと別れ、エルフ三人に声をかけて馬車を進ませてもらう。門を出て馬車に乗り込もうとしたところで声がかけられた。
「一つ聞いていい?」
「はいどーぞ」
エルシーナが切り出してきた。先ほどの発言が気になったらしい。そこまでかね?
男性は無理、女性はイケルかも~くらいだった私がいきなり美女がどうのこうの……そりゃ気になるか。
今ちょっと気分がハイになってるから、今なら何でも答えちゃう。人間予想外の出来事に出くわすと変になるもんだ。
でもとりあえず進みながら話そうということで、馬車に乗り込む。
前の馬車と違って御者台と荷台の間に壁は無く、四本の脚と屋根しか付いていない。近づけば会話も聞こえるだろう。
「美女が好きって?」
「あー、うん、まあ、はい。綺麗な人は好き」
「この前の女性が好きかどうかというのは?」
「それは嘘ついてない」
女性と付き合った経験なし、告白された経験もなし、だから大丈夫かはわかんないよって言うのは本当。恋愛をするならね。遊ぶなら別でしょう。
私別に、好意さえ伝えられなければ男性と二人で過ごしても大丈夫だし。ハグとかもできるよ?
「恋愛はともかく、お遊びの相手はできれば美女がいいよねって話」
「結構アレな発言してますよ」
「そう?」
クラリッサが呆れたように言うけど、そんなに目くじら立てるようなことかなぁ。
誰だって美女は好きでしょう。
「正直私は、リアは同性愛者である可能性が高いと思っていた。同性愛に理解が深いと感じてな」
セレニアにほとんど断定するかのような平坦な声で言われた。風俗がどうとか、エルシーナはセレニアに気があるとか、そういうことを言っていたからだろうか。
確かに異性愛者だったらそんな考えに至ることってあんまり無さそう。バレるべくしてバレた感じ。
「そうね……そうだろうとは思うけど、恋人なんてできたことないから」
同性の恋人ができたらどうなるんだろう。べったり甘えている自分の姿しか思い浮かばないな。そして何もしなくなるんだ。
「こういう話は聞かされたら嫌かと思って言わなかったけど……大丈夫?」
この手の話は人を選ぶ。同性愛ともなるとなおさらだ。この世界は同性愛に優しい世界だけど、全員がそうというわけでもない。
「それを聞いたからといって、私がリアを軽蔑するようなことはないから安心していい」
「ワタシもです」
「ありがとう」
セレニアとクラリッサが何でもないことのように言ってくれる。嬉しい。正直隠し事をするのは息が詰まるのだ。美女を目で追って頬を緩ませるくらい許してほしい。
エルシーナはどうだろう。馬の手綱を引きながら話を聞いている彼女の表情は、ここからでは見えない。優しい彼女がそれだけで私を嫌いになるとは思わないし、思いたくないけど。
「エルシーナはどう? 無理そう?」
「う、ううん。そんなことないよ。わたしもその……同性愛者だし」
「そっか。ありがとう」
エルシーナが同性愛者……! と、驚くようなことはない。というか、この前までセレニアに気があると思っていたから、当然のように同性愛者だと思って疑問にすら感じてなかった。
もう自分の思考が同性愛のそれで笑えてくる。
「身近な人物を相手にするときは色々気を付けるんだぞ」
「うん。私は後腐れなく美女と遊びたいだけなので大丈夫です」
「それ本当に大丈夫ですか?」
別に酷いことをする予定はないよ! ただちょっと遊びたいだけ。いつかそんな素晴らしい日が来ることを夢見ているだけです。
「リアももう成人になる。止める気はないが、ほどほどにしなさい」
「はーい」
エルフは同性愛に寛容だと思っていたからそんなに心配はしていなかったけど、やっぱりこういうカミングアウトは緊張するね。受け入れてもらえてよかった。
その代わりに遊び人のレッテルを貼られた気がするというか、評価が下がった感じがするけど。私まだ一度もナンパなんてしてないのよ? これからする予定なだけで。
でもナンパする度胸が自分にあるかな。無さそう。普通に風俗で遊びそう。お金貯めておこう。
私のカミングアウトで何かが変わることもなく、普段と同じように穏やかで、楽しくて、大変な旅路が続いていった。
目指せ総合評価3000pt!
評価やブクマ、感想などありがとうございます!
これからも頑張ります!




