第133話 準備も終われば
王都に来て数日。全員が朝の鍛錬を終えた後に出かける様子を見せなくなってきたので、切り出してみる。
「そろそろ港に向かう?」
「そうですね。観光もしましたし」
エルフ三人も同意をしたので、今日は馬車を借りたり日用品や食料などを購入したりして過ごすことに。
クラリッサとエルシーナに馬車の選別を任せ、私とセレニアで買い物に出かける。
船に乗るのだから、その間に必要なものや、日持ちのする食べ物などを購入する。女四人、使うものなど大体一緒だ。
「南大陸まで船でどれくらいかかる?」
「中央大陸から直通で行けば……三週間くらいか」
船の種類や海路に異常などの問題が起きなければ、の話らしいが。
南大陸に向かうと海の温度が上がっていき、生態系が変わる。出てくる魔物も変わる。『魔物の海』から水系の魔物が生まれて海まで流れてしまった可能性だって否定できない。
魔物除けの魔道具が船には使われているけど、それだって絶対じゃない。海は危険が多い。そのため安全なルートを通るために、到着が遅れることもある。
「南大陸って暑いの?」
「他の大陸に比べるとな。しかもこれから暑くなる季節だ。もしかしたら快適な船出ではないかもしれない」
時期で言えばまさに夏。
正直言って、腕につけている蛇革の防具は通気性が悪くて暑い。汗で張り付いて気持ち悪い。かといって、外せば腕の身体強化が使えなくなるので外すのは不安だ。
「暑い」
「服に冷風の魔力回路でも刻んだらどうだ? あれならそこまで厚い布でなくてもなんとかなるだろう」
「うーん、布に刻むのは苦手だけど……やってみるかぁ」
蛇革みたいな分厚いものなら刻めばいいんだけど、布だと魔力染み込ませた特殊な糸を使って縫い付けないといけない。革でも縫っていいんだけどね。裁縫はどうも苦手。
ライラに依頼しようかな。でも届くまで時間かかるだろうし、その間自分がどこにいるかわからないし……自分でやるしかないか。
「買うものが増えるね」
「船の中は暇だろうからな。いろいろ買ってもいいだろう」
船の中では腕の分析をしていることがほとんどだろうけど、ずっとそればかりしていたら疲れてしまう。もちろん個室が取れたらの話だけど。
たまには他のこともするだろうし、今回は身体を動かすスペースもあるかわからない。暇つぶしの道具は大事だ。
その後馬車を無事に借りられたエルシーナとクラリッサと合流、屋台がいろいろ出ている通りで買い食いをして昼食を済ませる。
宿に戻ろうとしたところで、可愛らしい声がかかった。
「あ、この前のおねーちゃん」
「んー? えーっと、あの時の子だね」
この前ニナに待ちぼうけをくらった時に、お金と伝言を渡しに来た女の子だ。
こんなところに一人でどうしたのかと思っていたら、ワラワラと子供たちが集まってきた。どうやらあの時見かけた子たちはみんなこの辺にいたようだ。
小さなこの子たちの目線に合わせるようにしゃがみ込む。
「エリンだよ」
「ああ、エリンね。何してるの?」
「おなかすいたから食べものを買いにきたの」
そう言ってコッソリと手のひらで握りしめていた硬貨を見せてくれる。この額でお腹いっぱいは無理だろうけど、食べ物自体は買えるだろう。
「そっか。ニナがくれたの?」
「ううん。シドおにーちゃんがくれたの」
「ああ、仲直りしたんだ」
あの後シドはちゃんとニナ含め子供たちに謝ったらしい。この子たちもシドを許して仲良くしているそう。あのがめついシドがお小遣いを渡すんだから、本当なんだろう。
ニナはここにはおらず、シドと一緒にお勉強中だそうだ。この子たちも絵本を読み聞かせてもらっているようで、全員が字を覚える日も遠くないだろう。絵本が役に立っているみたいで良かった。
「リア、その子たちは?」
「ん? ああ、この前知り合った子たちだよ」
エルフ三人を後ろで待たせたままだった。この子たちもこれから食事らしいし、この辺でお暇しよう。
「私は明日この街を出るから、ニナによろしくね」
「おねーちゃんどこかいくの?」
「うん、冒険者だからね。旅に行くんだよ」
立ち上がり、またね、とエリンの頭を撫でる。自分よりも背の低い子の頭は撫でたくなる。私の頭がよく撫でられる理由がなんとなくわかった気がするな。
エリンが私に手を振るので、後ろにいた子供たちもつられて手を振っている。私もそれに振り返して、その場を後にした。
「コソ泥をひっぱたいて水ぶっかけて説教したら改心したんだよ」
「やりすぎじゃない?」
宿に戻りエルフたちに先ほどの子供たちのことを聞かれたので、かいつまんで話す。かいつまみ過ぎてあの子たちが話に出てきていない。
説明の仕方が悪すぎて、私が過剰に正義を行使した人みたいになっている。
「大通り歩いてたらスリに遭いそうになって」
危機察知が反応したから何にも盗られてないのにスリ呼ばわりしちゃったけど。
その後飯を奢ったり絵本を買って読み書きを教えたり……まあ順を追って説明した。
「スラムに行ったの?」
「行ったけど、それくらいいいでしょ」
エルシーナが眉を寄せて少し不機嫌そうだったけど、特に説教は受けなかった。私だってそんなに弱くないんだから、それくらい平気だと思うんだけどね。
「あまり深入りするのは良くないと思うが」
「わかってるよ。今回だけ」
セレニアから苦言をもらうが、理解はしているので大目に見てほしい。こういうことは今回限りにしよう。
ニナたちは根が良い子だったからこの程度の面倒ごとで済んだけど、もっと性根の腐ったガキだったら何が起きていたかわからないもの。
大体の場合は危機察知が反応するから大丈夫だとは思うけど。これ本当に便利だね。
まあでも、余計な面倒ごとは増やさない方が良い。一人旅ならともかく、私には今一緒に旅をしている仲間がいる。迷惑がかかる可能性だってないわけじゃないんだから、気を付けないと。
目指せ総合評価3000pt!
目標まで毎日更新…できたらいいですね!(笑)
頑張ります!




