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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第5章 中央大陸・自己分析編
129/212

第128話 ずっと私のターン

 

 ニナたちがいた路地裏から入り組んだ道を進んでいくと、少し広い空間に出た。周りは建物の壁に囲まれた、行き止まりだ。

 その真ん中ある椅子に座っている男がいた。あれが例の男の子、確かシドだっけ。うーん、割とデカいな。


「なんだぁ? ニナじゃねーか。金を持ってきたのか?」

「お前に用があるってやつを案内してきたんだよ」


 そう言ってニナが横にずれたので、私が前に出る。

 私に気が付いたシドはあからさまにジロジロと見つめてきた。なんだか、気持ち悪いやつだな。

 顔面偏差値の高いこの世界には珍しく……ぎりぎりフツメンかな。身体は鍛えれば良いものになりそうだけど。


「なんだこいつは?」

「こんにちは。君がニナから奪ったお金を返してもらおうと思って、会いにきたんだよ」


 言うや否やシドは眉間にしわを寄せて怒鳴り散らし始める。


「ああ!? んだてめぇ! 俺の金を奪いに来たのか!?」

「私のお金だってば」

「知るか!!」


 シドが勢いよく立ち上がり、その衝撃で座っていた椅子が倒れる。椅子だの机だの、まさに私有地のような扱いだな、ここ。不法占拠だよね?


「死ね!!」


 大きく振りかぶり、私に殴りかかろうとしてきたシド。しかし、その動作に洗練は欠片もなく、戦士であるという雀の涙程度の可能性は今、零になった。


 この程度なら身体強化も必要ない。相手の右こぶしを左手で受け流し、右手で相手の顔面をビンタする。


 バチィイインという良い音が響き渡る。


「ぶふっ」


 変な声を上げながらシドが倒れた。なんかコントみたいで笑える。


「あっはっは!」

「お前笑ってる場合じゃないぞ」


 後ろでニナが声を上げて笑っている。確かに無様過ぎて笑えるけども。

 全く、後が怖いと思わないのかね。私は別にこいつを改心させるために来たわけじゃないんだぞ。


「いってぇ~」


 シドが目に涙を溜めながらも起き上がる。身体強化は使ってないし、そこまで酷いケガにはならないだろうと思っていたから当然かな。


「私の分のお金さえ返してくれれば別にいいんだけど」

「うるせぇ!!」


 聞く耳待ちませんねぇ。

 今度は掴みかかろうとして両手を伸ばしてくる。触られないように右へ左へ躱し、背後に回り込んで膝カックン。


「ぐっ……!」

「ケンカしに来たわけじゃないんだよ」


 まだ目が諦めていない。うーん。面倒くさい。水でもぶっかけるか。

 魔道袋から水の杖を取り出してシドに向ける。すると、途端に怯えたような表情に変わる。どうやら魔法の怖さはご存知のよう。

 尻もちをついたまま後ずさっていく彼に杖を近づける。


「ひ、卑怯だぞ!」

「殴りかかってきたのはそっちでしょ」


 杖に魔力を流し、シドに水をぶちまける。これで頭を冷やしてもらおう。


「ぶぼぉぼぉ!!」

「頭冷えた?」


 窒息されても困るので、ほどほどで止める。鼻に入ったのか、むせてせき込んでいる彼にもう一度聞く。


「頭冷えた?」

「くそ!! なんなんだよお前!!」

「はあ」


 冷えていないようなのでもう一度。

 それを何度か繰り返したらようやく抵抗をやめてくれた。良かった、これ以上やると私が悪者みたいになっちゃう。


「くそ!! わかったよ! 金を返せばいいんだろ!」

「分かればいいんだよ」


 怒りを露わにしたままびしょ濡れのシドが立ち上がり、端にある箱に近づいていく。

 シドが箱を開けると、中には小袋が詰まっていた。その一番上に、私がニナに渡したお金の入った袋が置いてある。


「ああ、これだ」


 その袋だけを取り、箱から離れる。他のもおそらくお金が入っているんだろうけど、それは別にいらない。ニナたちが頑張って稼いできたお金かもしれないけど、ほとんど盗んできたやつだと思うし。


「もう用は済んだだろ。さっさと行けよ」

「まあまあ。少し話をしよう。ニナと一緒に」


 後ろで笑っていたニナも巻き込み、シドと話をすることにした。

 二人が承諾せずとも、私はそう決めた。


「ああ? 話すことなんてねぇよ」

「私にはあるんだよ」


 ニナに金を渡すとこいつの手に渡ってしまう。それでは意味がない。ニナから金を奪うのをやめてもらわないとね。


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