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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第5章 中央大陸・自己分析編
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第122話 恋の話

 アシュミードから王都まで馬車で五日ほどかかる。その間ずっとエルシーナとクラリッサに馬車を任せるというのも忍びない。

 なので、馬車の扱い方を教わるために、今はクラリッサと二人で御者台に座っている。

 エルシーナに交代を言い出したところ、何故か視線をさまよわせながら複雑な表情で了承とお礼を言われた。

 なんだろう、セレニアと二人は嫌なのかな。それとも緊張してるだけ? 

 もしかしたら疲れちゃったのかもしれないな。うん、ゆっくり休んでね。



「リアさんは好きな人はいないんですか?」


 御者台でクラリッサと二人、馬車の扱い方を教わっていたら、いきなりこんな質問が飛んできた。


「どうしたのいきなり」

「いいじゃないですか。年頃の女の子なんですから、恋の話の一つや二つ、聞きたいでしょう」

「女の子?」

「何か言いました?」

「いえ、何でもないです」


 今冷たい殺気が飛んできた気がする! 怖い!

 触れるのはやめよう。ええと、雑談の一種ということかな。恋バナねぇ。


「なんだっけ? 好きな人?」

「はい、いないんですか?」


 なんて答えよう。

 エルシーナが好きだと告げるのは簡単だ。付き合いたいかと言われると、恋人になれたらきっと涙が出るほど嬉しくなると言える。

 でも、だからといってそれに手を伸ばす気があるかと言われると、ノーだ。

 好きだと告げる気も、恋人になる気もない。


 エルシーナと付き合えば、私はそれ以外の何も見なくなる。仲間を蔑ろにして、やるべきことをしなくなるだろう。そんな自分にはなりたくない。

 私は我慢のできる人間じゃないんだから、きっとそうなる。

 それに私の性格はなかなかに屑だし。外見は良くても、中身は他人に迷惑をかけてばかりのどうしようもない自己中女。誰かと付き合っても幸せになどできない。


 そもそも、エルシーナが私を好きになるはずがない。彼女はセレニアが好きみたいだし。玉砕されてギクシャクするのも嫌。


 なにより、私の存在はこの世界ではあまりにも異質だ。魔法も、制限のない命も。

 この世界に不老不死は存在しない。ほぼ全ての生き物の命は有限だ。


 私の存在だけが特別であり、異質である。


 長寿の種族がいるんだから、そこまで深刻に迫害だのなんだのが起こるとは思えない。

 でもそれだって絶対とは限らない。突然目の色が変わったかのように接し方が変わられたら心が折れる。


 人間種の寿命を延ばしたり、老化を遅らせるような方法はないらしいので、私の老化が止まったら怪しまれるはず。

 ハーフエルフと偽って過ごすことはできるかもしれないけど、私も私の両親も見た目は人間種だから……どうなんだろう。ガリナじゃなければ大丈夫かな。

 そもそもいつ頃老化が止まるかわかんないんだよね。それ次第かも。


 エルフと恋人になったら……長生きしたいと思うかもしれない。エルフよりも長い時間見た目が何も変わらなかったら、どう思われるんだろう。

 その時に私は自分のことを何もかも話せるのかな。


 いろいろ理由を上げたけど、友人を蔑ろにしたくない、フラれたくない、秘密を話せない、だから誰とも付き合う気はない。

 なんとも臆病な理由ばかりだけれど。


「いないよ」


 今はもう、こう答えるしかないね。


「いないんですか?」

「いないし、恋人を作る気もないよ」


 嘘をつくのは辛いな。この手の話題は私の心臓に良くない。顔に出ないようにしないとね。


「年頃なのに、どうしてですか」

「旅先で恋人作られても困るでしょ」

「……それもそうですね」


 仮に私が旅先で恋人を作ったら絶対に旅を続けられなくなるよ。エルフたちとお別れになってしまう。

 まだ腕の分析が終わってないのに、それは良くない。


「クラリッサはどうなの?」


 今度は私から質問をする。私の話ばかりするんじゃつまらないでしょ?

 それにクラリッサの恋愛話というのも聞いてみたい。


「ワタシは特にそういうのはありませんねえ」

「これ恋の話にならないんじゃない?」


 ないのかよ。恋バナ終了したぞ。私的にはこの方がいいけど。


「リアさんモテるからそういった話が聞けるかと思ったんですよ」

「クラリッサだって美人で可愛いんだからモテるでしょ?」

「エルフはちょっと顔が良いくらいではモテないんですよ」


 エルフ=美形という方程式が当たり前のように浸透しているので、クラリッサ程度の美人度だとチヤホヤされるようなことはないらしい。

 この世界の人達、目が肥えすぎじゃない?


「あと胸がないので」

「あー」


 エルフってぺたんこなのよね。

 いや、何にもないわけでもないけど、多少はあるけど、それでも貧乳としか言いようがないレベルの薄さの人しかいないのよね、エルフって。そこだけがねぇ。

 この世界、割と大きめの人が多いから尚更そう見えるというのもある。

 前世の方が技術的には色々あったはずなのに、こっちの世界の方が全体的に発育が良いのは不思議だね。


「エルシーナさんくらいになれば、無くてもモテますけどね」

「だよねぇ。今まで会ったエルフの中で一番美人だと思うもん」


 やっぱりモテるんだね。エルシーナは本当に飛び抜けて美人なんだよねぇ。

 あれで巨乳だったら、私だってなりふり構わず恋人になるためにグイグイアプローチした……かもしれない。いや、胸が無くても魅力的だけど。むしろ完璧すぎて近寄れなかったかもしれん。

 きっと今までもたくさん恋人がいたんだろうな。うああ、考えただけでダメージが……。


「リアさんは男性が苦手なんでしたっけ?」

「え? ああ、正しくは男性から好意を伝えられるのが苦手、かな」


 内心悶絶していたらクラリッサが思い出したように聞いてくる。そういえばそんな話を昔にしたなぁ。

 別にお友達として付き合うのは何の問題もないので、男嫌いまではいかないかな。


「女性との恋愛は平気なんですか」

「え」


 つ、ついにこの質問が来たか……! これは私が同性愛者かどうかを探っているのだろう。だがしかし、その質問に対する返答はすでに考えてあるぞ。


「女性と付き合ったことないし、告白されたこともないからわかんないね」


 嘘は言ってない。というか本当だ。

 女性とそういう仲になったことはないので、実際に告白されたら生理的に無理になる可能性だって否定はできないのだ。まあ、ないだろうけどね!


「そうですか」

「……まあ、たぶん平気だと思うけど」


 心が穏やかでいられなくなるので、ちょっとだけ本音を吐露して平穏を掴み取る。小心者は隠し事をし続けられないのだ。それでも話せないことは多いけど。

 うん、突っ込まれる前に話題を変えよう。


「やっぱりエルフって同性愛者多いの?」


 エルフのような長寿の種族が子孫を残すことに積極的ではない結果、同性愛に走る人が増えたとかいう話らしいけど、本当なのかな?


「そうですねー。結構多いですよ。寿命が長い分、一人の伴侶と死ぬまで添い遂げる人もそんなに多くないですし。異性との間に子を産んで、その子が大きくなって独り立ちした後に別の人と恋仲になる人とか、その相手が同性だったりとか、実際にありますし」


 おおぅ、なんというか……知らない世界って感じがする。


「それ元の伴侶どうなんの?」

「別の人と恋愛しますよ」

「エルフすごいね」

「恋愛は自由、っていうのがエルフの共通認識ですので」


 自由過ぎない? 浮気性じゃないのそれ。いやでも、伴侶とかと過ごす時間が百年二百年の世界ならそういうこともある、のかな?

 人間なら結婚したら一生その人と添い遂げるのが一般的な認識だけど、エルフは違うんだね。

 長寿とはいえ、私たちと時間の流れは一緒だ。飽きもするし他に目移りすることもあるんだろう。長寿って大変だ。


「相手が人間でも目移りするのかな」

「それはしないと思いますよ。人間は短命ですから」

「そっか」


 目を離したすきに二度と会えなくなってるかもしれないもんね。

 寿命差があるって悲しいね。



昨日投稿する予定だったんですが、忙しくて無理でした…。

お読みいただきありがとうございます。

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