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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第4章 中央大陸・魔物の海編
106/212

第105話 結構頑張ったはずなのに

ここから主人公視点に戻ります。

「あつい……」


 身体が熱い、息が苦しい、汗のせいで全身が気持ち悪い。頭がぼんやりして思考が上手く働いてくれない。

 何より身体が鉛のように重い。熱でも出したのだろうか。

 額を触ると濡れタオルが置かれている。


 どうやら今まで眠っていたようだ。

 起き上がろうと身体を起こしたけれど、めまいがして再度倒れこむ。

 その時に、すぐ横で人が寝ていることに気が付いた。


「えっ……」


 すごいびっくりした。誰かと思ったが、エルシーナのようだ。彼女がこちらを向きながら眠っている。


 何が起きているのかと思い、起き上がれないままだけどエルシーナを起こさないように周りを見回す。


 ここはキャンプ地の砦かな。そこにある救護室のベッドに二人で寝かされているらしい。

 もしかして彼女も具合が悪いのかと心配したが、どうやら寝ているだけみたいだ。

 他にも置かれているベッドがこの部屋にはあるし、いびきのようなものも、呻き声のようなものも聞こえる。他にも人がたくさん寝かされているようだ。


 私の額の濡れタオルは、彼女が乗せてくれたのかもしれない。また迷惑をかけてしまった。

 外はまだ真っ暗なようだけど、月明かりが窓から入り込んで室内が少しだけ明るい。


 おかげで灯りのない部屋でも隣で眠るエルシーナの顔がよく見える。可愛い。


「寝顔可愛い……」


 エルシーナは美人だ。私が今まで出会った中で誰よりも綺麗な人。そばにいられるだけで毎日が幸福に彩られている。

 彼女の顔にかかった綺麗な金髪に触れる。土や返り血などで汚れているだろうけど、それはみんな同じだ。

 でも、何故だか彼女の髪は触りたくなる。汚れていようが、何をしていようが、綺麗に感じる。


 髪の束を耳にかけると、少し自分の手が彼女の頬に触れる。ひんやりとして冷たい……いや、私の手が熱いのか。

 何故かわからないけれど、私の体温が高くなっている。

 汗のせいで服が張り付いているけど、身体が重すぎて拭う気にもならない。

 寝るまでに何があったのか、ぼんやりとした頭では思い出せない。


 体温の高さを認識すると、途端に冷たいものが欲しくなる。濡れタオルはすでにぬるくなっていて、これでは物足りない。

 他にないかと探し、ふと目の前にいるエルシーナに目がいった。

 そうして彼女の体温の低さを思い出し、身をよじりながら……彼女の身体に寄り添い、腕を回す。

 ひんやりとした体温が心地よくて、そのまま眠りについた。






「仲が良くて何よりだな」

「怪我人相手に何してるんですか」

「何もしてないもん! 一緒に寝てただけだもん!」



「ん……」


 声が聞こえて目が覚める。何か騒いでいるようだけど、何を言っていたかは聞き取れなかった。


「あ! り、リア、起きた? 大丈夫?」


 ベッドの縁に座っているエルシーナが慌てたように声をかけてくる。

 どうやらベッドに眠っていて、その周りにエルフ三人がいるようだ。

 上体を起こそうとした途端にめまいがして再度ベッドに倒れこむ。


「まだ起き上がらない方がいいよ」


 そう言いながらエルシーナが私の額に手のひらを当てる。ひんやりして気持ちが良い。

 ひんやり……あれ、何か忘れてるような……。


「まだちょっと体温高いね。昨日よりはマシだけど」


 昨日……? なんだっけ……。

 ここに至るまでの経緯をぼんやりとする頭でどうにか思い出す。

 ああ、そうだ、確か悪魔の攻撃を障壁で防いで……あ!


「キャンプ地どうなった!?」


 そうだ、寝ている場合じゃない! あれからどうなった!?

 懲りもせず飛び起きるように上体を起こしてしまい、めまいを通り越して吐き気を催してきた。


「うぇ……」

「落ち着いて。ここがそうだよ。見てわかる通り、無事」


 エルシーナに背中をさすられながら周りを見渡すと、確かにキャンプ地だ。

 ここは砦の中の救護室だろう。どうやら私のしたことは無駄にはならなかったようだ。


「三人も無事?」

「無事ですよ。リアさんが一番重傷です」

「ご、ごめんなさい」


 クラリッサの言葉に棘がある気がする。心当たりがあり過ぎて謝罪しかできん。

 どうやらあの後、気絶した私をここまで運んで回復士に診せてくれたらしい。また迷惑をかけてしまった。


「助けてくれてありがとうございました。うっ」


 上体を起こしたまま頭を下げてお礼を言う。そのせいでまた吐き気が戻ってくる。

 なんでこんなに気持ち悪いの。


「もういいから、ほら、横になって」


 ベッドにもう一度寝かされ、その状態のまま――


「それはそれとして、なんであんな無茶したの!」


 エルシーナの説教が始まり、


「危なくなったら戻ってくると言いましたよね」


 クラリッサのお小言が始まり、


「君が気絶した後どれだけ大変だったか、ちゃんと理解しているのか?」


 セレニアが諭すように言いきかせてきた。


 重傷患者を囲ってエルフ三人が説教をする図が出来上がった。

 もう少し労わってくれてもいいんじゃないかな……なんて言ったら余計に怒られそうなので、黙って聞くのに徹する。

 反省はしているけど、後悔はしていないので、もう二度としないでという約束は守れそうにない。


評価、ブクマ、感想などありがとうございます。

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