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勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第1章 幼女時代編
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第10話 王都見学

 王都の中に入る列に並んでから体感で一時間以上。ようやく私たちの番が来て、問題なく中に入ることができた。

 中に入ると、人、人、人!

 なんと人の多いことよ。建物も立派なのがたくさん建っているし、道幅も広くしっかり舗装されていて、外を走るよりも馬車の揺れがおとなしい。

 そのまましばらく馬車に乗っていたが、馬車の置き場に着いたらしくここからは徒歩だ。

 御者にお礼をいい、大通りを歩く。


「それじゃあ宿に行こうか。一応いくつか目星をつけてあるからね」

「はい」


 三人で宿まで移動する。その間も周りのお店や露店に目を奪われる。食欲をそそる匂いがする。見慣れない魔道具がある。妙に派手な武器がある。

 すぐにでも駆け寄って見てみたいが、父が固く手を結んでいるので叶わない。


「リア、ちゃんと前を見て歩きなさい」

「むー」

「明日ゆっくり見て回ればいいじゃないか」

「はぁい」


 もう夕方だし、今日見て回るのは諦めよう。ガリナには無いものがたくさんありそうなのに、気になるものは多いのに、時間は二日間しかないなんて……残念だ。




 父とサイラスさんが利用したことのある宿に向かい、個室にするか二人部屋にするかで少し揉めたけど、結局お父さんと二人部屋になった。ベッドは二つあるし、寝るだけだからいいけど。

 三人で夕食を取った後、サイラスさんは自宅へと向かった。明日宿まで来てくれて、一日王都を案内してくれるそうだ。優しすぎる。


 なんだかんだ長時間の馬車と野宿というのは身体に響いたようで、ベッドで横になったらいつの間にか寝ていた。身体の疲れが癒えていてベッドのありがたみを感じる。




「まずはそうだな……図書館に行くか」

「入れるんですか?」

「俺と一緒なら入れるぜ」


 身支度を終えてサイラスさんと合流し、王都見学に繰り出す。

 どこから行こうかとなって、サイラスさんとなら図書館に入れるそうなので、早速向かう。

 その道中にあるお店で朝食を買い食べ歩きだ。

 この世界の食文化はそんなに悪くない。前世と比べるものではないが、食べれば美味しいものが多い。

 原料が何なのかはちょっとわかんないけど。魔物のお肉とかも食べるからねこの世界。食べられればいいけどさ。



「あれがこの国最大級の図書館。王立図書館だ」

「おーでっかい!」


 見えてきたのはガリナの倍以上あるだろう大きな図書館だった。前世で通ってた大学の図書館より大きいかも。


「リア、他にも行くところがあるから軽く見るだけだよ」

「はーい」


 こんな大きい図書館だと資料を探すのも大変そう。それだけで時間がつぶれてしまいそうだ。いつかゆっくり見に来たいな。


 ワクワクしながら建物の中に入ろうとしたところ、門番みたいな人に止められた。


「身分証はありますか?」

「ほれ」


 サイラスさんが金色のプレートを見せると、門番さんの目が見開く。


「これは……失礼いたしました。こちらのお二人は?」

「冒険者仲間とその娘だな」

「僕からはこれを。この子は娘です」

「こんにちは」


 父は銀色のプレートを門番に見せ、私の紹介をする。私は何も持っていないので、挨拶だけしておく。


「はい、大丈夫ですよ。どうぞお入りください」


 門番さんからの許可も下りたので中に入る。その際父にあのプレートが何なのか聞いてみた。


「あれは冒険者の証だね。ランクによって素材が変わるんだ。名前とランクが書かれてる」


 なるほど。冒険者の身分証明ってわけね。ランクが上がるほどプレートの素材もグレードアップするのかな。金色と銀色……金属に関しての知識はさっぱりだ。


 中に入ると予想通りの本の多さ。私の身長の倍以上ありそうなほど高い本棚に、ぎっちりと本が並んでいる。この中から目当ての本を探すのは骨が折れそうだ。検索機とかないですかね。


「受付で聞けば置いてある本の分類とその位置まで教えてもらえるぞ」


 良かった。職員の人がちゃんと把握しているらしい。ガリナの図書館では虱潰しだったからなあ。





「大きな図書館はどうだった?」

「すごかった! 見たことない本たくさんあったし、いつかゆっくり見たい」


 図書館だけで時間をつぶすわけにもいかず、ほんの数時間だけ流し読みをしてから出てきた。

 予想通りガリナに比べて魔力回路についての本が多く置いてある。しかも、発動石に関する本も置いてあった。あれは是非とも読みたい。


「そっか……」


 父の暗い顔はなるべく見ない。どうせ手放したくないとか思ってそうだし。そろそろ子離れしてくれないかな。

 もう鍛えてくれる気がないなら我流で強くなるしかないかな。

 冒険者になって日銭を稼ぎながら戦い方を覚えて杖を買って……そうなると爆弾も使わないとかしらね。手っ取り早いし。でも魔物がミンチになっちゃったら討伐証明できないかも。やっぱりあれは訓練しておかないと上手く使えないかな。

 家を出て強くなってお金を稼いで勉強して……ああもう、なんで私は子供なんだ。



「次は魔力回路について勉強できる学校を見に行ってみるか?」

「行きたいです!」


 サイラスさんが学校に案内してくれるようだ。考え事は後にしよう。






「あれがそうだ。さすがに部外者は入れないがな」

「意外とおっきいですね」


 柵の向こうには大きな建物がある。さすがに先ほどの図書館よりは小さいけど。

 教室よりもドーム型の建物の方が敷地面積をとっている気がするけど、訓練場かなんかだろう。詳しい入学条件とか知りたいな。


「あそこの窓口で入学要項でも見ておくといい。ジェームズも暗い顔してないで行ってこい」


 父が暗い顔をしているのをサイラスさんは気が付いていたようだ。まあ見ればわかるだろうけど。せっかくの王都旅行で暗い顔をするのはやめてほしい。


「お父さんお腹でも痛いの?」

「いや、大丈夫だよ。見に行こうか」


 あえて見て見ぬふりをする私。私は別にいい子ちゃんじゃないので。




「うーん。十二歳から……。入学金も……今から貯め続ければいけるかな」


 帰ったら冒険者でもやるかぁ。冒険者に年齢制限はないし。


「リア、何する気だい? 危ないことはしないでくれよ?」


 最速で四年後とわかったためか父が少し元気になった。なんか腹立つな。

 別に入学しなくてもいいんだけどさ。


「なんでもありません。そろそろお腹すきました」

「ああ、そうだね。食事にしようか」





 三人で食事を取った後、サイラスさんとは別れることになった。


「サイラスさん、今日はありがとうございました」

「世話になった。今度キチンとお礼をするよ」

「気にすんな! 飯もおごってもらったしな! それよりもジェームズ、あんまり嬢ちゃんのこと縛りあげると、嫌われちまうぞ? 嬢ちゃんもこの親バカが相手だと骨が折れるだろうが、夢があんなら頑張れよ! また何かあったら来い! ガッハッハ!」

「サイラス……」

「はい、頑張ります」


 サイラスさんは本当に優しい人だな。仲間の頼みとはいえこんな小娘相手に時間を取ってくれて……本当に頭が上がらない。

 私の人生に大きな影響を与えてくれた恩あるお方だ。いつか必ずその恩に報いねば。



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