表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇敢な者と呼ばれた私  作者: ナオ
第1章 幼女時代編
1/212

第1話 爆弾と懇意にはなりたくない

前の作品がようやく終わりそうなので、新しい物を投稿します。よくある設定かもしれませんが、どうか温かい目で見てください。

あと、あらすじはちゃんと読んだ方がいいです。

「勇敢な者と呼ばれた貴女には、お腹の中で爆弾を生成できる力を授けましょう!」


「そんな呪いを貰うような悪事を働いた覚えはないんですが」






 私の話をしよう。

 いや、少し違うな。私と、私が死んだときの話をしよう。


 私は、ごく普通の女子大生だった。


 幼い頃から好きだったゲームや漫画を楽しみながら、偶に同人誌即売会に赴き百合本を買い漁り、道行く美人を目で追いながら、SNSで百合の尊さを語る、世間一般でいうオタクに分類されること以外は、ごく普通のどこにでもいる女子大生だった。

 うん、ふつうですね。


 最近の趣味は電気の流れやら磁石の作りやらの簡単な科学についてネットで調べて楽しむという、年頃の女子大生の趣味としては少々疑問符が浮かぶような過ごし方をしている。

 いや、意外と身近な物の作りを調べたりするのは楽しいのだよ、本当に。小、中学生の頃に学んだことなんて忘れちゃったし。

 家電も好きだから、家電量販店を見て回るだけでも時間を潰せるし。

 ちなみに私は大学で理系を専攻していない。これは本当にただの趣味、もとい暇つぶしである。


 まあとりあえず、そんななんちゃって理系オタク女子の私は、一人で買い物に出かけたのである。

 好きな百合アニメのイベントショップが期間限定でついにオープンしたということで、大き目のショッピングモールに出かけた。



 そしてそこでまさかのテロが起きたのである。



 まさか日本でこんなことが起こるとは思わなかった。最近は物騒な事件が増えているとは思っていたけれど、まさかこんな身近なところでテロに出くわすなんて。


 いきなり男の人が何かを叫んだかと思えば、抱えていたのは爆弾だった。叫んでいた内容は良くわからなかったけど、世界がどうとか、爆弾がどうとか言っているのは聞き取れた。

 そしてそれは周りにいた人達も同じようで、蜘蛛の子を散らすようにその男から逃げ出した。


 私も周りに倣い逃げようとしたが、走り出した際に足がもつれて転んでしまった。


 周りの人全てが混乱状態で逃げ惑う中、床に転がっていたらどうなるか想像つくだろうか。

 踏まれ、蹴られ、引っかかれ、立ち上がろうとするそばから踏みつぶされる……あまりの痛さに起き上がることはできず、ひたすらに身体を縮こませ、嵐が過ぎるのを待つしかないのだ。


 嵐が過ぎ去り、顔を上げれば周りに人はいなかった。振り返れば例の男もいなかった。ただ、ポツンと爆弾だけが置いてあった。

 自爆テロじゃないんだ……とか一瞬思ったけど、男がいたらいたで更に酷い目に遭っていただろうから、それは別にいい。


 早くここから逃げないと……と思って立ち上がろうとしたが、できなかった。身体が痛すぎて無理だ。特に足がかなり痛い。走るどころじゃない。

 そして悲しいことに、あの爆弾は時限爆弾のようなのだ。もう逃げられないだろう。


 明確な死を前に、私は冷静になった……ように見えるが、頭はだいぶんオカシイままだった。


 私は爆弾をどうにかできないだろうかと、這うように移動し爆弾に近寄った。爆弾を見た私は、残り時間があと数十秒とないため、どうにもならないと更に絶望した。

 もちろん爆弾の解体の仕方など知らない。


 そして私は走馬灯のように昔を思い出し、子供のころに読んだ漫画のワンシーンを思い出した。


 異能系少年漫画みたいなやつに、爆弾を腹に抱えて周りへの被害を少しでも抑えるというワンシーンがあった。

 子供の私はその時、それができた一人の女の子をとてもカッコイイと思ったのだ。

 周りへの思いやりとか自己犠牲とかじゃなく、とっさにその行動をとれたことへの勇気が何よりもカッコイイと。

 もちろんそれは漫画の中の話であり、現実でそんなことをしたところでミンチになって吹き飛ぶだけで、被害の大きさに差などないだろう。あったとしても微々たるものではないだろうか。知らないが。


 ただまあ、その時の私はだいぶんおかしかった。

 だから、着ていた上着を爆弾に被せ、その上に覆いかぶさるように抱え込み、そのまま爆死した私は、あの頃見た女の子のような勇敢な者とは程遠い、ただのクレイジーな爆死女でしかないのだ。





 だからまあ、目の前にいる女神様とやらのお言葉には全面的に拒否させてもらいたい。






「呪いではありませんよ! あなたにぴったりだと思ったのですが……」

「なぜ……?」



 ここは……どこだかわからないけど、死後の世界とかいう場所で、いきなり私の目の前に女神を名乗る女性が現れたのだ。美人なんだけど、神々しくて邪な想いなど露ほども沸かない不思議。


 そしてネット小説が好きな私の想像通りに、転生の権利を与えましょうと言い出した女神様は、私に来世を生き抜くための力――チート能力――をくれると言ったのだ。

 目まぐるしく話が進む中、女神様が言い出した能力とやらが先ほどの『お腹の中で爆弾を生成できる力』というものだ。


 怖すぎる。

 身体の中にニトログリセリンを生成できるような器官が埋め込まれるのだろうか。人間爆弾の出来上がりである。

 私の行いはそんなに罪深かったのだろうか。


「貴方は爆弾を抱え込み、周りへの被害を少しでも減らそうと行動しました。その勇気ある行動を称賛し、力を与え転生させ、新たな生を謳歌してもらおうと思ったのですが……」


 あのイカレた行いが勇気ある行動ととられるのか……さすが女神様。器がでかい。

 てか本当に呪いじゃないっぽい。あれか、神様の考えなんて矮小な人間には理解できないとかそういうやつか。


「あれが勇気ある行動かはひとまずとして、お腹に抱えた爆弾のせいで死んだのに、新しい力がお腹の中で爆弾を作る能力というのはちょっと……死因をいちいち思い出してしまいそうで嫌ですね」

「た、確かにそうかもしれませんけど……」


 死因に直結したものが一番相性がいいんです……とか聞こえたけどそんな危ない能力はいらないんですよ女神様。

 いやもう実は女神様の皮を被った悪魔なのでは?

 そんな能力、転生してすぐに死にそうだわ。殺意を感じる。


「それではどんな能力がいいのですか?」

「えーっと……とりあえず、私はどんな世界に転生するんでしょうか」


 これを聞いておかないと、どんな能力が必要になるのかわからない。

 元の世界であれば賢さとかが欲しいし、危ない世界なら逃げる力か戦う力がほしい。


「ああ、そうですね……まず、貴女が元居た世界で再び生を受けることはできないのです」

「あー、そうなんですか」


 予想はしてたからいいけど。というか、爆弾を腹に生成できる力を持ったまま元の世界に生まれるとか、女神様は私をどうしたいんだって話ですし。


 別に未練は……でもネットも漫画もゲームもないのはツライな……漫画や小説の続きが見たかった……。

 子供のころから好きだったし、最近は毎日何かしらでネットを使ってたしなぁ。もう使えないのは寂しい。

 でも、でもあれか。


「異世界転生ってことですか」

「そうなりますね」


 異世界をゲームの中みたいに楽しんだらいい感じかな。VRゲームみたいだね、楽しそう。旅にでも出てみたいね。



「魔法や魔物が存在する世界ですが、地球と環境は似ているので、そこまで困惑しないと思いますよ」


 魔法と魔物が存在する時点で困惑するんだよなぁ。


「それで、欲しい能力はありますか?」

「うーん……」


 何が良いかな……魔物に襲われても逃げられるような脚力?

 それとも事前に危険を察知できる勘の良さ?

 もしくは戦うための魔法力か……。


「そうですね、ではそれら全てを授けましょう」

「え、あ、心を読んでたんですね……」


 女神様ちょっとめんどくさくなってきてる?

 てかヤバい、悪魔とか言っちゃった。怒ってないみたいだし大丈夫だよね。


「それくらいで怒りませんよ。爆弾と私からの祝福を含め、なんかいい感じにしときますね。それでは長き人生を幸福に生きてください」

「はあ、ありが……? あれ今爆弾って」


 待って。待って女神様。


 そんな物騒な力いらないんですけど!

 やっぱり怒ってるんじゃないですか女神様ぁぁぁぁぁぁ……


 私の叫びは声にならないまま、視界が白くはじけ飛んだ――



第4章の頭に「ざっくりとしたあらすじ」があるので、百合以外興味ねぇ! って方はそこまで飛んでもいいと思います。

そこまで行ってもすぐに百合になってるわけでもないですけど。ここからよりはマシかなぁと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ