余話 寝室にて
余話 寝室にて
「あれでよかったんかな?」寝台の上で仰向けになり、天井を見つめながら一人言のように問うと、
「うーん、と思うけど。電話の声聞いただけだけど、相生さん、はきはきして明るい感じだったし、言葉遣いもきっちりしてたし」同じ姿勢で隣に寝転がりながら答えた。
「高辻さんについては情報なしか」
「今日藍が言ったことだけね」
「世間知らずだから心配は心配だが、藍の口から友達って聞いたの久しぶりだからなあ」
「ええ。今まで勉強しかしてなかったもんね。もう高校生だし、人並みまで行かなくてもいいから、青春を謳歌してほしいわ」真面目で勉強のできる子供を持っても、それはそれで悩みになるもののようだ。
「ん。相生さんと高辻さんに期待するか」
「もう期待してるからOKしたんでしょ」
「…そうだな」上を向いたまま左手を少し身体から離して妻の右手に触れた。妻はその手をそっと握り、
「たぶん大丈夫だと思うわ。制服作りに行ってから、あの子ちょっと変わったじゃない?」
「そうなのか? すまん、分からない」
「もう。これだから男はダメね」優しい口調で悪態をつき、
「今自分で言ったじゃない。あの子の口から友達って聞いたって」
「ああ、そうか、そうだな…」
「それだけじゃなくってね、うまく言えないけど、ちょっと変わったのよ。たぶん、いい方向に」
「そうか」
「相生さんのおかげなんでしょう」
「そうなんだろうな」
「だから、きっと大丈夫よ」天井を見つめたまま、握る手に優しく力を籠めた。
「ああ」天井を見つめたまま、少しだけ力を入れて握り返した。




