余話 観客席にて
観客席にて
「さっきのかい? 銀ちゃんが作詞した曲って」
「おうよ。投稿何十作目かにして初採用だ」
「えー!? 『士』って銀さんが作ったんですか!? スゲー!!」
「おう。もっと誉めていいんだぜ」
「選手のことを士って言うのがカッコいいんですよね!」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。強者と益荒男って案もあって悩んだんだがな」
「どれもカッコいいと思いますけど、何が決め手になったんですか?」
「兵って戦っぽい単語だろ。サッカーはスポーツであって、荒事になっちゃいけねえと思ったんでボツ」
「士って武士のことじゃないんですか?」
「鎌倉以降、公務員の有力者が武士になったからそういう風になったけどな、元々は技能を持って朝廷に仕える人間を指す単語だ。物部と書いてもののふ」
「へー、そうなんですね! 益荒男は何で落選したんですか?」
「士の方が意味を重ねられたからだな。山雅を、フットボールという技能を持って地域に仕える人っていう風に見立てたんだ。ちっと無理はあるが」
「いやカッコいいですよ! 絶対士の方がいいです!」
「そうか? そりゃよかった」
「士って、曲もカッコいいですよね」
「だろ? メタル史に残る名曲だぜ。…おや、贄君、知ってるのか」
「ええ、Riotすごい好きなんですよ。アルバム全部持ってます」
「そうか! こんな近くに仲間がいたとは嬉しいぜ」
「ライオットってバンドの曲なんですか?」
「おう。Warriorって曲だ」
「贄先生」
「ん?」
「CD貸して下さい。ウォリアーが入ってるアルバム」
「いいぞ。連休明け職員室に来なさい」
「ありがとうございます!」
「穂高くん、よかったね。先生貸してくれて」
「うん!」
「わたしも聞いてみたいな」
「あ、あー…方法考えるよ」
「うん!」




