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余話 ユニフォーム
余話 ユニフォーム
「去年のユニ貸してくれねえ?」晩酌中、息子が頼んできた。我が子ながら人にものを頼む態度を知らない奴だ。
「自分のは」
「あるけどな、うちのクラスの委員長様と副委員長様が同じの着たいから貸してくれっつうんだよ」
「ふーん」こいつはつまらぬ嘘をつく奴ではないからこれは本当だろうが、相手の肩書きで行動するような奴でもない。頼んできた理由は別のところにあるはずだ。そうだな、さしずめ…。
「カワイ子ちゃんなのか」あるいはセクシーなのか。親と雖も、息子の好みのタイプまで知っている訳ではない。
「さすがだな」ニヤリと笑う。私はこいつのこういうところが好きなのだが、世間受けはしないだろう。そのうちさりげなく教えてやった方がいいかも知れない。
「委員長はそこらのアイドルより美人だな。副委員長は普通だけど」
「分かった。委員長様と副委員長様の頼みとあっちゃあお前も断りづれえだろ」
「恩に着るぜ。明日学校に持ってくから」
「しゃあねえな。今から出すか」




