余話 居間にて
居間にて
「お兄ちゃん、梨乃さん知ってるよね?」
「高辻先輩?」
「うん」
「知らいでか」
「梨乃さんて有名だったの?」
「おう。1年の俺らが知ってたくらいだぞ」
「そっかー。やっぱり美人だから?」
「いや、美人なだけなら他にもいるだろ。好みもあるし」
「しかも巨乳だし?」
「それも好みだろ」
「え!? みんな大きい方がいいんじゃないの!?」
「とは限らん。絶望するのは早いぞ、妹よ」
「我が兄ながら失敬だな! じゃなくて! じゃあ何で梨乃さん有名だったの?」
「学業だろうな」
「そんなにスゴかったの?」
「あくまでも噂だけどな、3年の4月に全国統一模試で1位とったらしい」
「1位か…!」
「東大理三も確実と言われてて、本人も医学部志望だったから、先生もみんな東大受けるもんだと思ってたら、近くの方が楽っつって信州の医学部受けたらしい」
「くはー。さすが梨乃さん、カッコいい!」
「噂だから尾鰭もついてんだろうけど」
「信州の医学部に現役で合格したのは事実、と」
「そんな逸材の上にあの容姿だからな。有名にもなるだろ」
「アイドルだった?」
「いや。遠目にも近寄りがたい気を出してたな」
「え、そうなの?」
「いわゆる高嶺の花ってやつ?」
「あー。それでファンはみんな潜伏してるわけか。お兄ちゃんは? ファンじゃなかったの?」
「でしたとも!」
「おお…身近にも潜伏してた」
「今度高辻先輩連れてくる時は俺にも声掛けろよ!」
「えー」
「なんじゃそのイヤそうな答え」
「イヤじゃないけどめんどくさい」
「この正直者め。仲良くしてもらってるんだろ。真面目な話、挨拶ぐらいはな。藍ちゃんにも」
「まあ…そういうことなら…」
「そういうことだ」




