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リセエンヌ  作者: 松本龍介
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余話 今日

余話 今日


 今日の夕方、私は生まれて初めて遅刻をした。ほんの数秒だが、遅刻は遅刻だ。

 今日の夕方、私は生まれて初めて家族や親戚以外の人と外食した。おしゃれとは言えないが美味しい店だ。

 今日の夜、私は生まれて初めて家に人を呼んだ。両親がどう思っているのか少し気になる。

 今日の夜、私は生まれて初めてあの子が私以外の人になつくのを見た。少し口惜しい気持ちもあるが、それ以上に嬉しく思っている。

 今日の夜、私は生まれて初めて両親以外の人と風呂に入った。思っていたほど緊張しなかった。

 今、私は生まれて初めて両親以外の人と同衾している。三人なのでキングサイズでも狭いが、この狭さが却って心地いい。

 今、私は生まれて初めて嬉し涙を流している。隣の二人には悟られないようにしなければ。

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