ポメとの出会い
「喋ったー、じゃありませんよ。失礼ですね」
ポメラニアン(?)が何か言いながら距離を詰めてくる。
失礼とか聞こえた気がする。
「あ、いや、あの」
ポメラニアン(?)は、白くてくるりと巻かれたしっぽを一振りすると、俺の目の前でお座りのポーズになった。
「ここに引っ越してきたんですか?」
かわいく首を傾けて聞いてくるポメ(仮)。
「えっと、はい、まあ。この家に腰を落ちつけようかと」
ポメは、さっき俺が驚いて落としてしまった干し肉の匂いをすんすんと嗅いでいる。
「……そうですか。まぁ、悪くない匂いですね」
「あ、よかったらどうぞ」
干し肉を指して「どうぞ」のジェスチャーすると、ポメはふわふわ尻尾をぴょこぴょこ揺らした。
「ありがとうむぐむぐ」
「……美味しいか?」
「うん」
「お腹空いてたの?」
「……ちょっと」
ポメは干し肉を平らげると、満足そうに木陰でころころし始めた。
まぁ、そこにいても特に不都合はないし、勝手にころころしててもらうか。
俺は畑作業に戻り、石を掘り出し始めた。
ごそごそ。ごそごそ。
そこへポメがころころー、とやって来て、前足でわちゃわちゃわちゃーと石の周りの土を掘り起こしてくれた。
「助かるよ」
ポメはまたころころー、と木陰へ戻っていった。
俺はまたクワを持って、もぞもぞと慣れない手つきで畑を耕し始めた。
***
夕方。
俺は畑作業の手を止めて、夕飯の支度にかかることにした。
ポメはいつの間にか帰ったらしい。
また来てくれるといいな。
今朝は近くの川でうまいこと魚が釣れたので、炭火で焼こうと思う。
正直、キャンプみたいで楽しみだ。
つづく