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国営会社『黒葬』~秘密結社は暗躍し、世界の闇を『処理』する~  作者: ゆにろく
Ⅱ 南極古代都市『アトランティス』編
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第90話 少女と強者

週間ランキング(アクション)の60位にランクインしていました。

皆さまのおかげです。ありがとうございます!

 深夜2時。

 春奈が待ち始めてからおよそ8時間。

 とうとうその時が来た。眠気はイッキに吹っ飛んだ。

 春奈はブランコに座ったまま、口を開く。


「こんばんは……。『極夜の魔術団』でしょ? あんた」


「あぁ。……意外だな、一人か?」


「そ、一人」


 春奈の前に現れたのは外人の男。最初に会った二人とは違う。

 年齢は30代くらいで、随分雰囲気がある。

 なんかわかる。多分、強い。


 ――そう、うまくはいかないか。


 強そうなやつが来たということは警戒されているということ。

 それでもやらなきゃならない。


「ここで待っていたということは、俺達に用があるんだろう? なんだ」


「……話しにくい。あれ出してよ。結界みたいなやつ」


「……いいだろう」


 男は札を数枚ばら撒くと、「『皆既食エクリプス』起動」と呟いた。


「話を続けろ」


「……私は今、『黒葬』で働いてんだけどさ、そっちに寝返りたいんだよね」


 春奈の座るブランコは少しだけ揺れていて、耳障りな音を立てる。


「……」


「どうすれば、仲間に入れてくれる?」


「……そうだな、『黒葬』の誰か一人を殺して来い。そうすれば認めよう」


「そっか」


 春奈は、ゆっくりとブランコから立ち上がる。


「やっぱり、そういうのが『証拠』になるんだろうね」


「あぁ、説得力があるからな。付け足すと、できれば戦闘員が良い」


「へぇ」


「……強ければ、なお良いだろうな」


 男は静かにそう言葉を続けた。

 ブランコは春奈が立ち上がったことで、不安定になりふらふらと動く。


「……ところでさ、あんた強い?」


 ブランコは春奈の足に当たってピタリと止まった。


「ああ」


「じゃ、……『証拠』には持ってこいってことだ」


 福田との戦いから、10時間。魔力はほとんど回復した。

 とはいえ、怪我は完治していない。

 だが。


「――今日、ここでお前らとの因縁は断ち切る」


 私の居場所は『黒葬』だ。


「良いのか? 不意を付かなくて」


「……最初からわかってた癖に。顔に出やすいんだよ、私」


 息を吸う。

 腹部が激痛が走る。

 痛みをこらえ、構えた。


 ◆


 現在、『極夜の魔術団』は二つ目の『陣』の生成に取り掛かっていた。


「シャルハットさん。ここと、あともう一ヶ所の『陣』の生成が終わったらどこへ行くんですか?」


「本命の儀式をしに行くんです」


「本命ですか?」


「そう。『陣』で集めた魔力を全て収束させて大魔術を起動するんです」


「大魔術……ですか。それで世界が変わると」


「……正直どうなんでしょうね。世界が変わるかどうかは私にはわかりません」


 シャルハットは儀式を行う魔術師達を見ながらそうつぶやいた。どこか興味なさげなのは気のせいだろうか。


「その大魔術で無差別に人が死んだり、都市が丸々壊滅したりとかは……、それだと怖いんですけど」


「安心してください。だーれも死にゃしませんよ。むしろ……」


 ◆


 オーストラリア上空。

 燈太は飛行機で深い眠りについていた。




 ――この時、彼から『UE』が放出されていることに、誰も気づくことはなかった。




【『アトランティス』調査隊、帰還まであと8時間】

燈太の『UE』放出に誰も気づかないのはハイド(現象課長)が破壊されたのと、そもそもオーストラリア上空の『UE』観測は誰もしていないからです。

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