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国営会社『黒葬』~秘密結社は暗躍し、世界の闇を『処理』する~  作者: ゆにろく
Ⅱ 南極古代都市『アトランティス』編
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第85話 保身と清算

「なぁ、木原。で、いつジジイをぶっ殺すんだぁ?」


「今からさ」


 ハールトと別れた木原と篠崎は、人気のない道を歩きながら会話を続ける。二人は現在指名手配されていることには変わりない。既に日も落ち暗くなってきたものの、フードを深くかぶり、人目には気を付けていた。


「今からぁ?」


「あぁ。僕たちは急がなきゃいけない」


「?」


「福田君の持っていた盗聴器の音声を聞く限り、多分『黒葬』は殺れてない」


「こっちの情報をペラペラ話してたんだっけか? そんな余裕があるっつーことは壊滅はしてねぇと」


「うん、そう。皆殺しにするって魔術団の人は言ってたからね。で、まだ『極夜の魔術団』は『黒葬』が壊滅したと信じてる」


 ただ、なぜ福田が『極夜の魔術団』に殺されたかが疑問のままだ。

 木原達は知らないが、『極夜の魔術団』だけ知っている情報が何か他にあるのかもしれない。しかし、ハールトにあまり探りをいれるような真似をして警戒されたくはない。

 ひとまず、『極夜の魔術団』は『黒葬』を完全に壊滅できていないことを知らないが、木原達は知っている。これだけで十分だ。


「でも、これは時間の問題だね。返り討ちにされたんなら、突入してた『黄昏の3』って人との連絡が一向に取れないってことになるわけで、いずれ気づかれる」


「そーなると?」


「魔術団にとっての天敵が未だ存続しているとなれば、この『暁の5』の暗殺は却下されるだろうね……。ハールトさんが、この取引を飲んで、暗殺を許したのは『大きな障害がないから儀式の成功率を下げても良い』という前提の元。天敵がいるのに、儀式の成功率を下げるとなれば多分話は変わってくる」


「……先にぶっ殺して、『殺っちまったんだからしょーがない』って形にするっつーことかぁ」


「そういうこと」


 これは時間との戦いだ。『暁の5』暗殺をハールトが認めている今しかない。『黒葬』が先に動き始めてもアウトだ。いよいよ『黒葬』との全面戦争が始まれば、もう後がない。

 もちろん、暗殺後に『黒葬』健在であることが判明しハールトがこちらに逆ギレする可能性もある。「これじゃ、話が違う! クソ殺人鬼どもめ!」といった感じに。

 ハールトへの機嫌取りの方法としては、殺した『暁の5』の事後処理を利用する。というのも、ハールトは深く言及しなかったが、『暁の5』が失踪すれば、ハールトに『暁の5』殺害、及びそれに関与したという疑いが向く可能性がないとは言い切れない。しかし、今の状況下なら油断していた隙を突き、『暁の5』が『黒葬』に殺されたという風に魔術師は解釈するだろう。

 これは「『黒葬』が未だ健在であった」という事実がプラスに働いたということで、ハールトには溜飲を下げてもらう算段だ。


 問題は、『暁の5』を殺害できるか。ここに掛かっている。時間がない以上寝込みを襲うのは無理。

 正面突破となる。


「おいおい、ハールトにあんだけのこと言っといてまーた震えてんのか?」


 木原は震えていた。

 この暗殺は生きるために仕方なくとった最低限のリスク。しかし、それにしてはあまりに危険。


「ざ、ざっくりとした計画は歩きながら話すね……」


 『黒葬』が健在ならば、殺しも手短にしなければならない。長引けば、魔力を感知しすっ飛んできて、『黒葬』と鉢合わせという最悪のパターンがある。


「……あぁ、怖い」


 ……ハールトを『暁の5』に反乱分子として売って、保身を行うことも視野に入れておこう。


 ◆


 春奈が向かったのは、初めて魔術師に出会った住宅街である。ここにいれば、魔術師側にも「コンタクトを取りたがっている」という意図が伝わるはず。

 春奈と魔術団に接点があるのはこの場所のみなのだから。


 あと、別件でここには用事があった。


「まさか、戻ってくるとはね」


 春奈がひと月ほど世話になった叔父の家である。

 チャイムを鳴らすと、叔父が顔を出した。


「んだよ、こんな時間に……」


 叔父は春奈の顔を見た途端に驚愕の表情を浮かべ、すぐに激怒し――


「てんめぇ、どこ行ってやがった!!」 


 叔父は春奈の胸ぐらをつかみ、家に引き込んだ。


「警察も『無事』の一点張りだしよォ!!」


 叔父に『黒葬』の話をすれば、いきなり春奈の保護者面をして『黒葬』に金をせびるようなことを言いかねない。『黒葬』の人事の人に、叔父にはテキトーなことを言って、煙に巻いておいてほしいと頼んでいたのだ。


「まさか、お前! 俺のことを警察に相談したんじゃねぇだろうな!」


 掴む手に力が入る。


「あれは教育だ! また一から教育して――」


「うす汚ぇ手で触んな、ボケ」


「あぁ?!」


 春奈は胸ぐらを掴んでいる腕を取り、叔父の体勢を崩す。叔父はその勢いで、ドアに顔からぶつかった。


「へぐっ!」


「私にはもう居場所(・・・)がある」


 これは過去との決別、清算だ。

 今度は春奈が叔父の胸ぐらを掴む。


「もう二度と私に関わるな! 次会ったら、こんなもんじゃ済まさないからな……」


「ひぃい!」


 怯える叔父を適当に放り、家を後にした。


「ふぅ……」


 そう、今日で過去(・・)を全て清算する。

 あとは、魔術師が接触してくるの気長に待つだけだ。


【『アトランティス』調査隊、帰還まであと16時間】

2部終わるまで基本群像劇方式で行きます。登場人物が多くてごめんなさい。

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