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国営会社『黒葬』~秘密結社は暗躍し、世界の闇を『処理』する~  作者: ゆにろく
Ⅱ 南極古代都市『アトランティス』編
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第79話 当たり前の手段

ちょっと表記が見辛かったらごめんなさい

(ここは……?)


 先ほどまで絶大な存在感を放っていた恐竜はもうそこにはおらず、燈太の目の前には深い闇が広がっていた。


(そうだ、台座の上で能力を使って……)


 自分の身体は動かない。いや、動かないというより存在していないという感じだ。

 多分、これは『UE』に含まれる莫大な情報量によって生み出された、いわゆる精神世界。そういう状況に自分は直面していると、燈太は冷静に分析した。

 ……恐竜に捕食され、ここが天国という可能性もなくはないが、彼は仲間を信じている。


 ――初めまして。


 突如、燈太の目の前に容姿端麗な青年が現れた。着ている服は現代のものとは違うし、歴史の教科書でみたことのあるようなデザインでもなかった。この人物が『アトランティス』を作った本人なのだろうか。


 ――私は『ウosウkオk』。


(……名前……か?)


『UE』に含まれた情報は全て能力によって、燈太がわかるように変換処理される。「私は」以降の部分、おそらく名前に当たるところ以外は言葉を理解できた。

 突如現れた青年と頭に流れ込む言葉。これで、『オリハルコン』で出来た部屋に封じられていたのは『情報』であり、それを燈太の能力で理解することができるという仮説は正しいと証明された。


 ――私は、あなたよりも遥か昔を生きた人間です。これは私達が未来に向けて残したメッセージ、そして私達が存在したという記録なのです。まあ、ここに来るまでにいくつかは読み取っているかと思います。私達の暮らしや歴史を。


 上階の建造物群、これに歴史や暮らしの情報が保存されているとみて間違いない。この仮説も正しかった。

 ただ……。


(『読み取っているかと思います』……か)


 ……やっぱり違和感がある。

 この『UE』を使った、情報の読み取りは多くの人間ができることではない。もしかしたら、世界で見ても燈太にしかできない可能性だってありえる。この部屋はともかく、上階の情報は青年たちにとって「読み取って欲しい情報」であることは間違いない。

 もちろん、「この部屋の情報を読み取れていること」は「上階の情報も読み取れること」を意味する。そういう意味で『読み取っているかと思います』という言葉を選んだのかもしれない。


(……読み取る能力を持つ人間がいて当たり前のような……)


 そういう言い回しに聞こえるのだ。やはり、まだ何かあるのか。


 ――ちなみに


 そのとき、あることに気づいた。

 青年の口が動いていないのだ。

 ……いや、この青年は「情報」であり、実体があるわけではない。そういうものか?


 ――この部屋は台座を基準として「情報」が循環するように作られています。ですから台座に立っているだけで部屋にある情報を全て取得することが可能です。


(……いや、口が動いていないこと(・・・・・・・・・・)に意味があるとするなら)




 ――ゆえに、もしあなた達のテレパシー能力(・・・・・・・)が退化していたとしてもこの部屋の情報を獲得するのに問題は生じないでしょう。




 青年から放たれた「テレパシー能力」という言葉。

 燈太の中で全てがつながった。


 燈太が行っている『UE』を介した情報の取得。燈太は能力の性質上、受信しかできない。もし、これに加え情報を『UE』に変え送信ができるのであれば、それはいわゆるテレパシー能力となる。

 これが『アトランティス』を作った青年らには当たり前に備わっていたのだ。だから、目の前の青年は口を動かさない、否、動かす必要がない。


『――つってもめんどくせーことするよなー。絵を書いちゃいけねぇこともねーし、わかりやすくすりゃいいのにな。現に燈太がいなきゃ読めなかったわけだしよ』


 こんなことを紅蓮は遺跡に対して言っていた。

 テレパシー能力を持っていない今の人類にとっては不便極まりないが、多分彼らからすればテレパシー能力はあって当然の物なのだ。テレパシーの送信能力により生み出した『UE』を『オリハルコン』で閉じ込め、情報を残すというやり方は彼らにとって当然かつ、これ以上にないほど理にかなった方法だったのだ。情報の劣化もなく、鮮明かつ膨大な情報を残すことができる。ただ、彼らのテレパシー(当たり前)は、今の当たり前ではなかった。

 彼らは遥か昔を生きた人間と言っていた。昔の人類にはテレパシー能力があってそれが今は失われてしまったのか、それとも彼らは人間とよく似た別の生き物なのか。燈太がそれを知る由はない。

 認識の違い。これが多くの謎を生んだのだ。


 ―—改めまして私達の遺跡へ来てくれて、本当に感謝しています。

 

 青年は言葉を紡ぎ始める。テレパシーの件は一度おいて、燈太は再び話に集中する。


 ――しかし、あなた達に、私達は詫びなければなりません。


(しゃ、謝罪……?)


 ――私達はここへ来るまでの階段に罠を仕掛け、この部屋にも脅威を感じるであろうギミックを用意しました。


(そうだ……、それに関してはまだこの人達の意図が見えない……)


 階段には矢が飛んでくる仕掛けがあったり、部屋には恐竜がいた。上階の情報(歴史や暮らし)は今の人間に読み取って欲しいもので間違いない。では、この部屋の情報はどうなんだ。

 読み取るのを様々な罠で妨害してきた割には、先ほどから友好的に見える。


 ――これは、あなた達を試すものです。私達にできることは限られていました。野蛮な方法になってしまったことを心からお詫びします。


(試す……?)


 上階の情報とは違い、この部屋の情報は何かの「資格」がなければ教えることができないということか。


 ―—まずは勇気です。危険であっても立ち向かえる意志を試しました。階段に仕掛けたトラップがこれです。


 よくよく考えてみれば、このような遺跡を作ることができる技術力の者達が本気で部外者を拒むならばもっと殺意の高いトラップを用意できたのではないだろうか。まあ、矢が刺されば出血は免れないし、当たり所が悪ければ死ぬ。特に燈太は。


 ――そして、一人ではないことです。この部屋の情報は膨大であり、一人で解釈を始めればあなたが目覚めることはないでしょう。


 確かに、恐竜が構えている中、一人で台座まで行こうとはならない。誰かに足止めをしてもらう必要はあるだろう。事実、仲間がいなければ恐竜に燈太は100%捕食されている。


 トラップの意図は理解した。ただ、いまいち話が掴めない。

 青年はこの部屋の情報を得るための必要な資格が「勇気」と「仲間」であるという。

 この部屋で「伝えたいこと」は一体なんだ?


(まるで何かを……、大事な物を託すって感じだ)


 ――勇気、仲間。この二つを試した理由を話します。


 ――今、あなた達、あなた達の世界に危機が迫っています。

今回は補足多めです。


Q. 「テレパシーが退化してたら~」発言の意図

A. 退化して受信範囲が狭いと部屋の『UE』を全部読み取れないよね、って意味です。青年らはテレパシーがなくなってるとまでは考えなかったようです。「当たり前」の怖さですよね。


・アトランティス人のお名前に深い意味はないです。ただ、ちょっと読み方を変えると……。

・紅蓮の言葉は74話参照です。

・69話を読み返すとテレパシーに関してちょっとした伏線があるとかないとか……

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