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第6話 月光照らす、紅の凶刃(1)

 燈太は車に乗っていた。

 燈太は後部座席に座して、隣には空。運転するのは紅蓮。助手席には鑑心が座っていた。

 向かうは妖刀『紅』が保管されているという神社である。


「そーいや、燈太」


 紅蓮が前方から燈太に声をかける。


「なんですか?」


「お前結局、『超現象保持者ホルダー』だったんだろ?」


「あっ、はい。みたいです」


「なんでも自分の置かれてる環境の情報がなんでもわかるとか」


「へぇー、なんか便利そうッスね。じゃあ問題ッス、今何時でしょう」


 燈太は能力を使う、ルーティンを行う。両手の指と指を付け、今の時間を問う。


「22時25分47秒……です」


「へぇ……」


「合ってるッス! 他は何がわかるんすか?」


 燈太は面接試験の後、能力について様々なテストを行い、何がわかるのか、ある程度把握していた。


「気温、湿度、方位、現在場所、その緯度と経度とかもわかります」


「すげぇッス! スマホみたいッスね!」


「……空、あんま誉めれてねぇよ」


 今のご時世、燈太の能力で出来ることはスマホで事足ると言えば事足るのかもしれない。


「──俺はァ、スマホが使えねェから助かるな」


 少し報われた燈太だった。


「……まぁ、あれだな能力としては『現象課』向きなのかもな」


「そうなんですか?」


「あそこは、データ集めとかよくやってんのよ。手ぶらでデータ取れんのは喜ばれんじゃねぇの?」


「紅蓮先輩から現象課の話がでるなんて珍しいッスね」


「……まあな」


「?」


「現象課にウマが合わねぇ奴がいんだよ」


 紅蓮と現象課の間には何かあるらしい。

 燈太は研修中なので、現象課にも行くことになる。そこで何かわかることがあるかもしれない。

 そして、使い道が不明瞭だった能力にも役立つ場所が見えてきたのは良かった。どれだけショボくても燈太にしかないものなのだ。活用できるならそうしたいのは当然である。


「対人課、現象課、あと生物課でしたっけ?」


「あぁ。……生物課は変わりもんしかいねぇけど良い奴ばっかだな」


「不死身の紅蓮先輩が『変わり者』とか言うのはどうかと思うッス!」


 対人課の面々は燈太に優しく、少しいただけで、悪い人はいないことがわかる。他の課もそんな人ばかりだと良いなぁ、と思う燈太だった。


 ◆


「ここだ。着いたぜ」


 紅蓮がそう言い、窓に目をやると小さな神社が見えた。時間としてはそろそろ24時を回る。神社のある近くは田んぼや畑といった田舎感溢れる景色が広がっており、街灯がなく辺りは真っ暗だ。

 車のライト、月明かりだけが視界を明瞭にしている。


「ほれ」


 紅蓮は全員に懐中電灯を配った。これで、何も見えず転ぶことはないだろう。

 車から降りると、燈太達は長い階段を登り、鳥居をくぐった。


「お待ちしておりました」


 声の先には神主と思われる老人が立っていた。


「この神社の神主をしております、佐々木源六と申します。遠方から遥々お越しいただき有難うございます」


「いえ、こちらこそ、『黒葬』に協力して頂きありがとうございます」


 普段は乱暴な言葉遣いの紅蓮だが、仕事になるとしっかりとした口調を使っていたので、なんとなく違和感を覚えた。


「似合わないっスよねー、紅蓮先輩のけーご」


 空がススっと燈太に近付き耳打ちした。


「では妖刀の元へご案内します」


 佐々木は歩き始め、それに燈太達は佐々木の後を付いていく。


「妖刀はどこに?」


 歩きながら、紅蓮が佐々木に尋ねた。


「本殿の後方に木造の建物が見えますか? あそこに厳重に保管されています」


「基本的には誰も立ち入らない……と」


「もちろんです。私の前任から誰一人として立ち入ったことなどありません。このままにしておくのが一番良いとは思うのですが、私には跡継ぎがいません」


 佐々木には跡継ぎがいないという。妖刀を管理する人間がいるうちに、つまり佐々木が元気な内に『黒葬』に妖刀を預けたいということだ。

 少し本殿から離れた所に、木造の建物があった。大きさは高校にあった格技場程度だ。刀一本を保管するにはやけに大きい。それだけ、危険なものということなのだろうか。

 入り口には大きな南京錠が一つついており、佐々木はそれを持っている鍵束の一つで開けた。


「……なかなか雰囲気あるっスね」


「……そうですね」


 入り口を開け、中へ入るとまた一つ扉が構えており、こちらにも南京錠が取り付けられ、それとは別に扉を開ける鍵穴も見える。

 いくらなんでも厳重すぎる、と思ってしまう。


「……これはこの鍵……。すみません……私も中に入るのは初めてなもので」


 佐々木はいくつもある鍵の中から、サイズが合いそうなものを選択し、鍵穴に入れた。

 南京錠が外れ、扉の鍵も開けたようだ。


「この中です」


 佐々木はゆっくりと扉に手をかけ、静かに開けた。埃っぽい臭いが辺りに漂う。

 扉の向こうには一本の刀があった。

 部屋の真ん中にポツンと置かれた刀掛けに乗せられている。

 窓から射し込む月明かりがその刀を照らしていた。


「あれが……妖刀『紅』……」

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