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国営会社『黒葬』~秘密結社は暗躍し、世界の闇を『処理』する~  作者: ゆにろく
Ⅱ 南極古代都市『アトランティス』編
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第51話 黄昏の3(1)

『黒葬』指令本部室。

『黒葬』社内での連絡すら叶わず、情報共有は困難を極めていた。


 現状を整理すると、指令部長である獅子沢は『UE』観測地点二か所に、鑑心と飛鳥、幽嶋を派遣。それだけでなく、この電波妨害に対し、嫌な予感を覚えた獅子沢は先ほど調を『barBLACK』へ、春奈を受付へ向かわせた。

 連絡網は復旧しないものの、指令系統は一段落を迎えている。


「『極夜の魔術団』ですか……」


 葛城は、獅子沢へ声をかけた。

 少し前、幽嶋が瞬間移動でこちらに姿を現わし、『UE』観測地点に『極夜の魔術団』がいることを報告したのだ。よって『UE』を発生させた組織は判明した。


「……なぜ今か」


「え?」


「『極夜の魔術団』は、二か月ほど前に都内で姿を現わしてから一度も動いた気配はなかった……」


「……電波妨害に『極夜の魔術団』が絡んでいる……?」


『UE』の発生が人為的な物であるとわかった以上、その可能性は決して低くはない。しかし、『黒葬』本社が地下のどこに位置するかといった情報は誰も知らないはず。『極夜の魔術団』の魔術で地盤が歪み偶然ここの配線が切れた。そういう可能性もある。


「……葛城。対人課オフィスには誰がいた?」


「? 鑑心、調、春奈、飛鳥の4名でしたが」


「まだか……」


「まだ?」


 実は、この獅子沢は、『油断してはならない。凶刃はいともたやすく臓腑を切り裂く』という社長の『導き』を聞き、一つの手(・・・・)を先んじて打っていた。

 できることならアトランティスへ行く前に、完了しておきたかった一つの保険(・・)

『極夜の魔術団』が『黒葬』(ここ)の場所を知っていて、『UE』の発生源へ執行部を派遣させたこともあちらの想定内であるとするなら……。

 保険(・・)はあるに越したことはない。


「……まぁ良い。葛城、調の元へ行って現状を確認してこい」


「了解しました」


「カレン。『極夜の魔術団』のことを知らない遊佐、鑑心が心配だ。引き続き、この通信妨害の原因究明に努めろ。復旧次第、2人のバックアップだ」


「あ、はい! 了解しました」


 テキパキと指令部の人間が動き始める。

 ――ここからが指令部の腕の見せどころだ。




「――凄いなぁ。映画のセットみたいだ。これは」




 聞き覚えのない男の声が指令部室に響き渡る。

 指令部室のちょうど中心に男が立っていた。茶髪に髭を生やした30代くらいの男性。顔立ちからして日本人ではない。

 男はあろうことか衣服を一切身に纏っていなかった。


「どうした? 忙しいんだろう? 続けてくて構わんよ?」


 突如して現れた正体不明の男。

 指令部の人間はその当然の出来事に唖然とし、皆手を止めた。


「あぁ、この格好かい? いやぁそういう趣味じゃないさ。仕事なんだ。わかってくれ」


 指令部社員の表情に驚愕や恐怖の色が浮かぶ中、男は平然と口を動かし続ける。


「まぁ、晒せるほどの自信はあるがね」


「……誰だ、お前は……」


 獅子沢は男をにらみつけた。


「あぁ。そうか、赤いローブを羽織ってないからわからないか……。

 ――『極夜の魔術団』の魔術師。『黄昏の3』ビヨンデと申します」


 ビヨンデは深々と頭を下げた。

 瞬間、獅子沢は机の下に備え付けてあるハンドガンを取り、ビヨンデの頭を撃ち抜いた。その一連動作は1秒を切っている。


「おいおい、そんなに急ぐなよ」


 獅子沢の放った弾丸は間違いなく、ビヨンデを貫いた。しかし、血は流れていない。


「焦んなくても、皆殺しにしてやるからさ」


 ビヨンデは獅子沢に向かい歩いていく。


「部長っ!」


 葛城は声を張り上げる。


「来るな、葛城! 下がってろ」


 獅子沢はハンドガンを構え、再度発砲した。ビヨンデの胸と額を弾丸は通り抜ける。

 ビヨンデは悠々と歩き、獅子沢との距離を詰めていく。獅子沢のハンドガンは弾を打ち尽くし、ブローバックした。


「ありゃ、弾切れか?」


 獅子沢は一歩自ら前へ出た。思い切り振りかぶり、ハンドガンでビヨンデを殴りつけ――、空ぶった。


「そうゆうことさ」


 獅子沢はビヨンデを見直した。

 そこにビヨンデはいる。はっきりと見えている。しかし、ハンドガンはすり抜けた(・・・・・)


「……透過か」


「正解!」


 ビヨンデは手を獅子沢の腹部へ伸ばした。そのまま、腕は腹部を貫く。違和感や痛みはない。すり抜けている。

 しかし、この動作が無意味とは思えない。獅子沢は身を捻り、ビヨンデから離れようとした。


「グフッ!」


「部長っ!!!」


 獅子沢は口から真っ赤な血を吐いた。今、突如として、いきなり鈍い痛みがやってきたのだ。

 獅子沢は力を振り絞り、腹から生える腕をハンドガンでめいっぱい殴りつけた。


「おお! 根性あるな!」


 しかし、ハンドガンは腕をすり抜けた。

 ビヨンデは腕を獅子沢からスッと抜く。獅子沢は力が抜けその場に倒れこんだ。


「『虚無を晒す肢体インビジブル・イグジスト』。透過するのが俺の魔術」

『黄昏の3』は39話で少しだけ紹介されていますが、姿を現わしたのは今回初です。

ちなみに、『barBLACK』で襲撃を受けたことも、ちょうど今から春奈と福田がドンパチ始めようとしていることも、指令本部には伝わっていません。

連絡系統が死んでますからね。

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