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国営会社『黒葬』~秘密結社は暗躍し、世界の闇を『処理』する~  作者: ゆにろく
Ⅱ 南極古代都市『アトランティス』編
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第34話 三課合同「アトランティス」調査任務

「三課合同大規模作戦……」


「なんかすごいことになったッスね……」


 対人課の紅蓮と空の表情や言動からも前代未聞であることがうかがえる。


「各課より調査へ適したメンバーを集めて、迅速かつ臨機応変な対応で調査を実施するのよ」


 葛城は語る。


「……背に腹は代えられない……か。確かに、『衝突』に備え万全を期すべきだろう。もちろん油断は許されないがね」


 対人課、調である。


『……メ、メンバーはどうなるんでしょう? 生物課からも一人は必ず同行を許可してください』


 生物課である藤乃はやや不服そうだが、譲歩している。


『静華さん、そこは大丈夫デス。もちろん話は通してありマス』


 幽嶋は課長だ。この作戦を決めた会議に参加していたのだろう。


「藤乃の言う通り、メンバーを聞かせろ、葛城。人選がこの任務の成果をわける」


「それにかんしちゃ、クソ眼鏡に同意だな。そこまでするんだ。人選ミスりゃ台無しだ。国内の仕事ほっぽるわけでもねぇんだからな」


「同意するな猿め。俺の意見の信頼度が下がる」「死ね」


 静馬と紅蓮が睨み合い、空が間に入った。


「まあまあ。で、めぐ姉どうなんすか、そこは?」


「えぇ、そこはかなり頭を悩ませたわ。カレンちゃん、お願い」


「はい」


 指令部所属のカレンはモニターにスイッチを入れた。


「では、『アトランティス調査隊』選抜メンバーを読み上げます」


 カレンをモニターを操作しながらそう告げた。

 緊張が走る。


 ――俺は行けるのかな。


 燈太はそう思った。


「対人課より、伊佐奈 紅蓮、狐崎 空。

 現象課より、『課長』ハイド、佐渡 静馬。

 生物課より、『課長』幽嶋 麗、藤乃 静華、ネロ。


 以上」


 モニターに表示された名前にも、カレンの口からも坂巻燈太の名が出ることはなかった。


「え」


 声がでた。


「あの、俺は?」


 葛城と目が合う。


「燈太君、君はメンバーには入らないわ」


 燈太が『黒葬』へ入ったのは自分の『UE』と同種のものを見つけ、自分の能力を究明するため。いまだ成果はない。しかし、『アトランティス』では『UE』が観測されたと言っていた。行く価値はある。


 そして今回の任務に燈太の能力は適役ではないか。

 調査という観点においては誰より向いた能力を持っている。


「俺の能力は必ず、『アトランティス』で役に立ちます!」


「……そうね、でもそうじゃないのよ」


「え?」


「『お導き』の二つ目。『命運分かつは、新たな【星】である』という文言。前も言ったけれどこれは燈太君、君を示す可能性があるのよ。もちろん今となっては、春奈ちゃんの可能性もあるけどね」


「――ふぁたし?!」


 あくびをしていた春奈は、唐突に自分が呼ばれ驚いた。


「ともかく、この任務は危険すぎるのよ」


「……っ」


 まただ。左空が消えたあの日を思い出す。


「……そうだな、葛城」


 静馬が同意し、眼鏡をクイっと上にあげる。


「――燈太は同行させるべきだろう」


「静馬さん!」


「……静馬、どういうこと?」


「俺はこいつと何度か調査へ行った。燈太これは役に立つ」


「……そうかもしれないけれど」


「――そもそもよぉ、前提がずれてるぜ」


 紅蓮である。


「もし燈太を連れて行き、守りきれないっつーなら、連れていかなくても(・・・・・・・・・)『黒葬』は終わりだ」


「……どういうこと、紅蓮?」


「確かに燈太は失えない人材だ。でもよ、そこの白眼鏡や生物課員もそうだろ? そのために課長二人や対人課の戦闘員を二人も連れてくんだからな」


 紅蓮は話を続けた。


「護衛が失敗して、無事に帰れなかったのが燈太であれ、そうでなかれ『黒葬』は終わる。当たり前だろ? 今回連れてくメンツは各課のエースだ。こいつらが今後欠ければ『導き』にある『衝突』だなんだ以前に通常業務がまわんなくなる。今回はそーゆーメンツを引っ張ってんだ」


「燈太君を守りきれないようなら、そもそも行くべきでないってこと……?」


「そうだ。今回の任務は、はなから全員の帰還が義務。燈太が同行してようがしてまいがな」


「……護衛対象が一人減ることでリスクも減るわ」


「たかが知れてる。燈太の能力で危機管理できることを考えりゃそれでトントン、いやお釣りが来る」


「……『油断』じゃないのよね?」


「ああ」


「……わかったわ。

 3時間後に社内アナウンスで『アトランティス調査隊』メンバーを呼び出し作戦会議を行います。それまでに燈太君の処遇は考えておく。一度解散」


 解散の言葉で執行部員が、それぞれのオフィスへ戻っていく。


「紅蓮さん、静馬さんありがとうございます」


「……勘違いするな。貴様の能力が『幽霊トンネル』調査と同様に、役立つときが来る可能性があると考えただけだ」


 静馬はそう言い、去る。


「能力もそうだけどよ、お前の肝が据わってるとこは評価してんだ。あんのクソ眼鏡よりかは守りやすい。……ま、恵が同行を許可するかはまだわかんねぇけどな」


 紅蓮は肩をポンと叩くと、指令部室を出ていく。


「――燈太」


「あ、調さん」


 調に声を掛けられた。


「君が、入社した日を覚えているかね?」


「え?」


「君を『入社しないか』と誘ったのは私だ。なぜか、わかるか?」


「能力の究明を早めるため……と、言ってましたよね?」


「まあ、それもある。しかし、私は君の性格を一番に評価した」


「……性格?」


「未知に出会ったときの心のゆとり、そして、未知に焦がれる好奇心だ」


 調は燈太の目をまっすぐに見た。


「私の前で嘘はつけない。君のその好奇心は本物だろう」


「好奇心……」


「君はこの『アトランティス』調査に胸を躍らせているだろう?」


 解答はせずとも、調には伝わる。


「好奇心は猫を殺す。君の性格は道を間違えれば死を招く。


 ――しかし、人を生かしてきたのは好奇心に他ならない。


 君の好奇心それはなくすなよ。君を生かすものなのだから」


「はい!」


「いい成果を期待している。今度、土産話でも聞かせてくれたまえ」


 ◆


『――『アトランティス調査隊』そして、坂巻燈太は指令本部室まで来てください』


 アナウンスが流れた。


 やるべきことをやる。

 行くからには必ず成果を残す。

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