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国営会社『黒葬』~秘密結社は暗躍し、世界の闇を『処理』する~  作者: ゆにろく
Ⅱ 南極古代都市『アトランティス』編
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第33話 集う執行部

 『黒葬』指令部室。

 執行部に所属する多くの社員が集められた。生物課は本社から離れたところに研究室があるためモニターを通して参加である。

 招集された意味は。


「――『お導き』の一つ目がついに現実になったわ」


 指令部の葛城が口を開いた。


「……どんなんだっけか?」


「えー、紅蓮先輩覚えてないんスか? ……うちも覚えてないんスよ」


 声を潜め、対人課所属の紅蓮と空が話していた。


「『最南の地にて、失われた世界が目を覚ます。そこで得るものは今後の組織をより強靭にするであろう。しかし、油断してはならない。凶刃はいともたやすく臓腑を切り裂く』、だ。

 頭の再生が遅れてるんじゃないのか不死身猿」


「どーもッス!」


「てめぇには聞いてねんだよ、クソ眼鏡」


 現象課所属、白のスーツがトレードマークの静馬が一語一句違いない予言の内容を言う。相変わらず紅蓮と静馬は犬猿の仲らしい。


「今、静馬が言った内容が現実になったのよ。最南の地である南極の氷層下に突如として巨大建造物が多数出現した」


「……『失われた世界』とは、その建造物群を指すわけか」


「そう判断したわ。発見者によると、古代都市のように見えたらしいの。ちょっと大げさだけど『世界』とも解釈できる」


 燈太も真剣な顔で聞き入っていた。

 突然、肘で脇腹辺りを小突かれた。


「……『お導き』?とか、なんの話してんの?」


 最近入社したらしい、月野春奈だ。


「えと、黒葬の社長は未来予知ができて、その予知を『お導き』って呼ぶんです。その内容は静馬さ、……あの白スーツの人が言ってたやつです」


「へー、ありがと」


 聞いたもののあまり興味はないようにみえた。

 燈太は、「南極で発見された古代都市」にかなり興奮していたが、春奈はそういうわけではないらしい。


「話を続けるわ。

 この建造物群――通称『アトランティス』を早急に調査してほしい」


『す、すみません。ちょっといいですか?』


 生物課研究班長、藤乃静華である。


「どうぞ」


『南極大陸の氷の下にあるんですよね? そこには新種の生物や、独自の生態系が生まれている可能性もあります。それを早急に(・・・)調査するというのは少々……』


 生物課らしいもっともな意見である。


『ソーキュー?』


『急ぐって意味デスよ』


 生物課長の幽嶋と、生物課調査班員ネロの声も聞こえた。


「――俺からも失礼する。その『アトランティス』ではかなりの『UE』が検出されたと聞いた。早急であればリスクを孕むぞ」


 静馬も現象課らしい意見を口にした。

 なぜ、葛城は、指令部は早急に調べようとしているのだろうか。


「……そうね、通常ならば『アトランティス』の調査はかなり慎重かつ長い時間をかけて行うべきなの。……しかし、そうも言ってられない」


 葛城の顔が一段と険しくなった。


「『お導き』二つ目の内容にかかわる事よ。


『黒の組織は白の名を持つ集団と大きな衝突を起こすであろう。ここで白旗を降れば、組織はおろか秩序は崩壊す。命運分かつは、新たな『星』である。しかと心得よ。一度歪んだ星座らを直す手段など時を戻す他ないのだから』


 これね」


 この予言は一つ目の物よりも不穏である。


「この『お導き』の指す『衝突』。それが起こる前に『黒葬』はできる限りの力をつけなくてはならない」


 衝突でもし、負けることがあれば『黒葬』は壊滅、そして秩序までもが乱れるとさえ言っている。

 一つ目の予言で、『アトランティス』で得た物が『黒葬』を強くすると言っていた。

 その「衝突」までに、『黒葬』を最大限強化し、事に臨むべきだと指令部は判断したらしい。


「とはいえ、『アトランティス』に関わる『お導き』の後半では油断をしてはいけないということも書かれている……。

 課長を交えて行った緊急会議で出た決定はこうよ」


 ――これは一種の賭けなのかもしれない。




「『黒葬』執行部三課を跨いだ『アトランティス調査隊』を結成し――


『黒葬』初、三課合同大規模作戦『アトランティス』調査を始動する」

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