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第32話 これからのこと

「私は、『黒葬』執行部対人課の慶蝶調という」


「よろしくお願いします」


「まず、君の名前は?」


「月野春奈」


「ほんとに?」


「え、はい」


「ふむ。能力に目覚めたのは今月なのかね?」


「はい」


「君はどこかからのスパイだったりするのかね?」


「……は?」


「冗談だ」


「はぁ……」


「『白』と名の付く組織は知っているかね?」


「……へ?」


 などなど意味不明な質問を春奈は受けていた。というか、スパイがどうとか聞いていたが、もしそうだとしても首を縦に振るやつがいるんだろうか。


 そもそも、なぜこんな質問をされているか、その理由は一つ。


「いいだろう。君を『黒葬』は歓迎する」


 入社面接を行っているからである。


 春奈のような超能力を使えるものを『超現象保持者ホルダー』と言う。そして、その『超現象保持者ホルダー』の保護、及びその能力を使い常人では解決できない事件を取り扱うのが、『黒葬』という秘密結社なのだという。


 『超現象保持者ホルダー』が生まれるのは、ほぼ日本でだけらしい。よって、『超現象保持者ホルダー』は国内はもちろん、海を渡った海外の人間からも軍事利用、私欲のためにその能力を狙われる。

 『黒葬』へ入社すれば、不自由のない生活を保障され、そういった輩から保護してもらえる。『超現象保持者ホルダー』側が提供するのは、研究への協力だ。もちろん、健康を害さないようなもので頻度も多くはない。あとは、『黒葬』本社の清掃や雑務を仕事として与えられるという。


 そして、もう一つの選択肢がある。

 執行部への配属だ。

 こちらは希望制である。自分の能力を、才能を、有意義に使いたいという人間も少なくないという。『黒葬』の仕事には危険を伴うためだ。

 その代わり、給料としてとてつもない額がもらえたり、大抵の望みは『黒葬』側が叶えてくれるらしい。


 春奈は執行部への配属を選んだ。


 というのも、春奈が紅蓮に蹴り倒されて目が覚めてすぐのこと―—






「……ここは」


 春奈が目を覚ますとそこはベッドの上だった。


「起きたか」


 ベッド近くのイスに男が一人座っていた。


「!」


 春奈が少なくとも腹部に大怪我をさせてしまった男だ。……であればなぜ春奈は倒れたのだろう。男も落ち着いていて、点滴などもなく男が大怪我したようには見えない。


「あぁ、俺の腹ぐちゃぐちゃにしたことはもういいぜ? 治ったからな。そういう体質なんだ」


 ……治った。この男も超能力者なのだろうか。


「俺は『黒葬』対人課の伊佐奈紅蓮」


「こくそー?」


「超能力者をシバく秘密結社だ。お前は月野春奈で間違いないな?」


「……」


 春奈は小さくうなずいた。


「お前の目的は、だいたい検討ついてる。あの拘置所にいたはず(・・・・)の死刑囚への復讐だろ? お前の両親を殺した男へのな」


 秘密結社だけあり、既に春奈の素性はバレていた。

 ――待て。


いたはず(・・・・)?」


 この紅蓮という男は、そういった。

 まるで、今はいないかのように。


「……今はいないって意味だ」


「は?」


 アイツは死刑囚だ。

 春奈はベッドから起き上がろうとした。しかし、急に気分が悪くなりそれは叶わない。


「待ってよ。あいつは死刑囚でしょ! いないわけないじゃん! じゃあ何?! 脱獄???」


「端的に言えば、脱獄していた」


「……そんな」


「そして、それを職員たちは知らないふりをしていた。何者かが手を引いているとみて間違いない。どんな奴かはしらないがな」


 怒りが込み上げてきた。拳を強く握りしめる。


「この件は俺達『黒葬』が追うことになった」


「!」


「少なくともお前は、『黒葬』が保護することになる。だが、ここからはお前が決める」


 春奈は紅蓮を真剣に見つめた。


「『黒葬』保護下ではなく、『黒葬』執行部としてうちに来るか? そうすれば、秩序を守るため(・・・・・・・)にお前の両親の仇を討つことができる」


 返事は決まっていた。


「やる……!」


「だが、勘違いはするな。『黒葬』や俺はお前の復讐に手を貸そうってわけじゃない。お前の勝手は許さない。一人突っ走って殺すなんてもってのほかだ」


 紅蓮の表情は険しい。


「……もし、したら?」


「また、ぶっ飛ばす」


「……わかった。それで良い。ぶっ殺したいのは山々だけど、脱獄してるなんて論外。地獄に引きずり戻してやる」


「その息だ」


「……ねえ」


「なんだよ」


「あんたは何で私そこまでしてくれんの?」


「?」


「だって、言わくていい事でしょ? 死刑囚がいなかったとか」


「……『黒葬』は人材不足なんだよ。お前みたいなやつは利用した方が得だ」


「あっそ」


 春奈にとっては、利用されようが構わない。あいつに復讐できるなら。

 彼女の中の炎は未だ燃え続けていた。


 ◆


「おい紅蓮」


 紅蓮は声を掛けられ振り返った。

 そこには調が立ってた。


「お前のスカウトした月野だが、大丈夫なのかね?」


「……やっぱまだ、復讐する気満々でした?」


「あぁ。能力を使った、……というか使うまでもなくそんな感じだったがね」


「でしょうね」


 紅蓮は身に染みてわかっている。


「あーゆーのは時間掛けるしかないと思ってます」


「それなら保護下でもいいんじゃないのかね?」


「あれは放っておいたら、多分勝手に動きますよ」


「……それくらいなら、事件に関わらせつつ現場で手綱を握った方が良いと」


「それがベストだと思います」


「……紅蓮にしてはよく考えてるほうだな。わかった」


「……まるで普段俺はなんも考えてないみてーな言い方ですね」


「……」





「お、紅蓮先輩じゃないッスか! どうしたんスか? 廊下で突っ立って」


「俺、普段なんも考えてねぇように見えるか?」


「え、見えるッスけど……」

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