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第14話 パーカー少女、駆ける

 ここ指令部本部はモニター、PC多くの精密機器が、ありとあらゆるところに設置されている。床にも太い配線が広がっている。

 これは全て執行部のサポートをするためである。

 日本国内の『UE』の観測、世界情勢の監視、必要とあればハッキングまで、多くのことを行う。当然そこに勤めるオペレーターは敏腕揃いである。

 葛城恵もその一人である。


「場所でました!」


 オペレーターの一人が声をあげた。

「場所」とはもちろん、燈太、紅蓮、両名の監禁場所のことである。

 白金治正は、黒葬のことを知る数少ない人物だ。やはり、「裏」にも通じている。電話から逆探知されるようなヘマはしなかった。

 だが、治正は『黒葬』の社員の誰がどんなことをできるかも知らなければ、「社員番号」というものがあるかすらも知らない。

 社員番号など『黒葬』に存在しない。

 では葛城が燈太に言わせたかった17桁の数字とは何か。


 ──座標である。


 それは、本初子午線を0度とした経度、赤道を0度とした緯度からなっている。

 実際には「東」経や「北」緯と行った数字だけでは表現できない部分もあった。しかし、紅蓮が連れ去れてからそこまで時間が経っていないことから、国内にいることが推測できる。よって、東経で北緯になることは明白だ。

 燈太は丁寧にハイフンで区切っていた。

 居場所の特定は容易である。


「カレンちゃん。空ちゃんに伝えて、任務を続行してちょうだい」


「了解です!」


 カレンはマイクを付け、キーボードを叩き、空と連絡を取る。彼女はこの指令部で最年少だが、しっかりとした少女だ。


 そして、あの土壇場で自分の能力──自分を取り巻く環境の完全把握──を使い、葛城に居場所を伝えた燈太。

 彼もなかなかにキレていた。


「ナイスよ、燈太君」


 ◆


「──空っス!」


『こちら、時雨沢カレン。任務は坂巻燈太、伊佐奈紅蓮の救出。

 そして、白金敬之助、及び白金治正の処理になるわ』


「大忙しっスね!」


 空は会社を飛び出し、待機していた車に乗り込む。カレンから受け取った地図を見る限り、監禁場所はさほど遠くはない。車で行けば1時間とかからない場所だった。


『忙しいって、あんたの同僚でしょ? 捕まったの』


「あー。それを言われちゃどうしようもないっスね」


 空も苦笑いだ。


「……で、いいんスよね? 思い切りやって。治正って社長の方も」


『……治正は、殺人教唆の疑い、いえ黒よ。5人の人を殺している。……わかっているだけでも』


「そうスか」


『──秘匿死刑よ。これは』


「りょーかいッス」


 空は迷わない。


『武装した私兵がいる可能性が高いわ。しかし、社員に危険が及ぶ前に、現場の迅速な殲滅が求められる』


 空はワニを模した大きなリュックサックを背中から前に移動させた。


「サポートは任せるッス」


 小型カメラを襟に付ける。


「うちはただ駆け抜けるだけッスから」


 空は不敵に笑った。


 車から降りた空は、監禁場所へ走った。

 車で現場まで行けば奇襲が失敗する可能性があるため、1km手前でおり、そこから走る。

 ルートは全てカレンの指示だ。これによって最短かつ最善の道を行ける。指令部のオペレーターというのは伊達ではない。

 現在、木々の生い茂る、森のような場所を走っていた。


『現在位置から100m先に小屋があるわ』


「そこに監禁されてるんスか?」


『いや、小屋はダミーよ。小屋の中に階段か何かがあって、地下通路につながってるわ』


 『黒葬』の情報収集力は、尋常ではない。監禁場所の正確な座標がわかってから既に一時間。これだけあれば、指令部が執行部を導けるにたる情報量を集めるのは容易だ。

 目の前に、小屋が見える。


『「2速」で突っ込んで』


 カレンは空の襟につけられた、カメラで小屋を把握したのだろう。小屋へ入るための指示が出た。

 空は背負ったワニ型のバックに手を伸ばす。口に当たる部分のジッパーを開け、中から片手斧(・・・)を取り出した。彼女の相棒、愛斧である。


「行くっス!!」


 カレンの指示にある『〇速』とは空の能力に対して、指示を明瞭にするため、決めた指標であった。

 『2速』、それは時速300kmに到達する。つまり、新幹線の時速と同等だ。パーカーの紐やフードが揺れ始め、空の身体が『UE』に包まれる。

 加速。


 斧を時速300kmで、木製の扉へたたきつける。完全に破壊できずとも空が侵入する穴は開く。速度を落とさず小屋へ入った。


「な――」


 小屋で待機する男が中にいたが、空に反応できるはずもない。空は速度を落とさずに蹴り飛ばす。ある程度場所には配慮して蹴りつけたため、死には至らないだろうが起き上がることはないだろう。

 地下へ続く階段が目に入る。


『それね、行って。ここからは「3速」へ変更。敬之助、治正へのみ「4速」の使用を許可するわ』


「こっからも道案内頼むッスよ! カレンちゃん!」


 時速600kmになる『3速』へ変え、階段を駆け下りた。

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