第133話 ハマるピース(2)
「……理由はなんだ」
「私は大きな見落としをしていました」
それは、『アトランティス』でのことだ。
「燈太は『アトランティス』で『UE』を放出しました。その時、燈太は『共鳴』していると言った」
「……報告は受けている。だが、『アトランティス』から『UE』は放出されていなかったんだろう? 『共鳴』と感じたのは燈太の勘違いである可能性が高いと――」
「――いえ、確かにあの時に燈太は『共鳴』していたんです」
「なんだと……?」
そう、あまりに大きなスケールで気づかなかった。
あの時、別の事件が同時に起きていたではないか。
「南極大陸で、燈太が『共鳴』したのは日本で発生した『陣』生成の『UE』に対してです」
「……なッ! バカな……14,000kmは離れているんだぞ!」
燈太が『共鳴』したのは、『アトランティス』突入前。同時のタイミングで日本起きたハプニング。魔術団の『陣』生成である。
「獅子沢本部長。あなたの言う通り、あり得ない距離なんです」
静馬の額からは冷や汗が流れた。
「ッ……だからこそ、燈太の『UE』が時を操る性質、すなわち世界全体に影響を及ぼすようなものであれば筋が通ってしまう……」
「……確かに、筋は通る……ッ。だが、平行世界を移動する『皆既食』と幽霊トンネルの『共鳴』ですら、日本内という距離が限界の効果範囲なんだぞ……?!」
『皆既食』は海外では昔から使われていたという。幽霊トンネルとの『共鳴』は日本に入ってからだ。
「坂巻の『UE』は、一体どれほどの規模を誇るのだ……」
それほどまでに時を操る『UE』が強力ということではないか。
「もし、魔術団の儀式も、燈太の『UE』も時を操るものだとすれば……!」
獅子沢の声に珍しく力が入っていた。
燈太の覚醒は魔術団の1つ目の『陣』生成と『共鳴』し、燈太二度目の『UE』放出は、魔術団の2、3つ目の『陣』生成と『共鳴』した。
今考えれば、残りの『陣』――4から6つ目――の生成中、燈太は飛行機の中にいた。国外だ。つまり、『演算装置』の観測が行われていない。
仮に『共鳴』していたとしても気づかないため、矛盾がない。
「――『アトランティス』が予期した危険な時を操る『UE』はどちらに対しての警告なのだ……!」
坂巻燈太はビルの地下5階にいる。何が起きているのかはこちらから把握することもできず、この事実を彼らに伝えることもできない。
坂巻燈太。能力は、今置かれている環境の把握。
……それだけなはずがない。
――貴様の能力は一体何なんだ……?!
90話にて、誰も知らぬところで『共鳴』している燈太が描写されています。