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第130話 『皆既食』の正体を暴け!(2)

ちょっと複雑な話が続きますが、『黒葬』らしさとして楽しんでいただけたらと思います…!

「幽霊……トンネル?」


 幽嶋は首を傾げた。生物課であるため知らないのは当然である。


「確か、幽霊の声がして、出られなくなるという噂がある曰く付きのトンネル。『UE』が観測されたことを理由に現象課が現場へ向かった案件だろう」


「えぇ」


「端的に言ってそのトンネルは、平行世界へつながっていた。……いや、正確には変更世界へ転移する装置があったんだったか?」


 獅子沢の言葉に、静馬はうなずく。


「はい。平行世界へ空間ごと転移させる装置、それと『オリハルコン』で出来た部屋を使うことで、別の世界へ行くことができる仕組みです」


「『オリハルコン』……を使うんデスか?」


「原理を説明しましょう」


 静馬は、『幽霊トンネル』での考察を述べた。


 あそこにあった平行世界移動装置の原理はこうだ。

 まず、二つの世界の「空間」を入れ替える。その空間というのがトンネル内部にあたる。あの時、静馬と燈太はトンネル内部の空間ごと平行世界へ飛ばされたわけだ。

 しかし、この入れ替えをしている間、転移した空間から外に出たりすることはできない。実際、燈太や静馬はトンネルの中から出られなくなってしまった。


 これでは、平行世界へ転移してもあまり意味はない。

 故に『オリハルコン』の部屋を使うのだ。


 入れ替えが起こる対象区域に『オリハルコン』の部屋を用意し、その中で待機しておく。その後、空間を入れ替えるとどうなるか。

 『オリハルコン』は『UE』の影響を受けないため、部屋の転移のみ(・・・・・・・)が行われない。

 その結果、『オリハルコン』の部屋と転移してきた別世界の空間が結合する。

 ここで部屋から出れば、扉の外には別世界の空間が広がっているというわけだ。

 最後に、転移した空間は元の世界へ戻るわけだが、『オリハルコン』の部屋から出ていた者は、空間ごと別世界へ転移する、というものだった。


「……平行世界デスか。なんとなくはわかりましたが、それが『皆既食(エクリプス)』になんの関係が?」


 幽嶋は一連の説明を聞き、疑問を浮かべた。


「……私はこの『幽霊トンネル』に対して、一つだけ大きな疑問が残ったままだと考えています。それは、なぜ()かということです」


 静馬は、そう話す。


「『オリハルコン』の部屋の中にいた装置を作ったとされる人間。彼はとっくの昔に亡くなっていました。あの装置がなぜ今になって動いたのか、見当が付かなかったんです」


「……確かにな」


 獅子沢は、考え込む素振りをみせた。


「そこで、ある仮説が浮かびました。この平行世界へ行くという『UE』が何かに『共鳴』したのではないかと……」


 『共鳴』は、一種の起爆剤だ。

 眠れる『UE』を呼び起こすときがある。


「平行世界との『共鳴』デスか……。……あ」




「そうです。――『皆既食(エクリプス)』との『共鳴』がきっかけになったんじゃないかと」




「……!」「そうか……!」


「この幽霊トンネルの『UE』ですが、最初の発生が日本へ魔術団が来たとされる時期とほぼ一致します」


「だから、『皆既食(エクリプス)』が平行世界を使った魔術だとアテを付けたのか……!」


 静馬は、獅子沢の言葉にうなずく。


「この推測が正しいのならば、『皆既食(エクリプス)』に対して有効策が生まれます。幽霊トンネルの原理の応用です。指令本部室という『オリハルコン』の部屋を使った作戦」


 幽霊トンネルは平行世界へ行くための技術。


「『オリハルコン』の部屋に魔術師がいる状態で『皆既食(エクリプス)』を解除すれば、その魔術師はこちらの世界へ帰れず、『皆既食(エクリプス)』で転移した世界に取り残される」


 その発想を応用し、魔術師を平行世界へ置き去りにするのだ。


 『皆既食(エクリプス)』は、解除されたタイミングで、対象の人間を元の世界へ戻す。この時、対象の人間が『オリハルコン』の部屋の中にいたら。

 そいつは、元の世界へ戻す力の恩恵を受けることができない。ゆえに取り残される。


 静馬の推測では、『皆既食(エクリプス)』で移動した世界は『こっちの世界』にそっくりな複製世界ではないかと考えている。なぜなら、転移した世界で人をみたという話を聞かないからだ。

 広さも結界で囲まれたサイズ分しかないのかもしれない。


 先刻、紅蓮に『皆既食(エクリプス)』に入る前は『オリハルコン』を自分の身体から離せとアドバイスをした。これも今の話に関係する。

 『オリハルコン』は転移の対象から外れてしまうため、紅蓮が『オリハルコン』(それ)を持ったまま『皆既食(エクリプス)』を使われると、『オリハルコン』はこちらの世界へ残ったまま転移する形になる。

 もし、身体から離し――例えば空中に放ってから――『皆既食(エクリプス)』へ入れば、空中にある『オリハルコン』は世界の一部と見なされ、複製対象とされるだろう。


 ただ、『オリハルコン』が『皆既食(エクリプス)』によって「あちらの世界」に複製されるのか、それが最大の懸念だった。

 結果から言って、複製された。紅蓮が『皆既食(エクリプス)』内で『オリハルコン』を使用したという報告があったからだ。

 もしかすると、正確には複製ではなく限りなく似ついている世界への部分転送なのかもしれない。

 このように、まだ明確でない点はある。


 しかし、『皆既食(エクリプス)』は平行世界へ移動する技術を用いていること、『オリハルコン』を使えること、この2点さえあれば魔術師を「向こうの世界」へ取り残す作戦は遂行できる。

 

「獅子沢指令本部長。私の策は以上です。ご判断を……」




 その後、獅子沢は静馬の作戦を実行に移す。


 ――オペレーション『鳥籠』。


 それは『皆既食(エクリプス)』の原理と『オリハルコン』を利用した魔術師を平行世界へと幽閉する奇警の策である。

https://39451.mitemin.net/i658933/

https://39451.mitemin.net/i658934/

https://39451.mitemin.net/i658935/

https://39451.mitemin.net/i658937/

上のリンクは、幽霊トンネルの原理を説明する画像です。

少し複雑かと思い、この際ですので図を作成しました。


・紅蓮に静馬がアドバイスをしたのは104話です。長い間ほったらかしにして申し訳ありませんでした……。


Q. 『皆既食(エクリプス)』で人のいない平行世界へ移動しているのになんで電気は使えるの?

A. 『皆既食(エクリプス)』で移動する世界と「こちらの世界」は結界の端っこでつながっていると静馬は考えています。故に電気も複製され「こっちの世界」と同量が供給されます。

結果、『皆既食(エクリプス)』が解除されると、その繋がりは途切れます。128話にて突然電気が消えましたが、それは平行世界と元の世界のリンクが完全に切れてしまったからです。


p.s. 質問などあれば、感想までお願いします。矛盾がないように気を付けていますが……。

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