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RAW〈~転移した先の異世界はSNSのTLだった~〉  作者: 佐々木ヒロ
《圏外区》編 (放浪第一部)
13/29

ep,11 放火魔の孤独

 寒い。

 寒い。

 寒い。

 誰も彼もが冷たい。何もかもが冷たい。

 寒い。

 暖をとりたい。

 とにかく、とにかく温もりが欲しい。

 暖かいのが、欲しい。


 寒いのは、冷たいのは――いやだ。


         arsonist's loneliness





 0/


 別段、ぼくは火が好きだったわけではない。

 転じて、それは炎も一緒。


 何か燃やせないものはないか――ふと、そんな考えを持つようになったのは、いつからだろうか。

 わからない。

 覚えていないと言ってしまえばそれまでだが、実際問題、ぼくは忘れていない。


 ただ、その記憶を解凍する気にはなれなかった。

 きっと意味がない。

 そんなモノ知ったところで、ぼくにはきっと意味がない。

 無意味な熱はいらない。

 

 だから、覚えているという表現も、もしかしたら違うのかも。

 本当は、もう忘れてしまっているのだろう。


 「――今夜は、いい月夜だ」


 酔いしれて、陶酔して――空を仰いで標的を眼下に収める。

 今日の、ぼくの心の拠りどころ。

 無人の空家だということは事前情報として掴んでいる。

 だから、なに。道徳? 罪悪感なんてものは――皆無に等しい。

 だって、しょうがないでしょ――


 「どうしようもなく、寒いんだよ」


 



 1/

 

 早朝。

 コウポホルンは海に面した港町であるが、同時に盆地でもある。

 中央を囲うように並び立つ山々。とくに、街の北側に位置するクロノディアなんかは標高を2000と、巨大な山郭を有することでも有名であった。


 そんなクロノディアの一角に、二人の少年の姿。

 ここは見晴らしはいいが崖が形成されているため、めったに人が立ち入らない場所だ。

 綺麗に彫刻された石に花を添え、祈りを捧げる二人の少年。


 「――よし。いこうか」

 切り出すように、唐突に赤髪の少年が口を開き立ち上がる。

 「もう、いいのか?」

 「ああ」

 そうか。呟いて、僕もまた腰を上げる。


 「お別れは済んだんだな?」

 「もち」

 言って、名残惜しむように墓石に目を向ける。

 陰鬱気に。――けど、ちゃんと希望を孕んでる、そんな眼差し。

 どうやら、踏ん切りはついているようだった。


 「――じゃあな。母さん」


     ◇


 山から下りてはじめに出る通り。その道傍に、二人は立っていた。

 「や」

 「随分と早かったね」

 フェルトとルサだった。

 僕とセングゥが山に登っている間、諸事情で街に残って貰っていた二人組である。


 「お別れは済んだのかい?」

 「まぁね。――けど、アンタらこそいいのかよ?」

 申し訳なさそうな、詫びるような口調でそんな事を言う。

 「いいのかよ? って、なにが?」

 「なにがって――そりゃあ……」

 心底不思議。そう言わんばかりのルサの表情に「はぁ」と嘆息するセングゥ。

 「……そりゃあ、俺みたいな厄介者を抱え込むことになったんだから――迷惑だろ、俺」

 ――などと、言い放った。迷惑だなんて、そんな……。



 セングゥが母親を看取ったあと、全員で亡骸を供養して、その後、セングゥは港に戻り船に帰ろうとしていた。無論だけど、僕たちもそのつもりでいたし、そうだと思っていた。――が、どうやら、先方の考えはまた別にあったらしい。

 港には船なんて残ってなかった。アルク・アン・シエル海賊団の船、ナグルファル号は綺麗さっぱり消え去っていた。セングゥを置いて、出港してしまっていた。

 船の代わりにあったのはちょっとした積み荷と、とある置手紙のみ。

 

 手紙はどうやらシキ船長の直筆らしく、『契約変更の旨』と記されていた。

 封を開けて詳細を確認すると、その通り、契約変更の旨が記されていた。

 契約とはすなわち、船の護衛また雑事をこなすことを条件に、僕たちがナグルファル号でアエーシュマまで同乗するという話のそれだ。


 僕たちは結果として、この契約内容を守る事が出来なかった。

 契約では、船の護衛は僕たち三人の身でこなすという内容だった。――けど、船が軍に襲われた際僕たち三人の身ではどうにもならず、船長であるシキさんや船員の皆が闘って、なんとか勝利した。これは、契約の内容的に認められない結果だった。

 だから、あの時シキ船長が言った「契約変更だ」というのは、これのことだったんだろう。

 前もって、そう言ってたのだから。当然だろう。


 変更内容として記されていたのは「セングゥをよろしく頼む」とのこと。

 もともと、シキ船長はアエーシュマに着いたら、セングゥを船から降ろすつもりでいたらしい。

 母親のもとに帰らせるために、そうした手段をとるつもりでいたらしいのだ。

 ――だが、結果として、それは遅かった。遅くなってしまった。もっと言えば、彼の旅は薬草を探す旅だったはず。それを許して船に乗せたのだ。見つけられなかったのは、遅れてしまったのは、自分の責任でもあると――シキ船長は綴っていた。そんなこと、あるはずないのに。


 親の仇とも言える船にこれ以上乗せるわけにはいかない。それは、例えセングゥが自ら再び乗りたいと望んだとしても、乗せるわけにはいかないのだと。理屈では無く道理の話。とにかく、セングゥを任せられるのは僕たちしかいないと、そう書かれていた。

 「だから、よろしく頼む」――と、そう記されていた。



 「迷惑なわけないじゃん」

 俯き気味だったセングゥが物珍しいモノでも見たかのように、驚くように顔を上げる。

 「あの船で一緒に過ごした仲じゃん。一蓮托生だよ、もう」

 そんな風に、ルサはなだめた。ルサはこれで、故郷では子供たちをあやしたりするのが得意だったから、こういう雰囲気や状況には、慣れているのだ。

 「だから迷惑だなんて、そんな風に思わないでいいよ。そんな風に思われてる方が迷惑だよ、まったく」

 言って、へへんと笑って見せた。


 「……そっか」

 そう言って、セングゥもまた静かに笑った。

 静か、元気など皆無。だけど、どこか吹っ切れたかのような、そんな確かな意味のある、静かな一吹き。

 

 「それで、リョウ」

 続けて口を開くルサ。「それより」とか「そんなことより」をチョイスしない分、流石大人だと思った。

 「これからの予定はどうすんの?」

 「あー、そうだね」

 それについては、僕も知りたいと思っていた。――というより、

 「いや、なんで僕に聞くのさ。フェルトに聞きなよ」

 僕に聞くよりフェルトに聞いた方が確実だろう。今までだってそうしてきたんだから。


 「いや、そうだけどさ。この中じゃリョウが一番リーダーらしいじゃん」

 「はぁ?」

 有り得ないだろ。絶対それは有り得ないだろ。僕がリーダー? リーダーらしい部分なんてないでしょ、僕。屁理屈で偏屈でコミュ症。どこにリーダーらしさがあるんだよ。

 「僕なんかより、フェルトの方がずっとリーダーらしいだろ」

 「いやいや、私もリョウが適任だと思っていたよ」

 「嘘だろ!?」

 何を言ってるんだこのピエロは。お前の方がよっぽどリーダーしてるだろう。

 

 「ぐぬぬ……どうしても譲る気はないようね」

 「当たり前だろ。僕なんかよりフェルトの方がよっぽど――」

 「ここまでフェルト推しとは……まさかリョウお前、ゲイなのか?」

 「ぶっとばすぞ」

 なんでそうなるんだ。おかしいだろ、君たち。

 当然のことを当たり前に言ってるだけなのに、なんだこの言いぐさは。


 「――ふぅ。じゃあいいよ、リョウ。これからは私がリーダーだ」

 諦めたかのように――ていうか、呆れたようにフェルトは言う。

 「うんうん。それでいいんだよ」

 得意げに腕を組んで頷く僕。周りはブーイングを浴びせるが、知った事か。

 「で、さっそくリーダー命令なんだけど」

 「うんうん」

 「君がリーダーをしろ」

 「無茶苦茶言うな!?」

 何を言い出すかと思えば何を言ってるんだこのピエロ。

 「そんな命令出してたら一生リーダー決まらないだろ」

 「そうだね。だから初代リーダーとして、ルールを設けるよ。『次リーダー移行から、リーダーはリーダーの任を他人に譲渡(押し付け)することは出来ない』ってね」

 「賢い!」

 くそ! なんて巧妙な罠だったんだ。こうなるならいっそ、最初から僕がリーダーになってフェルトとまったく一緒のことをしていればよかった。


 「はぁ」

 諦めてため息をつく。

 「もういいよ、僕がやるよ」

 その一言に、一同満足そうに微笑む。ため息が溢れそうだよ、ほんと。

 「それじゃあ、話戻そうぜ」

 一段落、と言わんばかりに話題を変えるセングゥ。


 「これからどうするんだ?」

 「どうするって……コウポホルンを抜けて連合自治区に入るんじゃないの?」

 「連合自治区に入るにしても、どこから入るんだ? 最短でも三つは街を通りすぎなきゃならない。それに――」

 静かに親指を立て、影からグイグイとその方向を指す。

 「これは俺のがグズグズしてたせいだけどな、この街はもう軍の連中が包囲網を張ってやがる。そう簡単に街を抜けるなんてことはできねえぞ」

 示した指の先には連合国軍の軍人と思しき連中が街を見回りしている様子だった。数は三人。――確かに、悠長にはしてられないみたいだ。


 「……うーん」

 とはいっても、これといった考えが浮かばない。全く皆無に等しい。僕は頭でものを考えているけど、いくら頭を悩ましてもいい考えなんて全然浮かばなかった。真剣に何か案を考えていると、

 「ふっふっふ」

 という、不気味な笑い声が耳を掠める。

 

 「そこでアタシに考えがあります」

 「あ、デジャヴだ」

 「まだ何も言ってないんだけど!」

 憤慨兎。腕をブンブン振り回して猛抗議する。

 「隠れて街から出るんだよ」

 「また隠れるのか……それに、それって必須条件じゃん」

 見つからない様にするってのは当然のコト。その上で、無事に街から出る方法を探さないといけないんだから。


 「暴れないだけマシじゃん。そうと決まれば――」

 「まだ決まってませんけど!?」

 「このまま何も決まらなければ結局はこうなるんだよ?」

 そりゃそうだけど……うーん、極論だなぁ。

 「はぁ……それで、そうと決まればなに?」

 「うん。そうと決まれば、早速街を出よう!」

 早すぎる!


 「いや、もうちょっと慎重に行こうよ!?」

 「遅いより早い方がいいじゃん」

 またそんな極論を……。

 「いや、でもリョウ、早い方がいいぜ。遅くなればなるほど不利だ。俺達はやつらの隙をついてここから出るんだ。遅くなればなるほど警備は厳重になり、今ある隙すら埋め尽くされちまう」

 「確かに……」

 そうか。――だったら、どちらにしろ早い方がいいのか。

 

 「けど、問題はどうやって街を抜けるか――だね」

 そうだ。隠れるっていっても、姿を消す――なんてことが出来ない以上、やつらが張っている検問で捕まるに決まってる。さて、どうしたものか。

 「うーん」と真剣に思案していたその時、「あっ」と、フェルトがバカげたトーンで声を上げる。


 「ちょっと待ってて」

 言って、颯爽と走って行ってしまった。

 けど、思いもしないくらい近くで急停止した。そこにある、馬引きの荷車乗りに話しかけている様子だった。やけに親しく喋った後、満面の笑みでコチラに帰ってくる。

 「やぁ、ただいま。どうにかなりそうだよ、皆」

 

     ◇


 「よう。俺が紹介に預かった、よろず屋のノブナガだ。信愛を込めてノッブって呼んでくれ」

 フェルトが連れてきたのはノブナガと名乗る男。『よろず屋』なる職業を営んでおり、どうやらそれはなんでも屋のような職業らしい。

 「彼は昔からの友人でね。今回は彼の車に乗せて貰って、隠れて街を出ようと思う」

 「へぇ、良い考えじゃない」

 感心するようにルサは言う。しかし、このノブナガという男、見た目が怖いからか、如何せん正直に、全面的に信用が出来ない。

 

 色黒い地肌にスキンヘッド。体格はすこぶるよく、なんだか副船長を彷彿とさせる。極めつけはこの無精ひげ、あの野郎ペストを思い出す。なんだかもう苦笑いしか出ない。

 「――ん?」

 と、ノブナガさんが、僕を見て一言漏らす。

 「この兄ちゃん……どっかで見た覚えがあるな……」

 「間違いなく初対面ですよ」

 「だよなぁ……」

 訝しむよう納得するノブナガさん。会ったなんかないよな、僕たち。


 「まぁ、いいや。よし、乗ってくれ。無事に街から出してやっからよ」

 そう言って荷台に案内する。荷台にはカーテンのような遮りがあり、これならバレる可能性も低いだろう。

 カーテンを開き、中へと入る――すると、

 「あれ」

 ルサが驚いたように呟く。しかし無理もない事。中は荷物だけだと思っていたが、そうでは無かったから。しかも、

 「女の、子……?」

 小さな女の子が一人、ポツンと座って本を読んでいたから。


 沈黙。ひたすら寡黙。静か、それでいて威圧的。沈黙を暴力として具現化したらこういうのがソレなんだなと思えるような――静かな少女。藍色の短い髪。パッツンの前髪が特徴的な、小さな女の子だ。――どこか、どこか不思議な雰囲気を、思わせた。

 一度だけこちらを振り向くとそれっきり興味が無いように、読んでいた本を再び読み始めた。

 

 声を掛けちゃ悪いな。そう思って、適当に腰着くことにした。――が、

 「おや、久しぶりだね」

 と、沈黙を破壊するかのように――それこそナンパでもしているようなテンションと台詞で、フェルトが声をかけた。無論、あの小さな女の子に。

 「少し見かけない内に綺麗になったかな? なんの本を読んでいるんだい? どれどれ」

 「――……はぁ」

 ナンパ然とした言葉としつこさに、呆れるように少女は本を閉じる。

 「喧嘩を売ってるのかしら。フェルト」

 「いやいや。君に喧嘩を売る程、私も馬鹿じゃあないよ」

 「そう。なら、少し黙っててもらえるかしら」

 「これは手厳しい」

 少女の強い言葉に、言って、素直に黙るフェルト。

 

 しばらく、沈黙が続いた。フェルトのせいで流れた重い空気だけど、同時に、僕はそれがすこし不思議でもあった。

 フェルトにしては、いつも以上に絡み過ぎだと思ったからだ。フェルトがこうも他人をおちょくるのは、あまり見たことが無かった。あのノブナガって人はフェルトの昔からの友達って言ってたけど、この女の子もそうなのだろうか。だけどこの嫌われようと、彼女の年齢を考えると――少し変な感じだ。確信になれない。


 「……お客さん?」

 「へ?」

 「アナタ、お客さん?」

 寡黙だった少女が、急に口を開いたから驚いた。

 「えっと、――いや、そういうわけじゃ……」

 「そう。……なら、なんでこの馬車に乗ったのよ」

 なんだかこの女の子、見た目以上に大人びてるぞ。

 

 「実は軍に狙われていてね。この馬車に隠れて、この街を出ようと思ってるのさ」

 「アンタには聞いてないのよゲジゲジ」

 ゲジゲジときたか。どんだけ嫌われてるんだ、フェルト。

 「それに、やめて貰いたいものね。バレて迷惑被るのは私たちでしょう」

 ですよねー。そう、ですよねー。やっぱ、この人たちにとって俺達は迷惑だよね。


 「アナタ誰かに似てるわね」

 唐突だな、これはまた。――て言うか、またそれか。

 「どこかで会ったコトあるかしら」

 「い、いいえ」

 ナンパみたいな台詞だな。

 「今アナタ私のこと『ナンパみたい』だと思ったでしょう」

 「い、いいえ!」

 ジョジョかよ。


 「まぁ、いいわ。どうでもいいもの」

 「さいですか……」

 なんだか、この人怖いな。ノブナガさんの顔の怖さとはまた別の恐ろしさだ。

 「あ、そう言えばお嬢ちゃん」

 明らかに空気を読めてないテンションで、ルサが声をかける。

 「なに」

 不機嫌そうな表情で応える少女。

 「お嬢ちゃんの名前、アタシ知りたいな」

 そう言えば、ルサは子供が大好きだった。さっきからうずうずしてたのはそういうことか。


 「はぁ」

 嘆息して、睨むような――けど呆れるような視線で、ルサを見る。

 「私の名前はノアよ。――それと、子ども扱いしないで」


     ◇


 小一時間馬車に揺られ、ようやく街の出口の辿り着くことが出来た。

 ――が、案の定というか予想通り、軍の連中が検問を張っていた。

 「おい、そこの馬車。止まれ」

 そして案の定、不審がられて止められた。


 「中に何が入ってる? 見せてもらうぞ」

 「あ? ただの荷物だよ。お客様の夢と大事な信用が詰ってんだよ。勝手に障んなボケ」

 いやいやノッブさん。そんな態度はダメでしょ。アチラさんも怒っちゃうし。もっと穏便に、ハラハラさせないでよ……。

 「貴様なんだその態度は」

 癇癪気味に、男たちは怒鳴る。すると――

 

 「ちょっとおじさんたちうるさいんだけど」

 ――と、ノアちゃんがカーテンから顔を出して軍の人に注意する。

 「集中して本が読めないの。静かにしてよ」

 「そ、そうか、すまない。……おい主人。貴様荷物だけではないではないか」

 「ありゃ俺の娘だよ。大事な大事な荷物の一つさ」

 「ぐっ」

 押し黙る男達。多分ノブナガさん「勝った」みたいな顔してるんだろうなか。いや、全然勝ってないからな。これで通れたらこの連中は底抜けのマヌケだよ。

 「――通っていい。大事な荷物を物色しようとした、すまなかった」

 本当に勝っちゃったよ。


 軍の連中が道を開けて通れるようになったらしい。

 「やったね、リョウ」

 「う、うん」

 僕たちも一応、荷物の中に身を隠してたけど、どうやら杞憂だったようだ。

 

 と思っていたけど。

 「待て」

 と、一つ、声が上がった。

 「その馬車を通すな」

 野太く、癖のある声。ア〇ゴさんみたいな、めちゃくちゃ癖のある声。

 「お前ら、中を調べろ」

 はっ。と声を揃えて叫ぶ軍の連中。まずい。まずいまずい。


 咄嗟に出していた顔を荷物の中に隠した。――途端。

 ガン。勢いで、隠れていた樽が転げてしまった。いや、それだけならいいが、どうにもこれは、転がっているらしい。

 「あら」

 さも驚いたような演技で、樽を止める事もなくそのまま避けるノアちゃん。マジかよ、おい。

 ガン。そのまま、荷台から地面に落ちた。





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