2 少年期① 再会
ありきたりな再会です。ベタな展開で話を進めて行きます。
僕の名は、彼方 昴。16歳。
地元の共学校に通う高校二年生。
特に特技や趣味があるわけでもない平凡な人間である。
毎日学校と家を行き来するだけの怠惰な日々を過ごしている。
高校に入った時、先輩や友人に部活に誘われたけど、特に興味を引くものがなかったため、全て断った。
子供の頃は星が大好きだったが、1つの失恋と共に俺の情熱という星は燃え尽きた。
それからは、何事も人並みにこなしてはいるが、それ以上を求めていない。
頑張った分だけ、失敗した時の喪失に俺は耐えられない。
もう2度と大切なものを失うのはこりごりだ。
そう、子供の頃大好きだったあの子、天川 彗子に想いを伝えられず、喧嘩別れをしてしまったあの冬を忘れられない。
あれから、別の恋をしようと思った時期もあったけど、必ず頭を過るあの子の顔がそれを許してくれない。
それ以来、恋することも放棄した。
実につまらない日々で、惰性だけで生きている。
やることがないから、とっとと家に帰り、ゲームや勉強をするだけの毎日。
僕にも友人はいるが、皆部活に入っており、毎日熱心に部活に明け暮れている。この学校は、部活動のサポートに力を入れており、体育会系クラブは大会の常連である。友人達もまた、そういったクラブで己を研いているわけである。
僕にはムリだな。
努力が無に返ったとき、どうなるかわからん。
努力した分だけ報われると言われるが、それは詭弁だと思う。
世の中、全てその人の運。星の巡り合わせによって、努力が報わなかったらどうする?
今まで頑張ってきたものが、大会当日に事故に遭ってしまったら?部員の悪事で大会出場停止になったら?
そんな、ひねくれた見方しか出来ない。
まぁ、思っても口には出せないけどな。
今日も授業が終わり、帰って何しようかとボーっと考えていた。
学校にいてもやることもないし、教室を出て、窓から夕陽の射し込む長い廊下を歩いていると、反対側から担任の女教師が見知らぬ女生徒と歩いてきた。
女教師 今村 雪は俺に気付くと、「彼方君、ちょっといいかしら?」と声をかけてきた。
「雪ちゃん先生、ボクは今凄く急いでいて、早く帰らないといけないんです。」
面倒事が来そうなので先手を打った。
「ボーっとした顔でのんびり暇そうに歩いていたのに?全然急いでいるように見えなかったけど?それと、雪ちゃん先生言うな」
「失敬な!ボーっとなんかしてません、家帰って何するか必死に考えてたんです。時間は有限なので有意義に使わなきゃ。雪ちゃん先生、星がいつまでも輝いていると思ったら大間違いです。」
「…星?」
隣にいた女生徒がボソッと言っていたが、スルーした。
やってしまった、星なんかもう嫌いなのに口にしてしまった。
「彼方君、そういうのを世間一般では暇人というのよ。雪ちゃん先生って言った罰として、これからこの子に学校を案内しなさい。拒否は認めないわ。もし、言うこと聞かなかったら、明日から懺悔の日々が始まると思いなさい。」
そう言いながら、隣の子を指差す。
綺麗な女生徒である。どこしか、いつかの少女に似ていて、胸を締め付けられる思いに駈られる。
「この子は、今度転校してくる天川彗子さんよ。天川さん、この子は同じクラスの彼方君。わからない事は彼に聞いて頂戴。見ての通り、いつも暇してるから話に乗ってくれるわ。」
"では、頼んだわよ"と言って雪ちゃんは去っていく。
これが、彼女との再会である。