1 プロローグ
僕が星に興味を持ったのは子供の頃だ。
今でもはっきりと覚えている。
それは、亡くなってしまった父と郊外のキャンプ場に行った時に、空一面に広がる星の輝きに感動したからだ。
だから、子供ながらに星に興味を持ったのだと思う。
それ以来、友達と遊ぶときは星の話ばかりした。
あまりにも星の話しかしないから、友達からはよく煙たがれたものだ。
ただ、大好きな子だけはいつもしっかりと話を聞いてくれた。
ある時、その子と喧嘩して、泣きながら帰途の道を歩んでるときだった。
涙を浮かべながら空を見上げたら沢山の星が耀いていた。
その頃はまだ、星座なんかさっぱりわからなく、どの光も同じものだと思っていた。
ただ、その沢山な綺麗な耀き達がその時だけは自分に勇気を与えてくれる十分な存在だった。
だから、星のような綺麗な細工がされた髪留めを買い、それを片手に好きな子に仲直りしに行ったんだ。
だけど、その子は僕に内緒で遠い地に引っ越しをしてしまった。
あの時、左手に髪留めを握りしめたまま、僕は無人になった家を何時間も見つめる事しか出来なかった。その時も、僕の頭上には星が輝いていた。12月の夜に浮かぶオリオン座。その中でも、一等輝く星が僕を嘲笑うかのように見下ろしていた。後で知ったその憎らしい名は、ベテルギウスーーー
本当に好きな娘に謝る事も出来ず、告白もできないまま無情にも
10年が経とうとしていた。今年もまた、12月がやってくる。