カカとナミ 2
「おい、お前らが魔晶をちょろまかさないように、全ての荷物は俺に渡せ!」
カカとナミの2人を雇った冒険者は言う。
いかにも冒険者という体格で髭面、雰囲気は山賊で厳つい。
「わかった。でもこの財布は別だろ?」
「別のわけあるか!!財布の中に魔晶を隠しもつこともあるだろ!!」
「じゃあ、中身を見せたら返してくれよ」
「なんだと!!返せって俺たちを信用してないのか!困ってるお前らを雇ってやっただろ。べつのパーティでも探すか!!」
カカもそう言われると弱い。
しぶしぶ財布を渡す。
「おっ。スラムに住んでる子供が10銀貨かよ。どこから盗んできたんだ」
「違う!!死んだ父親が渡してくれてたんだ」
「ふーん」
いかにもわかってない顔で、財布を同じパーティの男に渡す。
「じゃあ、この荷物を背負え」
水と食料を2つの荷物にして、カカとナミにそれぞれ背負わす。
もちろんカカの方が多い。
「じゃあ、行くか」
ダンションの入り口には国の兵士が100人ほどで警備している。
ダンションの中からモンスターが出るのを防ぐ為と、魔晶の勝手な持ち出しを防ぐ為だ。
魔晶はすべて国が一旦買い取り、その後に一般流通させる。
国の収入源になっているので、持ち出しは重罪。
見せしめ代わりに公開処刑になったりする。
とくに戦争時には大量に魔晶を消費するので厳しい。
今は北のクラレンスという国と戦争中、その戦争のためにカカとナミの村が襲われた原因でもある。
ダンションに入るときに、ダンション入り口の管理建物で入るパーティの全員の名前を書き込む。
魔晶の勝手な持ち出しは、パーティの連帯責任であるので書かされるのだ。
「子供をつれてダンションか」
「戦争で両親が死んだようで荷物持ちですよ」
「あの年齢ならギルドを通してないだろ」
ギルド(商工業界の集まり)では、ダンションのモンスターからの部位を買い取り、素材として加工して、その部位から装備を販売、また冒険者パーティのために、人材の紹介なとをしている。
バックパッカーもその紹介に入っていて、10歳以上の子供がダンション経験を積む為に登録、紹介される。
しかしカカは7才のため、登録ができないのだ。
「仕事がないようなので善意ですよ」
「まあ、気をつけて行け」
管理建物で国の文官が書類を確認して、カカたち冒険者を通す。
カカとナミを雇った冒険者は、前衛2人後衛で弓2人バックパッカー3人(カカとナミともう1人)で、魔法使いは居ない。
魔法使いは数が少なく、いれば稼ぎやすいのだが、ほとんどの魔法使いは国に仕えている。
モンスターの大量発生で、魔晶が取れない時には、国から魔法使いが派遣されて一斉駆除となるのだ。
しかし、一部には命の危険があるが、ダンションなら魔法使いが居れば稼げるので、魔法使いを中心に、強い相手にも守りきれる実力者のパーティが組まれている
カカとナミのパーティは、魔法使いがいないのでそこそこの実力しかないともいえる。
しかしダンションにもぐるパーティのほどんどは魔法使いが居ない。
そして、カカとナミは冒険者達とダンションの奥へと向かった。