消え去った村 2
村に領主の部隊が現れた。
村長が急いで対応へと出迎える。
「王家から逃げ出した鍛冶師がここに居るだろう。隠さず連れて来い」
「村に鍛冶師が住んでいますが…その者を連れてくれば良いのですな」
村長は急いで鍛治師の下へとやってきた。
「どうやら居るのがわかってるようだ。すまないがこの村のために一緒に来てくれないか」
クラウは、
「私だけが呼び出しされたのであれば、妻と子供をここに置いておいてくれないか。子供がいるのは知られてないのだ。連れて行かれると自由は無い。子供は自由にしてやりたい」
「小さな村で人手がほしい。子供でもできることはある。わしの責任で面倒は必ず」
「妻は逃亡生活の時に死んだことにする。おれが必要なだけだから家族は執拗に探さないだろう」
村長に後は頼んで、鍛冶場から護身用に作った剣を持ち、念のために短剣を足と腰の後ろに装備した。
「お父さんは今から村長と共に行ってくる。お前たちは念のために鍛冶場の地下室に入っててくれないか。
お前たちを人質に気に入らない仕事をさせられるのももっと気分が悪いからな」
妻ミラとレクスが地下室に入ったのを確認し、その入り口を見た目にわからないようにしてから外へとでた。
村長と一緒に領主の部隊の前に着くと、すぐ剣を取り上げられて腰から短剣を取られた。
足の短剣は気が付かれなかった。
手を後手に縄でしばられて領主の部隊に連れて行かれる。
しかし、少し進み、村からは見えない森の中で野営の準備をし始める。
「なぜこんなすぐの場所で野営するんだ」
部隊内には、何か嫌な雰囲気が漂っていた。
クラウは部隊の隊長であるボイスに話しかける。
「やることがあるのでな。お前にはもう関係ない」
もう?関係ない??
言い方が気になる。
「王都にはどれくらいで着く予定だ?」
無言で返される。
嫌な予感しかしない。
クラウは部隊が野営の準備をしてる隙に、足の短剣を後手の縄の隙間に挟み込んで、すぐ断ち切れるようにした。
日が落ち始めると部隊の半分が村へと戻っていく。
「おい!!お前らなんで村に引き返す」
「お前はもう関係ない村だ。気にするな」
「村のみんなに何かする気か!!ふざけるな俺は素直についてきただろ!」
「黙れ」
すぐに縄を断ち切って、村の方に立っていた兵士2人に襲いかかる。
無防備な状態だったので何もできずに短剣で首を切られてあっけなく倒れる。
しかしその後ろをボイスが切り込む。
背中を軽く切られたが、そのままかまわず村へと走り出す。
村は弓を持った兵士に囲まれていた。剣を持った兵士が村になだれ込み、次々と火を掛けていく。
「お前らなんて事を」
外を囲っていた弓兵に向かっていく。
弓兵は一瞬射殺そうとしたが、殺すなと言われてたのか躊躇う。
その一瞬で弓兵を倒す。
倒した弓兵の腰にあった剣を抜き、村の中へと向かう。
剣をもって村を襲っているのは5人。
さすがにそちらには向かえず、自分の家族の下へと駆ける。
「ミラ!レクス!」
叫ぶと鍛治屋の入り口が少し開く。
妻のミラの顔が見える。
「無事か!すぐ地下室へ!最悪なことに、奴ら村のみんなを殺すつもりだ!」
「あなた!背中から血が」
「浅い傷だ!大丈夫!!」
「すぐに包帯を取ってきます」
鍛冶場の裏に生活の家がある。
ミラは鍛冶場の裏手から家に向かい、外に出たときに
「キャー!!!」
悲鳴が上がる。
「レクス。すぐ地下室に入れ。何があっても出るな!」
「でも、一人じゃ怖いよ」
クラウはレクスを説得する。
彼の持つ鍛治の技術、そしてそれを欲しがる人の欲を。
短い時間で早口でいう。まだ幼い自分の息子がどれだけわかってくれるのか。
レクスだけは生き残らしたい。
クラウは地下室にレクスを押し込む。
鍛冶場の裏手から出ると、ミラは背中に弓を受けていた。
「ミラ?生きているか?おい!!生きているか?」
駆け寄って起こすが、弓は背中から肺に届いているようだった。
話そうとすると口から血があふれている。
「すまない。オレのせいで」
ミラは話せないために首を振る。
ミラは城のメイドだった。クラウが鍛治師の力のために城で軟禁状態だったのを、
逃げ出すのに力を貸してくれたのが始まりだった。
逃亡生活でこの村にたどり着いて、やっと笑顔のある生活になったのに。
ミラを打ちかけた弓兵が仲間を呼んでいるようだ。
「お前ら!!!」
弓兵に向かって行く。
弓兵はクラウの怒声に慄き、弓を打ちかけてきた。
弓が肩に当たるが、そのまま切り込んで弓兵を倒す。
弓兵に呼ばれて向かってきた剣兵3人を見つけると、クラウはそちらへと向かう。
兵士はクラウを捕まえようと手足を狙って剣を振るう。
クラウはミラの仇討ちと防御を捨てた剣を振るう。
剣兵3人を倒した時には剣が頭をかすり、左の視界が血で見えない状態になっていた。
「おいおい鍛治師が兵を7人も倒すのか。ふざけるな俺が領主から怒られるだろ」
ボイスが現れた。
クラウはボイスに身体ごと剣を振りかぶって飛び込む。
ボイスは血で見えないクラウの左によけて剣を振るった。
クラウのわき腹が裂けそのまま倒れる。
「くそ!!殺してしまった。このままじゃ領主に殺されそうだ。逃げるか」
ボイスは残った兵を連れて、そのまま逃げていった。