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消え去った村 1

レクスは火の燃え盛る小屋の中に居た。

中と言っても小屋の地下である。

あれから火のはじける音しか聞こえない。

父と母は帰ってこない。

煙で息苦しくなって朦朧とした意識の中で、地下に入れられたあの日を思い出す。


「この中に隠れているんだ!」


鍛冶師で父であるクラウがレクスに言う。


「一緒に居させてよ」


レクスはそう願うが首を振る。


「俺は顔が割れてる。もう逃げるのも巻き込んで人が死ぬのにも疲れたんだ・・・」


「おとうさんとおかあさんが居ないと僕はどうしたらいいの」


泣きながら腕を取ろうとするが、クラウに腕を振り払われる。


「いいか。よく聞くんだ。王家から狙われている力はお前にも流れてる。決して人前で使うな」


外から悲鳴が響く。


30人ほどしか居ない小さな村だった。

王家から逃げてきた鍛冶師の一家を快く迎えいれてくれた。

村では王家に狙われた武器の製造はせず、

農具の製造や修理などして5年。

レクスにとって幸せな時間をすごした。


しかしその年、北の国との戦争が起きて、少ない村人の中から8名もの男手が駆り出された。

その時、クラウの鍛治場から1本の剣が無くなったのである。


持ち出したのは村長の息子。

鍛冶師の一家と中のよかった村長の息子は村より街に憧れていた。

「戦争で活躍してあわよくば貴族に取り立てられたい」などと

村の子供が夢みる簡単な立身を、現実のものにしようとしたのだ。

そのために良い武器が欲しくて、こっそり借りていった。(本人にしてみれば)


鍛冶師の力は武器にエレメントの力を与える。


村長の息子の振るう剣からは、火の光がほとばしる。

村人の駆り出されたのは、村の領主、貴族の軍勢だった。


領主はすぐに気がついた。


「おい。あれはファイアソード。王の所から逃げた鍛冶師の武器だろう」


聞かれた武官は答える。


「そうですな。王家の騎士以外があれを持てるはずはありません。鍛冶師につながりがあるかも知れませんな」


「あいつを私の前に連れて来い」


すぐに領主の前につれてこられた村長の息子は、自分の活躍で報酬でも貰えるのかと喜んでつれてこられた。


「おい。お前なぜ王家の剣を持っている」


いきなりの叱責に驚いた村長の息子は村の鍛冶師の事をあっさり話した。

領主は考えた。今の王家の力は鍛冶師の作る武器によってもたらされたのが多い。

これを自分の物としたら王家を超えられるのではと。


「ボイス。20人ほど連れて村に行け。お前鍛冶師の顔を見たことがあったな」


「はい。王城の鍛冶場にて何度が見かけたことがあります」


「鍛冶師を我が城で働かす。王家には内緒だ。鍛冶師の存在が他に漏れないようにするには…わかるな」


「はっ!!」


その後、村から徴収された男たちは、その全員が戦場の外れの森で殺された。

ただ鍛冶師の存在を隠す為に。




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