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…so what?

作者: 聡太郎

それは遠い未来の話だ。


(宇宙に浮かぶ月の映像)


「私は現在月へ向かっている。到着までの間、いくらか自己紹介と今おかれている状況その他についてお話することが出来ると思う。言葉遣いが多少雑になるだろうが、任務中だということで許してほしい。そもそも私はそれほど日本語に慣れていないんだ。フランス語でならネイティブ並みにお話することが出来るのだが、残念ながらそれは作者の能力がはるか及ばない。やれやれ。」


(カメラ、中年の男の背中に切り替わる)


「私の職業はスパイだ。だから自己紹介とはいうが、一応名前は名乗らないでおこう。敵の耳に入るとやっかいだ。いや、それ以上に女性達に知られるともっと困るね。宇宙中を追い掛け回されることになってしまうのさ。それは敵の連中よりも厄介なんだ。」


(カメラは、男の正面に回りこもうとするが、男は顔を自分の手で隠す)


「おっと、顔もやめてほしい。一応変装はしているが、職業柄あまり大勢に見せていいものでもないからね。」


(カメラ再び月の映像)


「さて、自分の話はこれくらいにしておこうか。作者から書く時間があまりないのであまりムダ口をたたかないように厳命を受けている。これだからアマチュアの物書きは困るんだ。」

「さて、任務について話そう。私はある宇宙動物のたまごを手に入れるために月に向かっている。そのたまごのコードネームはツァラトゥストラ。古代宗教の預言者の名だ。ツァラトゥストラには地球を壊滅させる力を秘めていると言われている。その力を敵さん達が利用しようとしているってわけだ。

敵の正体は不明だが、いかれた連中ってことに違いはないだろうね。おっと、もうすぐ目的地に着くようだ。」


月面に着いたウラノス・山本・デューイ三世は早速敵の基地に辿り着いた。


この奇妙な計画を企んでいるのは、信仰(現在では地球政府であるインターナショナルによって禁止されていた)を持つ集団で、基地の上には白いモニュメントが建てられていた。

その狂信者たちは、皆白い布で全身を多い、それはさながら往年の名作ホラー漫画『オバケのQ太郎』に登場する亡霊Qちゃんのようだった。


「やばいぜ、幼いころのトラウマが蘇りそうだ。」

狂信者達とおなじ格好をして潜入した山本は、武器庫を発見し調査していた。

すると突然後ろから声を掛けられた。

「あなたがウラノス・山本・デューイ三世ね。」

「ああ。君は?その声からすると20代後半の女性のようだね。」

確かにコシュチュームを外した人物は女性だった。

「私はジュピター・大友・ジョセフィーヌ。貴方と同じ目的で潜入しているわ。」

「じゃ、何か情報をくれないか?俺はほとんど何も知らずにここに来てしまってね。」

「仕方ないわね。発射は実は1時間後なのよ。あと発射台の位置はこの地図にあるわ。」

「よし。借りができたな。時間がないってことはこの武器庫の武器を使って派手にやり合うしかないな。こっそり破壊する余裕は無い。」


スパイであるとはいえ緊急事態である。

彼らはいきなりマシンガンを狂信者たちに向けて発射し、手当たり次第に射殺した。

白い布が赤く染まっていく。


武器はほとんど武器庫にあったらしく、抵抗らしい抵抗はわずかだった。

しかし中にはピストルを持つものもあり、その一人が大友に向けて弾丸をまさに打とうとするや否や、山本は銃撃した。

「これで借りは返した。相殺だな。」

「読み方が違うわ。相殺じゃなくて相殺よ!」

「気にするな。読者からすれば同じ漢字だ。」


発射台までたどり着く。

しかし、同時に狂信者の最後の一人がスイッチを入れた


大型の大砲から小さなたまごが発射された。


「間に合わなかったか!」


凄まじい速さで地球に向かう白い球体が、あっという間に太平洋のど真ん中へ吸い込まれた。

すると、落下した地点からみるみるうちに地球の海が薄いブルーから濃い緑に変わっていく…。

同時に、もともと白かった北極と南極だが、その瞬間不自然なほどにより白くなった。


沈黙、沈黙。


その3分ほど前、アメリカ西部でカーネル・マクドナルド・吉野(40歳)はちょうど日光浴をしていたところだった。

人口海岸(当然ながら猛毒にそまった海水ではない、人口の塩水が循環する擬似的海水浴場である)で、30秒で泳ぎ疲れた彼は、その中年太りの体を太陽にさらしながら、レム睡眠状態にあった。


メタボリックシンドローム、生活習慣病、血糖値、ガンマ値…。

それらの数字よりももっと根本的な彼の問題は根気と危機感の欠如であり、それはきちんと彼の息子に受け継がれていた。

(10歳にして100キロを超えた体躯。)


折りたたみ椅子を父に奪われた息子はしかたなく海岸にむかって歩き出した。


ちょうどその時、海から(人口海岸の向こうの本物の海)から不思議な緑の光が向かってきた。

あわてて息子は父を揺り起こした。

(本物の)海岸で、マクドナルドはあっというまに海は緑色に変わるのを見た。


「何が起こったんだ?」

肥満体の親子2人は、3分ほど立ち尽くし、疲れたのでその後海を見つめたまま1時間ほど座り込んで呆けていた。


その時間帯はちょうど引き潮だったのだが、すこし前に海があった場所に蟻が群がっているのに息子が気付いた。

近づいてみると海水の水溜りは緑色で、沢山の細かい泡が浮かんでいる。

息子は指を触れると、

「ダディ!海の水なんかベタベタする!」

「こら、体に悪いからあまり海水に触れるなと言ったじゃないか!」

「ダディ!これクリームソーダの臭いがする!」

「バカなことを言うな!」

指をなめてみる。

「やっぱりこれクリームソーダだよ!」

父も海水に指を入れ、恐る恐るなめてみると、

「なんだって!?確かにクリームソーダだ…。」


同じ現象が世界中の海で起こった。

船の上では、船員達が真下から登ってくる甘い匂いを感じ、

陸の人々は歓喜の声を上げて海に飛び込んだ。


警官は、

「みなさん!海に入らないで下さい。海水には汚染されています!」

と叫ぶが目の色を変えて海岸に集る人々の耳には入らない。

「畜生!ただがクリームソーダじゃないか!」


確かにクリームソーダだった。

公の研究機関が即日発表した報告によると、

「突如変化した海水の組成は、1980年代にファミリーレストランで飲まれていたクリームソーダと同じである。合成着色料、保存料もきちんと含まれている。また、突如変化した極地方の氷はすべてラクトアイスと同じ成分である。」


つまり、狂信者たちの放った卵によって、地球は極地方にアイスクリームを浮かべた巨大なクリームソーダの惑星になってしまったのだ。

また、研究者達が気付くのはもっと後になるのだが、地殻の下のマントルはどろどろのチョコレートになっていた。


世界中の人々は海へ殺到した。

狂ったようにクリームソーダを浴びた。

目に沁みる炭酸。


そして復活が始まった。


汚染によって死に絶えていた海洋生物が、突然発生した。

くじら、いるか、そして多くの魚達がクリームソーダの海を泳ぎ始めたのだ。


一人ひげの長い男が群集の中に向かって叫んだ。

「神だ!」

この言葉に群集は同調し、その時からこの男は預言者となった。

宗教が復活したのだ。


自宅の書庫に引きこもっていた青年は、テレビの光景から狂喜する人々を眼にし、禁書とされていた心理学の本を隠し扉から引っ張り出し読み漁った。

無意識の概念が復活した。


人々を暴動を起こし、抑えきれなくなったインターナショナルは多くの規制・規制事項の撤廃を宣言し、資本主義が復活した。


その1ヶ月間、ウラノス・山本・デューイ三世とジュピター・大友・ジョセフィーヌは地球からの電波を受信し、地上の様子を見ていた。

「いったい人類はどうなってしまうの?」

「さぁね…。確かなことが1つ言えるのは、俺の次のボーナスはないってことだ。」

ジョセフィーヌは彼の首に腕をまわしながら、

「あら、でも結婚手当はもらえるんじゃなくて?」

と言った。

山本は、目の前の唇を吸いつつもその腕を解き、

「さて、俺達も泳ぎに行くとするか。」

と言って立ち上がった。


「なんだかわけがわからなかったわ。狂信者達、ツァラトゥストラ、クリームソーダになった地球…」

しかし、ウラノス・山本・デューイ三世には全てがわかっていた。

「結局、作者は単にこの最高に甘ったるい、化学にはまりだした高校生が喜びそうな合成甘味料たっぷりの世界崩壊を描きたかっただけなんだ。」


2人は狂信者たちの死体がころがる月面を後にした。

地球では至る所で花火が打ち上げられていた。





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― 新着の感想 ―
[一言] アイデア自体は悪くないと思うが、楽しめるだけの物語がない。もっと簡潔にまとめてもよかったかもしれない。
2007/01/22 10:10 通りすがり
[一言] 厳しいかもしれませんが、序盤の状況説明があまりにも少なすぎるかと思います。後半の地球での話の方ではしっかり描写されているので少し残念です。あと()の必要性を感じないので普通の文章にしてしまっ…
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