表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すたうろらいと・でぃすくーる  作者: たけりゅぬ
1章 7月は出会いの季節

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/10

いちのはち 夢はメカニックデザイナーの康太

何か聞こえたような。


2限は現国の時間だった。


授業自体はいつものように音読と解説で過ぎていくのだけど、


なんか、廊下の方から、


「ぼわ」


って聞こえた。音なのか風圧なのか。


気のせいかとスルーしていたら、また廊下の方から


「ぼわ」


だ。


康太はノートに何か描くのに夢中で気づいてないだけか。


「ぼわ」


まただ。今のに康太は反応しなかった。他の奴も同じく。


〆子はどうか。横を見ると正面を向いたまま目をつむっている。


心の声は聞こえない。でも、寝てるのではない。あの物語を語っていない。


「ぼわ」


と他に聞こえないように小さい声で言ってみた。


すると、〆子の手にほんの少し力が入った。


やっぱり何か感じてるんだ。俺だけじゃない。


耳を澄ます。「ぼわ」が来るのを待つ。


「ぼわ」


廊下の方、少しその先が見えた。階段の方から廊下を渡ってきたのが分かった。


「ぼわ」


今度は、階段から降りて来たのが見えた。


「ぼわ」


さらに3階の廊下を。


「ぼわ」


廊下の突き当り。αクラスからだ。


きららのことを恋想(おも)った。


「見境なしの性欲野郎か!」


ちがう、ちがう。ただ思い浮かべただけだ。


……今の罵倒は〆子? いやそんなはずはない。悲しき一人突込みだ。


それから「ぼわ」は5分ぐらいに一度聞こえてきた。


しかし、その後も〆子は微動だにしなかったので、結局すべて無視することにした。


2限終了のチャイムが鳴る。


〆子を見るといつの間にか目を開けて、前方のドアのほうに視線を向けていた。


そこにきららが現れたのは、現国の先生が教室を出るより早かった。


教室に飛び込むよう入ると〆子の席まで駆け寄って来て、


「ゆいちゃん。助かった。ありがとう」


と言って、座ったままの〆子に抱き着いた。


「ふん」


抱きしめられながら、〆子は満面の笑みを浮かべ、そして、


すこし涙目になっていた。


俺は、きららと〆子の間の1限後のやりとりを、経験値0の頭で精一杯想像して納得した。


なるほど、女子って大変だ。


「ゆいちゃん、借りてくね」


きららが言った。


「え? またなの」


〆子の強めの握力。そして、


「だから、気づけそろそろ」


と心の声。


「どうぞ」


手を繋いで教室を出てゆく二人を見送った。


「今日は大変な日なのかな」


なんて思ったりしながら。


康太が急に振り返って言った。


「ショウ、お前さ。井澤さんと仲いいんだろ」


「そうだが、なにか」


きららと仲がいい、心地よい響きだ。


「井澤さんに聞いてくれないか?」


「俺の聞ける範囲でなら」


「あのガジェットどこで買ったか教えてもらってくれ」


「ガジェットって?」


「今、彼女めっちゃ格好いいガジェット持ってじゃんか」


ガジェットを? そうだったか? 気付かなかった。で、どんなやつを?


「こんなやつだよ。授業中ずっと描いてたんだ」


見せてもらうと、それはごっついプラズマガンのイラストだった。


おいおい、こんなのきららが持ってるわけがないだろ。


またいつもの妄想だ。康太は夢中になると見えないものまで見てしまう。


だが、俺は康太のこうした妄想にリスペクトを感じている。


康太の夢はゲームの武器装備やギミックを設計するメカニックデザイナーになることだ。


それでいつも武器装備のイラストを描いているし、画像投稿サイトで絵師としても名前が通ってたりする。


今見せられたものも、デザイン性の高いSF寄りのプラズマガンで、見惚れるほどの出来だった。


ゲームの武器に夢中になりすぎて「見えちゃった」のかもしれない。よくあることだ。


それに、康太にはマクマクソンのフレンド申請の相談に乗ってもらうつもりだから、恩を着せておくのも悪くない。


「いいよ。聞いて来てやる。その絵貸して」


「頼む」


俺は二人を追いかけて教室を出た。


廊下に出るとすぐ、階段のところで人の渋滞に足止めされている二人を見つけたので声をかけようとした。


が、俺はきららの右腕を見て驚愕した。


きららの右腕は普通ではなかった。


ただ、プラズマガンを持っているようには見えなかったが。


俺が見たのは、きららの肘から先が漆黒の黒に染まり、ねじれながらすぼんで、


そこから墨汁より黒い液汁が滴っている様子だった。


〆子!


どうして咄嗟にそんな行動をとったのか分からない。


本来ならきららの腕を心配すべきなのに、まず〆子の危険を回避しようとした。


俺は猛ダッシしてし二人に追いつくと、〆子を引き離して、


きららの二の腕をつかみねじり上げた。


「いたい、いたい!」


「きらら、お前、この腕は」


「ショウくん? いたいよ、放して」


俺のワイシャツの裾を〆子が思いっきり引っ張る力に耐えながら、きららを糾弾しようとした。


すると、


「放してあげて」


〆子の声がいつもより優しく響いてきた。


それは母親が駄々をこねる子供を、いとおしさを込めてなだめる時のような声だった。


俺は我に返りきららの二の腕を静かに放した。


周りにいた女子たちの目が痛かった。


きららの顔は、驚きの表情のまま固まっている。


きららの腕は、漆黒の肌も黒い液汁もなく、いつもの白くしなやかで美しい腕だった。


二の腕の俺が付けた赤い掴み跡以外は。


「ごめん。俺……」


腕をさすりながらきららが俺をねめつけて言った。


「ショウくん。一緒に部室来て」


俺の高校生活最大の危機が訪れた気分だった。

(毎日2エピソード更新)

続きはこのあと21:10に公開します


よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾


★/いいねしてくれた方、ありがとうございます

とても励みになってます


たけりゅぬ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ