いちのなな バトロワゲーム仲間の康太
あいちゃんが出て行ってしばらくして、後ろのドアからきららが入ってきた。
「ちょっと早いけど、ゆいちゃん借りてくね」
「2限じゃなかったの?」
「うん。急用が出来ちゃって」
「え? 急用ってきららのほうでなの? 〆子のでなく」
「うーんと、女の子にはいろいろあってね」
きららの困ったような表情を見てるうちに、俺は、はっと気が付いた。
そうか。〆子が今朝言ってた、今日はしんどい一日ってやつか。
「わかった。じゃ、お任せします」
きららは〆子の手を取ると、そそくさと二人して教室から出て行った。
廊下の曇りガラスに〆子ときららが歩いてゆく影が映る。
それを見送りながら俺は、
「女子は何かと大変なのだ」
と分かった気でいたが、後から思えば俺は無知だったのだ。
「ショウ、聞けよ」
と康太が近づいて来た。マクマクソンの件でしょう。聞きますよ。
「あの後さ、俺、マクマクソンにフレンド申請したんだ。ダメもとで」
まあ、断られるわな。
マクマクソンは常にソロだから、フレンド申請も受け付けていない。
「受理された」
「だろ。当然だ」
「驚かないのか?」
「なんで?」
「おい、わかってんのか? 受理されたんだ。フレンド申請が。マクマクソンに」
康太はフレーズを刻み付けるように俺に迫ってきた。それでようやく事の重大さが飲み込めてきた。
しかし、それでも俺の脳みそが理解するまでしばらくかかった。俺の周りの時間が一瞬止まったかのようだった。
「なんだと?」
「おっそ」
「でも、それガセじゃないか? 俺たちが会ったのは《《クマクマ》》ソンだったとか笑」
「ああ、俺もそう思った」
「そこスルーか?」
「何を?」
「いや。先を続けてくれ」
「それで後であいつの配信見たら、
俺のユーザー名がマクマクソンのフレンド欄にあった。やばくね?」
「やばいぞ康太。お前がマクマクソンのフレンドなら、友達の友達は友達理論で、俺もフレンドってことだよな」
「それはちげーよ」
「それな」
なんということだ。康太が出来たなら、俺にもきっとチャンスがあったに違いない。
あの時、マクマクソンに最初に気付いたのは他ならぬ俺の方だったのだし。
なぜ俺はマクマクソンに会ったことだけで満足し、フレンド申請しないまま落ちてしまったんだろう。
バカ! 俺のバカポンタス!
なんで一緒にって誘ってくれなかったの? 康太(涙。
「ただいま」
きららが〆子を連れて戻ってきた。康太は席に戻る。俺はドアの所に二人を迎えに行く。
きららは〆子の手を俺に託すと、
「ゆいちゃん、ありがとね。じゃあ、今度こそきっとお昼休みに」
と言って特進αの教室に戻って行った。
〆子が珍しくそれを見送っているので、そのままきららの後姿を見ていたら、
きららが教室の前扉のところで立ち止まって振り向いた。
〆子が俺の手を2度握りなおす。バイバイしろの合図だ。
その合図の時は、俺が代わって相手に手を振る。
バイバイ。好きピのきらら(ハート。
きららの笑顔が輝いた。
きららに〆子の思いは伝わった。
が、どさくさ紛れの俺の想いは一切伝わらない。
つまり、「バイバイ」と「好きピのきらら(ハート」との間には、
飛び越えられない五次元の壁がそそり立っているようだ。嗚呼。
2限のチャイムが鳴った。
教室に入ろうとすると〆子がその場で少しうつむいた。
いつもはしない様子に俺が戸惑っていると、
「きっと、お昼に会えますように」
と心の声で言ったのだった。まるでお祈りのように。
(毎日2エピソード更新)
続きはこのあと21:10に公開します
よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾⁾
★/いいねしてくれた方、ありがとうございます
とても励みになってます
たけりゅぬ




