カップ麵と乾麺
"カップ麺落としちゃった・・・"
床に転がるカップ麺。主人公は思わず、深いため息をついた。
事業に失敗し、借金返済に家財を手放し、残ったのは段ボール3箱の食料だけ。その中に入っているのは、カップ麺・乾麺だ。
「あぁ、何ってこっちゃ・・・」
亀裂が入ったカップ麵、割れてしまったカップ麺数個ある。その隙間から匂いが漂ってきた。その香りは、なんだか記憶に懐かしい。
乾麺袋の中には、折れてみじかくなっているのもあった。(1本が倍になったのなら、ラッキーと思えばいいよな)
久しく食べていなかった、カップ麵の匂い、不思議と食欲を誘う。
床に落ちたカップ麺を拾い上げた瞬間、どこからか声が耳に届く。奇妙でもあるし、不思議な感じでもある。
「久しぶりですやん」主人公は思わず辺りを見渡した。
すると台所の隅に並ぶ乾麺の袋が微かにゆれていた。
『僕たちはあなたの味方です』
びっくりが大きすぎて、言葉を喪失した。更にもう一つの声が主人公の耳に届く。
「わたしたちは、乾麺そしてカップ麺もその仲間で、人の心をあたため、癒し、いつでもそばにいるのさ、出動できるように」
更に声のバトンが続く。
「私は中華麺、麺類総代を務めているわ」
包むように優しく、凛々しい声だった。
「あなたは事業に失敗したんじゃない、つまづいただけよ、これは最高の贈り物 湯を注げは柔らかくなる私たちのように、戻れる方法は必ずある 人も同じで、乾いていも、困っていても、あたため直せばいいだけのことさ」
主人公は息を呑んだ。まるで、自分の生活を覗かれていたような、見透かされているような、反面、中華麺の言葉がぐっと染みた。
"結果を追いかけたのか、求めたのか、それは知らんのやけど、今こそ、立ち止まり、時間を充てることで、気が付くことがある 焦らず、じっくり計画たてて、前にすすめば、いい人生に成るから"
「そんなことを言ってくれるなんて」
思わず軽やかな笑みがこぼれた。
他のカップ麵を食べよう。落とした時少し蓋が開いたカップ麺に湯を注ぎ3分待つ。蓋を開け、ゆっくり麵を口に運ぶ。
"なんか、うまいよ、これおいしいよ 数カ月ぶりだろうか?スープもうまい、こんなにうまくなっていたのか"
思わず口に出して呟いた。
カップ麵の味噌味が話し始めた。
「乾麺兄さんたちは、完成時間がバラバラだけど、色んなバリエーションがあることが長所だよね」
「そうだろうよ 人を楽しませれるんだ 手軽さ・時短は、忙しい時は重宝される、いつの時代も絶賛だろう 新しい道はもうそこまで迎えに来てるはずだよ 湯を注げば、僕たちはリラックスを届ける」
主人公は涙をこぼした。
たとえば、倒れたとしても、『気持ちが前に向かっているなら見えない何かが引き上げてくれる』そう、言われた気がした。
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翌朝、主人公は、机に向かいノートを開いた。
"未来へ、挑戦する"
それは食品企画書のタイトルだった。
麵にスープを練りこみ、注いだ湯、うまみ油で、スープが麵から溶け出す製品を造ろう。
"未来カップ麺"ページの片隅に書き添えた。
ふと目の前をみると、
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麺類総代のことば
湯気の向こうで、勇気を贈る。
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その日の外は晴れ、空気がまるで祝ってくれてる気がした。
熱い希望が心に投影された瞬間だったのである。
カップ麵も乾麺も日常の中で、時短を支えてくれる存在。湯をそそぎ、3分待てば、空腹は満たされ、温もりがそこにある。
人もまたあたため直すことは可能。挑戦は目の前にある。そんな思いを、この物語に込めました。
最後まで拝読感謝申し上げます。
じゅラン椿




