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カップ麵と乾麺

作者: じゅラン椿
掲載日:2025/10/19

"カップ麺落としちゃった・・・"


床に転がるカップ麺。主人公は思わず、深いため息をついた。

 事業に失敗し、借金返済に家財を手放し、残ったのは段ボール3箱の食料だけ。その中に入っているのは、カップ麺・乾麺だ。


 「あぁ、何ってこっちゃ・・・」

亀裂が入ったカップ麵、割れてしまったカップ麺数個ある。その隙間から匂いが漂ってきた。その香りは、なんだか記憶に懐かしい。

 乾麺袋の中には、折れてみじかくなっているのもあった。(1本が倍になったのなら、ラッキーと思えばいいよな)


 久しく食べていなかった、カップ麵の匂い、不思議と食欲を誘う。


 床に落ちたカップ麺を拾い上げた瞬間、どこからか声が耳に届く。奇妙でもあるし、不思議な感じでもある。


 「久しぶりですやん」主人公は思わず辺りを見渡した。

すると台所の隅に並ぶ乾麺の袋が微かにゆれていた。

 『僕たちはあなたの味方です』

 びっくりが大きすぎて、言葉を喪失した。更にもう一つの声が主人公の耳に届く。


 「わたしたちは、乾麺そしてカップ麺もその仲間で、人の心をあたため、癒し、いつでもそばにいるのさ、出動できるように」

更に声のバトンが続く。

 「私は中華麺、麺類総代を務めているわ」

包むように優しく、凛々しい声だった。


 「あなたは事業に失敗したんじゃない、つまづいただけよ、これは最高の贈り物 湯を注げは柔らかくなる私たちのように、戻れる方法(みち)は必ずある 人も同じで、乾いていも、困っていても、あたため直せばいいだけのことさ」


 主人公は息を呑んだ。まるで、自分の生活を覗かれていたような、見透かされているような、反面、中華麺の言葉がぐっと染みた。


 "結果を追いかけたのか、求めたのか、それは知らんのやけど、今こそ、立ち止まり、時間を充てることで、気が付くことがある 焦らず、じっくり計画たてて、前にすすめば、いい人生(あじ)に成るから"


「そんなことを言ってくれるなんて」

思わず軽やかな笑みがこぼれた。


 他のカップ麵を食べよう。落とした時少し蓋が開いたカップ麺に湯を注ぎ3分待つ。蓋を開け、ゆっくり麵を口に運ぶ。


"なんか、うまいよ、これおいしいよ 数カ月ぶりだろうか?スープもうまい、こんなにうまくなっていたのか"

思わず口に出して呟いた。


 カップ麵の味噌味が話し始めた。

 「乾麺兄さんたちは、完成時間がバラバラだけど、色んなバリエーションがあることが長所だよね」

 「そうだろうよ 人を楽しませれるんだ 手軽さ・時短は、忙しい時は重宝される、いつの時代も絶賛だろう 新しい道はもうそこまで迎えに来てるはずだよ 湯を注げば、僕たちはリラックスを届ける」

 主人公は涙をこぼした。


 たとえば、倒れたとしても、『気持ちが前に向かっているなら見えない何かが引き上げてくれる』そう、言われた気がした。


♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦


翌朝、主人公は、机に向かいノートを開いた。

 "未来へ、挑戦する"

それは食品企画書のタイトルだった。


 麵にスープを練りこみ、注いだ湯、うまみ油で、スープが麵から溶け出す製品を造ろう。

"未来カップ麺"ページの片隅に書き添えた。



ふと目の前をみると、

  ♧♧♧♧♧♧♧♧♧

  麺類総代のことば


  湯気の向こうで、勇気を贈る。

  ♧♧♧♧♧♧♧♧♧



その日の外は晴れ、空気がまるで祝ってくれてる気がした。



熱い希望が心に投影された瞬間だったのである。

カップ麵も乾麺も日常の中で、時短を支えてくれる存在。湯をそそぎ、3分待てば、空腹は満たされ、温もりがそこにある。


 人もまたあたため直すことは可能。挑戦は目の前にある。そんな思いを、この物語に込めました。

最後まで拝読感謝申し上げます。


  じゅラン椿

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