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天才テイマーは魔物にチヤホヤされて過ごしたい!そのために厄介事を解決します!   作者: 蛇ノ眼
第五章『最大の厄介事開始!それは謎の招待状から始まった』
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第67話「鮮血」

 シャープは顔に生暖かい物がかかってハッとする。


(俺は何をしてるんや?そうや、クォートが弓を撃ってきて……そして……)


 頭を必死に整理する。長い眠りから覚めたように頭はボンヤリとしていた。


(そうや、ウィンに矢が刺さりそうやったから……)


「ウィン……?」

「シャープ……目が覚めましたか?良かったです」


 ウィンはシャープに抱き着く形で体重を乗せている。

 またふざけているのかと、シャープはその体をどけようとした。


「え?」


 その手にベッタリと赤い物がついた。

 それが血だという事を理解するのに時間がかかった。なぜならシャープはどこも痛くないからだ。


「え?え?ウィン……お前……怪我して?……」


 ウィンは黒い服を着こんでいるから解りにくいが、脇腹の辺りから血を流していた。

 その血は服を伝いボタボタと地に滴り落ちている。


「その傷……誰に……」


 シャープの呼吸が荒くなる。

 信じたくなかった。そんな事はあり得ないと思った。

 しかし、自分の赤く染まる手と、ウィンの意地悪な笑みでシャープは全てを察する。

 ウィンに傷を負わせたのは自分だ……と。

 

「え……俺……ウソや……どうしよ」

「すいません……私が避けきれなくて……ほら?私……運動は苦手なので……」


 シャープの動揺を落ち着けるようにいつもの調子でそう言う。

 が、その呼吸は荒く。ついには、シャープの体を伝わるようにズルズルと倒れこむ。


「お……おい!」


 シャープは慌ててウィンの体を抱き抱える。

 そこでふと気が付く。

 

(俺はウィンの使い魔や……その俺が主であるウィンに致命傷を与えた……)


 そうなればテイマーとの契約により、同じ傷を負うはず。なのに、シャープは小さな傷1つ付いていなかった。


「え?」


 右手を見て声を上げる。そこの薬指にはまっていたはずの契約の石が無い。


「なんで?」

「ああ……シャープの攻撃の前にギリギリ間に合いました」

 

 ウィンはそう言うと手を広げる。そこにはシャープの指にあった契約の指輪。

 宝石のように美しかったそれは、血で汚れている。


「お前……それを外すために致命傷覚悟で近づいたんやろ……」


 何も覚えていないが、シャープにはウィンの取った行動が目に見えた。

 ウィンならそうするだろうと……

 

「本当は……弓が壊れるまで逃げられたら良かったんですけどね……私……運動は苦手なので……すいません」


 上の空のようにウィンは呟く。


「ええよ……戻ったら俺が鍛えたるよ……」


 その言葉にウィンは小さく笑う。

 

「そうや……セディユさんに治療……」


 シャープはセディユの姿を探すが見当たらない。次に空を見上げると大きな闇が見えた。


「セディユさん?……」


 その闇にセディユが吸い込まれていくのが見えた。


「ああ……セディユ……私の力が足り無いばかりに……すいません」


 ウィンはセディユに手を伸ばし、薄く開けた目で天を仰ぐ。

 ウィンは全部を自分の落ち度だと抱え込もうとしていた。

(思い返せばいつもそうだった)シャープは込み上げる物と共にそれに気が付いた。


「約束したやん……ずっと一緒やって……俺の前から消えへんって……」


 ウィンの体を抱きしめて、シャープは泣いていた。

 また捨てられる事が悲しかったのではなく、ウィンを失う事が心の底から怖かったのだ。

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