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天才テイマーは魔物にチヤホヤされて過ごしたい!そのために厄介事を解決します!   作者: 蛇ノ眼
第五章『最大の厄介事開始!それは謎の招待状から始まった』
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第57話「退場」

「うっ!あ!」


 デリートは逃げようとする。だが、凍った足は動かずその場で転倒する。

 ウィンとカレットは突進して来るダガーの迫力に身動き出来ない。

 誰もが最悪の場面を想像した。


 ガッッ!!


 鈍い音が響く。


(デリートの頭の砕けた音……色んな意味で見たく無い)


 ウィンはそう思うが、いつまでも視線を逸らしている訳にもいかない。

 ゆっくりと視線をデリートのいた場所に持って行く。

 頭の無い筋肉が血しぶき上げている最悪な場面を想像していた。

 だが、デリートは尻もちをついたままで無傷だった。

 


「フォーンさん!?」

 

 ルートが驚きと歓喜の声を上げる。


「間一髪……って事で」


 デリートとダガーの間に入り、ダガーを食い止めたのは突如現れたフォーンだった。

 その登場にも驚いたが、フォーンは木刀一本でダガーの口を抑え込んでいた事にも一同は驚きを隠せなかった。

 


「何あいつ!?デリートを助けたって事はデリートの仲間なの!?」

「いえ、仲間では無いですが……私にしてみれば同じようなものです」


 ウィンはそう言って溜息を吐いた。


 パーンッ!


 ダガーの鼻先にかかっていたネックレス、そこに付いていた契約の石が音を立てて砕けた。

 これで契約の石、そのすべてがダガーの体から外れたのだ。


 ズズーン!!


 ダガーの体はその場にぐったりと伏せる。


「ダガーさん!」


 ルートが駆け寄りその大きな体に手を添える。


「良かった……気を失っているだけっす」


 ルートはほっと一息吐くと、フォーンを見上げる。


「ありがとうございます。ダガーさんはここまで人を傷つけずに頑張って来た……最後の最後にあんな奴のために台無しにする必要は無いっす」

「ああ、まぁそれは成り行きって事で……単純にボクはデリートちゃんに今死んで貰ったら困るってだけだ」


 フォーンは尻もちをつくデリートを見る。


「くそがぁ!」

 

 デリートは怒り任せに体を大きく動かす。


 パキッ!!


 その時、足の氷にヒビが入った。かと思うと次の瞬間、氷は粉々に砕け散る。


「流石に私の魔法じゃここまでが限界みたい」


 カレットは悔しそうに言う。

 先ほどまで無様にもがいていたデリートだが、自由になったと解ったとたん立ち上がりふんぞり返る。


「残念だったな、どうやら黒幕様は俺が来るのをお望みらしいぜ?」


 そう言って落ちていた鞭を拾い構える。


「1人増えた所で残るは人間だけだ。俺様はダガーが居なくてもツエェェェんだよ!てめぇらを排除してまたダガーと契約すればいいだけの事だ!」


 デリートは目の前のフォーンに鞭を打つ。

 だが、鞭は空を斬ってフォーンには当たっていない。


「なっ!?」


 デリートは「これでどうだ!」と言わんばかりに何度も鞭を振るう。

 しかしフォーンは、うねる鞭を大きな体でかろやかに交わそ、一瞬でデリートに間合いを詰める。

 そして、見事な剣さばき……いや木刀さばきでデリートに一撃をお見舞いする。


 ガッ!


「グッ!!!」


 デリートは汚い呻きと共にその場に倒れた。



 ――――――



 フォーンは倒れるデリートの手を取ると手錠をかける。


「デリートちゃんはボクが責任もって預かるって事で」

「フォーンさん凄いっすね!お強いんですね」


 ルートは興奮気味にフォーンを見る。

 その横で、()()()()()()であるウィンとカレットは腕を組んで複雑な顔で立っている。


「フォーンさん、ここにはデリートを捕まえに?」

「そういう事、神出鬼没でなかなか捕まえられなかったけど、絶対ここにいるはずだって……あの人がね」

「あの人……とは、リビルド学長ですね」


 ウィンの返しにフォーンは苦笑いで返す。


「ほんとあの人、人使い荒いって事で」

「まぁ……学長としてはテイマーの汚点であるデリートはどうにかしたい対象だったでしょうしね」


 2人の話を聞いていたカレットが首を傾げて問う。


「じゃあ、あなたもテイマーなの?見た所、テイマーの紋章が無いようだけど」

「あはは、ボクはテイマーじゃ無い。ただの役所勤めの者だ」

「でも、招待状を受け取ったのはテイマーだけよね?」

「ああ、それなら」


 フォーンはゴソゴソと懐を探る。そして招待状を手に取る。


「これはリビルド学長に届いた物って事で、代わりにボクが来た」

「譲渡が出来るとは思えませんが?」

「試した訳じゃ無いんだろ?」


 フォーンは飴を転がしてニヤニヤ笑った。




 

 

「よっと……おっも」


 フォーンはデリートを肩にかかえる。


「じゃあ、ボクはデリートちゃんと出るよ」


 次にその視線をウィンに向ける。


「リビルドからの伝言だ。『後で報告に来い』って事で」

「はぁ……あの人全部人任せじゃ無いですか」

「ほんとほんと、困るよねぇ」


 フォーンと意気投合してしまった事に、ウィンは苦い顔をする。

 その後、フォーンは2枚分の招待状を破棄しデリートと共にこの場を去ったのだった。

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