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天才テイマーは魔物にチヤホヤされて過ごしたい!そのために厄介事を解決します!   作者: 蛇ノ眼
第五章『最大の厄介事開始!それは謎の招待状から始まった』
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第54話「VSデリート」

 ダガーと対等するルート。その背を見てシャープが心配そうに言う。


「なぁウィン?全員でダガーを倒した方がええんちゃうか?」

「デリートさんが強制的に契約をしているとはいえ、契約関係に変わりはありません。なので分散した方が個々の能力は落ちるはずです」

「そうとして、デリートは人間ですよ?我々が相手にしていいのですか?規約は?」


 リーダの言葉にカレットとシャープは「あ」と口を開ける。


「あれは人間界の規約ですので。ここはクォートさんが作った世界なので適応外ですよ」

「無理やりやなぁ。でも喧嘩ふっかけて来てるんは向こうからやしな」


 シャープは右の拳を左の掌に打ち付ける。


「でも、あんなゴリラみたいなの相手にどうするのよ?」

「確かに筋肉ダルマですが、人間です。シャープとリーダさんが力を合わせれば……」

「おい、ダガーはルート君に丸投げでデリートは俺らに丸投げか?」


 シャープが呆れたように言う。


「え~と……カレット?何か出来ますか?」

「え!?わ……私は……あ!最近練習している魔法があるの!あれならどうにか出来るかも」

「では、それをお願いします。詠唱はどれほどですか?」

「じゅ……15分」

「お嬢様……長すぎでは?そんなの実戦で使えませんよ」

「だからっ!練習中なのよっ!」


 ウィンは「解りました」と頷く。


「では15分、我々でデリートをどうにかしましょう」


 カレットは頷くとスゥーと息を吸う。そして両の手を組み、瞳を閉じて詠唱を始める。


「シャープ、リーダさん。援護しますのでお願いします」

「解ったで」

「仕方ありませんね」


 シャープとリーダが前に出てデリートと対等する。


「ははは!どうするのかと思えば、俺の相手は可愛い獣2匹かよ。ダガーはガキとチビ竜だけか?勝てると思ってんのかよ?」


 その言葉にウィンは首を振る。


「本当に。ルートは素晴らしい竜を相手に、あなたは可愛い獣人を相手に……羨ましい。私は何でこんな筋肉ダルマを相手にしないといけないのか……」

「赤髪、テメェはマジで口だけだな」

「私はちょっと天才の普通の人間なので仕方ありません。ですがこれくらいの魔法は使えるんですよ?」

 

 ウィンはデリートに向けて詠唱する。


「この魔法、魚人の時に使った動きを止める魔法や」

「それしか使えないのか?……だが数分動きが止まれば十分だ」


 リーダがレイピアを手にデリートに歩み寄る。

 その時、デリートの手が動き鞭を振るう。


(パシィッ!)


「!?」


 間一髪、リーダは俊敏な動きでそれを交わす。


「え!?動きが止まってへん!?」


 ウィンは「すいません」と詫びて続ける。


「腐っても竜と契約出来る能力は持っているって事ですね……私の魔法程度では動きを少し遅くする事しか出来ないようです」

「十分やで、元々俺とウサ公のスピードに人間がついて来られる訳あらへんからなっ!」


 シャープは爪を伸ばすとデリートに飛び掛かる。

(ザッ!)

 デリートの懐に入り爪をたてようとする。が、そこにデリートの蹴りが飛んでくる。


「!」


 両腕を交差してガードで防ぐ。しかし、蹴りの威力は強くシャープは体ごとフッ飛ばされる。


「クッ」


 シャープは空中でクルリと1回転するとストッと地面に手と膝をついて着地する。


「シャープ、大丈夫ですか?」

「平気や。でもアイツ強いで、あの筋肉は飾りやないって事やな……」


 次はリーダがデリートに間を詰める。デリートの打つ鞭を左右にステップして軽やかに交わす。そしてレイピアの間合いまで来ると、デリートを突く!


(ズッ!!)

 リーダのレイピアはデリートの腕に刺さった。が、先端が少し入っただけでそれ以上は力を入れても動かない。


「くそ!こいつ!固い!」

「こっちは鍛えてんだよ。ウサギちゃんの力じゃ俺にまともな傷はつけれねーよ!」


 至近距離でデリートの足がリーダを襲う。


(ザッ!)

 ギリギリの所でシャープが体ごとリーダにタックルをして、攻撃を交わす。

 シャープとリーダは飛び退き、一旦デリートから間合いを取る。


「あいつは闇雲に攻撃してもダメだ。私のレイピアも、お前の爪も奴の筋肉にはさほど攻撃が通らない」

「じゃあ、狙うは……目やな」

「私が引き付ける、お前は目を狙え」

「解ったで」


 顔を見合わせて頷き合うと、2人で同時に攻撃する。


「可愛いのが同時に来た所でどうって事ねーんだよ!2匹仲良く可愛がってやんぜ!」


 デリートは動きが遅くなっているにも関わらず、2人の攻撃を豪快に受け流す。

 リーダとシャープの攻撃はデリートに小さな傷を付ける事しかできずにいる。


「おらおら、もう疲れて来てるのかぁ?動きが最初より悪いぜ?逆に、俺は赤髪の魔法が切れて来て軽くなって来たぜ!」

「確かに……延長戦はこちらに不利だ、一気にやるぞ」

「ウサ公に言われんでもそのつもりや」


 リーダは姿勢を低くすると足に力を入れる、そして大きくジャンプする。兎の獣人であるリーダの本気のジャンプは相当の高さだ。その高さから、デリート目掛けてレイピアを構え降下する。


「さすがウサギちゃんじゃねーか!よく飛ぶ……」


 デリートの死角からシャープが素早く間を詰めた。

 そしてその目めがけて爪をたてた!


(シャッ!!)

 シャープの爪がデリートの目を引っかいた……ように見えた。


「なっ!?」


 爪はデリートの目の数ミリ前で止まっていた。

 シャープの腕はデリートにガッシリと取られていたのだ。

 

「こっちはかわせないだろう!」


 リーダが落下しながらレイピアをデリートに突き立てる。


(シュッ!!)

「なに!?」


 リーダの足にデリートの振るった鞭が絡まる。


「ははははっ!じゃれ付いて来て可愛い奴らだぜ!後でもっと遊んでやるから、ちょっと大人しく寝ておきな!」

「え!?」

「くっ!」


 デリートはシャープとリーダを同時に岩に投げ飛ばす。


「あっ!」

「しまっ……!」

 

(ドッ!!)

 2人は受け身も取れないまま岩に直撃し、そのまま床に落ち意識を失った。

 

「さぁて、残るは役立たずの飼い主だけだなぁ?」


 デリートはウィンを見てベロリと舌なめずりをした……

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