side??? 前編
※前回の続きなんて知りません、ここから後中編、後編と続きます。
「貴方はもう、私の相棒なんかじゃない」
「嘘......だろ。なぁ!嘘だと言ってくよ!!」
俺の叫びを聞いても目の前の少女は振り向かない。いや、もしかしたら聞こえてないのかもしれない、そんな儚い希望を抱いてもう一度、俺は叫んだ
「嘘だと言ってくれ!!なぁ!せめて何か言えよ!!」
さっきまで一緒に笑っていた少女はどんどん目の前から遠ざかっていく。
「今まで一緒に頑張ってきたじゃないか!!どうして、どうして!!」
そんな俺の叫びは少女に聞こえたのかすら分からない。
「あぁぁぁ!!」
俺は泣くしかなかった。泣いても現状は変わらない事なんか分かっていても彼女を追いかける事も何故いきなり見捨てたのかを聞くことも出来なかった。
結局、その日は宿に戻って静かに枕を濡らす事しか出来なかった。
俺はなんで見捨てられたのか思い当たる節をひたすら考えたが思い当たる節なんて何も無かった。
俺は魔物狩りになってからずっと相棒であったカノンと一緒に魔物を狩ってきた。喧嘩したりなんかは良くあったし解散の危機なんて今まで幾らでもあった。しかしその原因は二人だけじゃ殺せない魔物と出会ったり連携ミスによる怪我が起きた時だ。最後に受けたクエストでは連携も普通だったし怪我も無かった。だからこそ思い当たる節が何も無いんだ。
「どうして......どうしてなんだ、カノン......」
俺は泣いた疲れのせいか意識が薄くなってきて......
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「ふわぁ......」
目を開けるとそこにはカノンが居た。なんて事はなく俺以外にはずっと使ってきた愛剣と最近新調したばっかりの鎧位しかなかった。
「あれ?」
俺はもう一度良く部屋を見てみる。愛剣に鎧......しかない!?窓は......鍵がされてなく、しかも開いていた。どうやら空き巣に入られたらしい。
「おいおいマジかよ......」
俺は一夜にしてずっと一緒だった相棒に道中集めた常駐依頼の魔物の討伐証明部位の入った袋に全通貨を失ったらしい。取り敢えず俺は宿屋を出た、これ以上は泊まることができないし出るしかなかった。
「報告したって面倒なだけだよな......」
街の騎士団に報告したところで証拠もないし窓が開いていた事から俺の用心不足って事で何もしてくれないだろう、過去に用心不足って事で何もしてくれなかったしな。あの時盗まれたのってなんだっけ......まぁどうでもいいか。
ギルドに行った俺は見たくも無い光景を見てしまった、ギルドに来た事を後悔する光景を。
「やっお待たせ〜ごめん待った?」
「いや、俺も今来たところだよ。それで今日から一緒にパーティーを組む訳だけど最初だし連携の練習とかで軽めの依頼にする?」
「そうだね〜個々は強くても連携が駄目だと魔物に殺されちゃうしね、軽い依頼にしよっか!」
「了解なら......」
カノンはどうやらあの男とパーティーを組む為に俺を捨てたらしい。あの男と一緒に組むじゃ駄目だったのか?そもそもあの男は誰だ?など色々な考えが俺の頭に過ぎる。まぁ捨てられた理由が分かっただけでも良かっただろう、カノンだってカノンの人生があるんだし幸せの為に何かを切り捨てるのはあまり良い事では無いが別に悪い事ではない、誰だってこんな残酷な世の中で幸せになりたいんだ。そう自分に言い聞かせる。
「それよりか今夜の晩飯代位は稼がないとな......」
俺は今無一文なんだ、元相棒であるカノンの事を考えるより今日を生きる事を考えなければならない。
「すまない、安くても良いから手頃な討伐依頼はないだろうか?」
俺は今まで採集依頼というものをやった事がない、何故なら植物の知識などほぼ無いに等しいからだ。初心に戻り受けても良いのだが討伐依頼なら場合によっては狩った魔物が食える、討伐証明部位さえ取れれば後は皮などが売れる場合は剥ぎ取り要らない部分はポイだ。肉などは大抵の場合売れるから基本的には売るが自分で食べようが問題は無い。
「えっと......すみません、ギルドカードの提示をお願いしても良いですか?」
「あ、あぁすまない。これでいいか」
俺はギルドカードを提示した。これでもそれなりの腕はある。
「はい、問題ありません。にしても凄いですね、Bランクなんて!それではこちらの依頼なんてどうでしょうか?」
ギルドの受付嬢が見せてきた依頼はオーク五匹以上の討伐依頼だった。オークは特に苦戦する相手ではないし5m位の巨体だから食べれる部位も多い、討伐証明部位は両目だから取りやすいし問題は無い。
「それじゃあこれを受けますね」
「分かりました、ではこちらが依頼証明書です。討伐証明部位と共にご提示下さい、ではご武運を」
前は依頼証明書はアイテムボックスに入れていたが今はそのアイテムボックスすらないのか......仕方ないので鎧の内側に着ている服のポケットに入れておく。オークが居るのは基本的に森林の奥地だ、街の南門を出てすぐに森林が見えたのでこの街では出会いやすい魔物なのだろう。前に受けた時は街から森林が遠くて移動だけで一日掛かった。あの時は辛かったなぁ......カノンが急げばもっと早く着いただの言っていたがお前の荷物とかほとんど俺が持ってたんだしそんな事言う権利ないだろって当時は思ってたな、懐かしいものだ。
「っと魔物の気配...いや魔獣か?だとしたら相当危ないが......」
※魔物とは魔力を持つ異形の生き物の総称、そして魔獣は魔力を持った 獣の総称で魔物より凶暴で危険度が高い、そしてそれよりも危険度が高いのが魔人、魔力を多く持ち、人でなく、知能が高い生物の総称。魔人は中々居ないし知能が高いから無駄な争いをしない奴もいるしで同じ魔人でも危険度が大きく違うのが基本
「来た!ってただの森狼フォレストウルフか」
「ワフ!?」
即座に狼の横を取り愛剣で狼を真っ二つにする。周囲の気配を探ったが近くに仲間などは居ないらしい、気配がなかった。俺は狼の毛皮を剥いで薪を集めてる時に見つけたアイテムボックスに仕舞う。アイテムボックスの近くには死んでから結構経っているの死体があった。装備的にも成り立ての魔物狩りだろう。死因は......多分怪我による大量出血だろう。専門家でもないから分からないが森林での死因なんて大体はそんなもんだ。俺は朝飯代わりの狼肉を少し食べ残りはアイテムボックスに入れた。肉を焼いた影響でそのうち肉食共が集まってくるだろうからすぐにその場を離れる。集まった肉食共を狩るのも良いがオークの肉は油が乗ってて美味いのでそっちの方がお得感がある。俺は現在、森の奥地に向かっている二人なら五匹位一日で狩れたのだが一人だし慎重に狩ることにしよう。
「ふぅー……《五感強化》」
俺のジョブである『超人』は使えるスキルが少ないが感覚が研ぎ澄まされたり、筋力がオーク並になったりとそこそこなジョブだ。世の中にはステータスという一人一人の能力値を見れるジョブもあるそうだ、俺は会ったことないけどな。
「いた、ここから東に100m位か。『身体強化』」
オークの足音が聞こえたのでその場所に向かう。『身体強化』で出来るだけ早く向かう。理由は簡単でその場所の近くに人間の足音が聞こえたからだ、オークはそれなりに強い、しかも今回のオークは何かが違う、普通より重みがある。それ程獲物を食ってるのか、それとも……っと見えてきたな。
「ブフォー」
「……は?」
オークを見た俺は自分の目を疑った。相手は普通のオークじゃなくオークキングだったからだ、オークキングはオークより一回り大きく、武器として鉄製の大剣を持っている。オーク自体は攻撃にさえ当たらなければ時間を掛ければ初心者でも倒せる魔物だ。しかし、オークキングは違う。大きいくせに早く動くし配下召喚を使ってくる個体もいる。単独での討伐は非推奨されている。
仕方ないから一旦撤退するかと思っていたらオークキングが急に走り出した。
俺は感覚を研ぎ澄ませオークキングが向かった方向の気配を探る。
「最悪かよ……」
その方向には人の気配があった。流石に見殺しはできない……仕方ない、助けて即撤退か
「『身体強化 』『脚力強化』『部位強化 足』『筋力強化』」
強化系のスキルの特徴なのか動きをある程度止めると解除されるんだよな、不便だ
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「ブフォー!」
「はぁはぁ……」
なんでこんな事になったのだろうか、私はただ、薬草採取の依頼を受けただけなのに……まだ冒険者になったばっかりで孤児院育ちだから武器を買うお金も無く、何とか必死に働いて冒険時の登録料金を稼いでやっと収入が少しは安定すると思ったのにまさか最初の依頼でオ・ー・ク・に追い掛けられるなんて……
「あっ」
木の根に躓いて転けてしまった。オークはすぐそこまで来てる。あぁ……もうすぐ死ぬのかな。私ってなんの為に頑張ってきたんだろ……
「ブフォー!!」
目の前のオークは大剣を大きく上に掲げている。あれを振り落とされたら私は死ぬ、もう動ける体力も気力もない。私の人生って悲惨だったな……
私は目を閉じた。
「そんな諦めたような顔をしないで貰えるか?こっちは何とか立ち直ろうとしてるんだからよ」
ガキンッと大きな音を立てた後に声が聞こえてきた。私はゆっくりと目を開けるとそこには細めの鎧を来た人がオークの大剣をそれに勝るとも劣らない大きさの剣で受け止めていた。
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何とか間に合ったらしい、間一髪だったな。というか流石オークキング、力強いな。
「すまないが早く逃げてくれると助かる、気づいてるか分からないがこいつはオークキングだ、流石に俺一人だと厳しいからいつまで耐えれるか分からん、だからさっさと逃げてくれ。じゃないと俺も撤退できない 」
「あ、あの!なんで助けてくれたんですか!」
「今はそんな話後だ!それより逃げろ!!」
「は、はい!!」
俺が強く言うと少女は走って逃げて行った。まさか推定15歳位だとは思わなかった。少なくとも24である俺より4〜6歳位は下だろう。まぁこの世の中じゃよくある事か。というかこんな事考えてる暇ないな、こっからどう動こうか……
「ブフォー!!」
「うおっ!?」
相手の押す力が一気に強くなった。強化系のスキル持ちかよ、相性悪いな……
「『部位強化 腕』『腕力強化』『一点集中』」
「ブォ!?」
「はぁぁぁぁ!!」
『身体強化』は継続されていたから使わずに『部位強化』と『腕力強化』で腕力を上げ、『一点集中』で力の流れを一点集中に集中させて大剣を押し返した訳だけども、ここまでしないと押し返せないとか力の差があり過ぎるな。どうしようか?逃げる事は可能だがざっと探知した感じ人が割と多い、被害者は出したくないがこいつを足止めするには俺だけじゃ力不足だ。
「ブフォー……ブォォォォ!!」
「くっ!?」
いきなり叫びやがった!?これは……探知すると多数の人じゃない足音が聞こえてくる。その足音は明らかにオークだ。
「ざっけんなクソ豚!!仲間呼ぶんじゃねーよ!!」
強化はまだ続いてる。なら追いつかれないと考えて先にオーク共を片付けた方が良さそうだ
「お前はここで待っとけ!動くなよ!!こっちにも来るな!!」
直ぐさまオーク共にいる方向に向かう。依頼は達成できるし正直逃げたい。ただ目覚めが悪いのは嫌だなぁ……はぁ、頑張ろ
「「「「ブオ!?」」」」
「ざっと12体位か?だるいなぁ……」
こういう時にスキルで攻撃出来れば楽なんだろうなぁ……まっ無いものねだりしても仕方ないけど
「ブフォー!」
一体のオークが殴りかかってきたから躱すついでにそのままオークの腕をつたって大剣で首を横方向にぶった斬る。運良くオークは固まっていたのでそのまま肩から次のオークに移り首をぶった斬っていく。全てのオークの首を刎ね終わった頃には俺の体はオークの返り血で赤く染っていた。この鎧、洗うの大変なんだがなぁ……
「ブォー!!」
「っ!まっ流石に待ってはくれないか」
元より期待はしてなかったが案外長く待ってくれたものだ、やっぱり通常個体の知能が低い分、特殊個体は知能が高いのか?まっ欲を言えばもっと待ってて欲しかったけども。少なくとも俺が少しは休めるぐらいの時間が欲しかったね。
「ブォー!!」
「そのままの勢いで突進するつもりかよ、ならその足貰ってくぞ!」
「ブオ!?」
突進を横に躱して止まった隙をついて足を斬りにかかる。しかし、勢いが足りないのか、それともオークキングの皮膚が硬いのか分からないが完全に切り落とす事はできなかった。まぁこれでさっきみたいな突進や最初の様な攻撃はできないだろう。
「ブォー!!」
「うるせえなぁ!さっさと首を寄越せ!!」
もう片方の足も斬り、立てないようにしたら後は楽だ、ひたすら斬り続けるだけで良いからな。
「これで……終わりだ……!!」
「ブォー!!」
あれから何時間か首を集中的に攻撃し続け、なんとか完全に首を切れた。半分切っても生きてるとかどんな生命力してんだよ、というか生命力以前にどんな身体の構造してんだよ、オークキング。まぁ多分これはあれのせいだと思うがな……俺の予想が正しいなら……
「やっぱりか」
オークキングの心臓を探すと心臓の代わりに魔力結晶があった。
※魔力結晶 魔力の塊。長年生きている生物には必ずあり、突然変異体なども持っている個体がおり、持っている生物の特徴として生命力が頭おかしいほど強く、数百ぐらい魔法を使っても魔力切れを起こさない、など色々ある。魔力結晶の使い道は主に魔道具であるが本作では今のところ魔道具が未登場
「これぐらいの大きさがあれば相棒の強化に使えるかもな」
さてと……街に戻るか。そう思って辺りを見渡してみると日が沈み始めていた。割と長く戦っていたのか……あっ急に眠気が……クソッスキル使いすぎたか……
後書ちゃん「いや、前回の続きは!?後本当にこいつ誰!?あと新しい設定追加するな!」
サブちゃん「この新しく出てきた人ですけどこの章で一番大事な役割を担うそうですよ?」
後書ちゃん「だとしても予告ぐらいしよ!?あと前回の投稿から期間空きすぎだろ!!謝罪しろー!」
サブちゃん「作者の謝罪はいつも通り後書き後編(謎)で!では次回もお楽しみに〜!」
後書ちゃん「あれ?今回なんか短くない……?」
どうも、作者です。
予定としては年内最後の投稿はside???の後編を予定していますが……正直確定とは言えません。まぁこんな感じの作者ですが来年も当作品や他の作品含め、読んで下さると幸いです。では良いお年を〜(投稿できなかった時の保険)