とある女冒険者のきまぐれ
彼はいつも女性用の下着で街を出歩ている。
だけど、そんな彼の存在に気付く人はいない。
ある時は、服屋のマネキンに混ざってたり。
ある時は、男性冒険者を鼻息荒く尾行してたり。
ある時は、男性冒険者のお尻に股間を押し付けようとしてたり。
私には見えている。
そう、見えている。
彼の隠密能力は相当なものなんだと思う。
でも私には、生まれつきのギフテッド。
どんな隠密も看破できる。
そのせいで、余計なものが見えちゃってるんだけど...
そんなある日のこと。
彼をギルドで見かけた。
同じパーティの仲間と一緒なのだろうか。
和気あいあいとした雰囲気の中、寡黙に佇んでいる。
いや、あなたはそんなキャラじゃない。
なんだろう。
よくわからないけど。
気が付けば、彼に話しかけていた。
「今日も女性用の下着を付けてるんですか?」
だけど彼は反応しない。
代わりに女性冒険者が答えてきた。
「...? どちら様?」
白い潔白な聖堂服。
神官なのだろうか。
たわわに実ったそれは、似つかわしくない。
「あなたではなく、そこの彼に聞いたのです。」
指さす先に彼。
目が合う。
彼が初めて私を認識した瞬間だ。
とても凛々しい顔つき。
普段の行動が信じられないギャップだ。
「お、おれに言っているのか?」
「そうですよ。いつものようにコマネチーってやってみてくださいよ。」
「っふ。そそ、そんなことで俺の気を引こうってのか。モテル男っていうのもつらいぜ。」
少し震えた声。
確実に彼だ。
やましいことがあるのは間違いない。
そんな反応だ。
ははは。
なんだか楽しくなってきた。
楽しくなってきた。
私は知っている。
今朝がた、下着姿で徘徊していたことを。
まだ付けているに違いない。
自分をさらけ出しちゃいなよ。
「じゃぁ、ちょっと上脱いでもらえませんか?」
「さっきからあなたは何!? 彼、困ってるじゃないの!」
口を挟んできたのは、さきほどの神官。
この反応を見るに。
彼のことが好きなのだろう。
「彼は男が好きなのです。」
「――!?」
「私は彼が男性冒険者に股間を押し付けようとしているところを幾度となく見てきました。」
「そういえば、女性に浮つく素振りなんて一度たりとも見たことがない...」
ビンゴ。
食いついてきた。
この調子で押し切れるか。
そわつく彼。
心なしか心臓の高鳴りが聞こえるようだ。
「あああ、あた、頭のおかしい女だ。つつつ、つき合ってられんな。」
白目を剥いて震えている。
そのうち泡でも吹くんじゃなかろうか。
「お、おい... 大丈夫か?」
パーティメンバーの一人が彼に声をかける。
だが小刻みに震えるだけで反応がない。
彼は今、何を考えているのだろうか。
「実はおれ、女だったんだ! そう、女だったんだ!」
「「!?」」
もはや自滅である。
このテンパリよう。
こんなにメンタルが弱い人だったんだ。
いや、これまでの数々の狂行。
強いのか、弱いのか、どっちなんだ...
話してみないと分からないこともあるもんだなぁ。
じゃ、私は面倒ごとになる前にかーえろっと。