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青年と路地裏の女

太陽が真上に昇るお昼どき。


青年は気怠げに街を歩いている。

黒の短髪に切れ長な目つき。

凛々しさと怠惰が同居しているかのような、独特な雰囲気を醸し出している。


片手にはイチゴオレ。

片手にはパン。


そんな青年の足を止めたのは、路地からの悲鳴だった。

他の通行人も聞こえているはずなのだが、誰も視線すら向けようとしない。

建物の間にできた長い細道をのぞき込む。


「離してください!!」


「大人しくしろぉ!!」


「いやぁ!!」


いかにもワルな風貌のモヒカン男。

いかにもオシトヤカな風貌の女性。

女性の細腕は掴みあげられ、白いサンハットが落ちかかっていた。


女性は青年の様子を、チラりと窺った。

なんども、なんども。

助けを求めているようには見えない。

どこか別の意図を感じ取れるような視線。

まるで、彼女が青年を値踏みしているかのよう表情だ。


(なんだか関わってはいけない気がする……。みなかったことにしよう……。)


青年がその場を後にしようとした時――


「誰か、たーすけーてー!」と女がより一層声を高くして叫んだ。


「おい兄ちゃん、なんか用か?」


野太い声が青年に向けられた。

邪悪な笑みを浮かべた男の口角が、片方だけゆっくりとあがっていく。

青年は首をブンブンと横に振ってNOと意思表示。

「そうか、」とうなだれる男の声色は、どこか残念そうだった。


「で、では……失礼します。」


恐る恐る、相手を刺激しないようなトーン。

青年がその場を去ろうとしたその時。

残念ながら、青年の些細な努力は無に帰した。


「わーたし、あの子がイーイー!!」


(――!?)


女が男の手を振りほどき、地団駄を踏みだした。

驚きからだろうか、事態を察したからだろうか。

青年の顔は、作り笑いを引きつらせていた。


「いい加減にしないか……」


「だって、あの子ちょータイプなんだもん! それに私の鑑定眼によると……」


「はぁ。」


屈強な男がため息を漏らす。

先程までの状況はいずこへ。

明らかに、二人は知り合いのようだ。

男は申し訳なさそうに頭をかきながら、口を開いた。


「実はこの嬢ちゃんのカレシ候補を探してるんだよ。 そんで、俺はその手伝いさ……」


「ちょ、契約違反よ! バイト料ださないわよ!?」


「あんたもみてくれは悪くないんだから、その高すぎる理想をどうにかしな……」


「私の王子様を探して何が悪いの!」


「今までだってさんざん粒ぞろいだっただろうが! ワガママすぎんだってば。」


古びた木製の窓が開き、

「あんた達! いっつもいっつもうるさいんだよ!」

小太りなおばさんが怒声を飛ばす。

二人は恐る恐る「「すみません。。」」と謝罪した。

「ところで」と女が周りをキョロキョロと見渡す。


「さっきの子は?」


「こんなやつヤダーって逃げてったんだろ?」


「探してきなさい!!」


男はまた、ため息を吐く。


「別のバイトでも探すかね...」


その場が男の哀愁で満たされた――

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