第92話 北海道⑤ 宗谷岬、知床、納沙布岬
「すごいですね、本当にどこまでも道が広がっているみたいです」
「うむ、確かにこれは良い景色じゃな!」
「雪が残っている光景もいいけれど、夏の緑一杯の光景も本当に綺麗なんだよ。やっぱり遮るものがなくて、白い風車と青い空がとても綺麗だね」
旭川を出て、やってきたのは北海道の最北端に位置する稚内へと続くオロロンラインという道だ。オロロンラインは約300キロメートルにわたって、石狩川の河口から稚内市まで続いている道路である。
昔その辺りにオロロン鳥(海鳥)がたくさん集まって来ていたことが由来となっているらしい。
「あれは風車なのじゃな。妾の知っている風車とはだいぶ異なるみたいじゃ」
「あれは発電用の風車だからね。ミルネさんも知っている電気はあの風車を回すことで作り出すことができるんだよ」
ミルネさんが想像している風車は昔ながらの風車だろう。現在の北海道にある風車はかなり高い位置にあって、色も白くて昔ながらの風車とは別物だ。
しかし、見渡す限り地平線のこの場所へ一直線に並んでいるこの白い風車は青い空と海に合わさってとても美しい光景を作り出している。
「この道路を自転車やバイクや車で走ると本当に気持ちが良いんだよね」
「確かにここを走るととても気持ちが良さそうです」
この素晴らしい光景を見ながら自転車やバイクで走るのは最高なんだよな。
ただし、自転車で逆風だった場合はマジで地獄になる……遮るものが何もないから、本気で進むのが大変だったなあ……
「あちらには島も見えますね」
「あれは利尻島だね。利尻富士っていう山があるから、ここからでもよく見えるよ。奥の方には礼文島という島もあるんだよ」
利尻昆布とかで有名な利尻島だ。このあたりはオロロンラインの北の方だから、ここからでも島が見える。オロロンラインの夕陽が沈む姿もとても幻想的である。
「ついにここまでやってきたね。ここが日本最北端の地の宗谷岬だよ。今日は天気がいいから、ロシアのサハリンという地は良く見えるね」
「おお~ここがこの国の最北端か」
「ここまでよく来たものですね」
三角形のモニュメントがあり、その先はすべて海という景色の宗谷岬。ここが日本最北端の地である。
ミルネさんの転移魔法を使ったとはいえ、よくぞここまで来たものだよ。
「このモニュメントは昔少女コミックで見たことがありますね」
「ああ、喜屋武さんも読んでいたんだ。あれは途中までママチャリだったから本当にすごいよね」
昔少女コミックの中で、ママチャリに乗りながら自分探しの旅に出たという話があった。本当にそのままの景色で、俺が始めたここまで来た時には本当に感動したものだ。
やはり日本を旅するならここはきておきたい場所だ。
「ほう~随分と緑が多い場所じゃな」
「ここは知床といって、北海道の東に位置する場所だよ。景色もとても綺麗なんだけれど、絶滅危惧種の生息域なのと、動植物の独自の生態系を示す場所として世界遺産に登録されたんだ」
北海道最北端の地である宗谷岬から一気に東へと進み、知床半島へとやってきた。
ここは世界遺産に登録された場所でもある。流氷が育む豊かな海洋生態系やシマフクロウなどといった世界的にも希少な動植物の生息地が評価されたようだ。
「知床五湖を巡るツアーなんかもあるけれど、今の時期は入れないみたいだね」
「う~む、それは残念なのじゃ……」
「知床付近はヒグマが多く生息しているし、雪に覆われている期間は難しいのかもね」
残念ながら春までは観光ツアーもやっていないようだ。北海道の雪はかなりすごいから、その中で山に入るの難しいのかもしれない。
また、知床付近はヒグマが数多く生息していることはとても有名で、俺が以前ここへ来た時は知床五湖を巡る遊歩道を回る前にはしっかりとした講習を受けなければならない。
……旅中もシカやサルやキツネはよく見かけたんだけれど、クマだけは遭遇したくないよな。クマは時速40キロメートルで走るらしく、自転車でも敵わない。というか、時速40キロとか怖すぎるだろ……
「最北端に続けて、ここが日本最東端の地である納沙布岬だよ」
最北端の宗谷岬に続けて、最東端の納沙布岬へとやってきた。厳密に言うと本土の最東端の地というべきかな。日本の東西南北の最先端の地というのはなかなか難しい。
厳密に言うと、最東端は東京小笠原諸島にある南鳥島という島だ。ここには防衛省や国土交通省の施設があり、気象観測などが行われているが、一般人の立ち入りは禁止されている。
同様に最南端の地である沖ノ鳥島も一般人の立ち入りはできないから、与那国島が最南端の地となるわけだ。
「ここは日本一早く朝日が見える場所で有名なんだよ」
「日本で一番東にあるからそういう訳ですね」
厳密に言うと高い山から見る方が早いのかもしれないが、平地ではここが一番だろう。
俺も旅をしていた時は早起きをして見たが、暁に染まった海の水平線から登って来る陽の光はとても綺麗だったな。





