第88話 北海道① 函館、朝市
「ついにここまでやってきたかあ~」
「沖縄にいたのがつい最近のように感じますね」
やはり日本の北の端まで到達したというのはなんだか感慨深いものがあるな。
そんなわけで、いよいよ北海道にまでやってきた。まあ北の端とは言っても、北海道は広すぎるから、まだ最北端には全然遠いんだけどね。
「ここが北海道じゃな。この国で一番大きな場所と聞いておるぞ」
「そう、ここが一番大きな都道府県になるね。とはいえ、同じ都道府県の中でも北海道というよりも函館という地域で見る方がいいかもしれないね」
当然のことながら北海道は日本で一番大きな都道府県である。北海道だけはバイクであろうと車であろうと回るのは本当に大変なんだけれど、ミルネさんの転移魔法があれば、北海道の主要な場所を回ることができるからな。北海道の大きさはひとつの地方よりも大きい。
函館から最東端の根室なんて600キロ以上離れているし、もはや別の地域である。同じ都道府県内で飛行機移動が必須だもんな。
「ここ函館は北海道の南にある地域だね」
青森県のすぐ北の方にある函館は北海道では札幌、旭川に次ぐ人口第3位の都市である。青森県から函館まではフェリーも出ていて、車やバイクなんかでも海を越えて移動できるようになっている。
「さあ、今日はせっかく早く起きたんだから、まずは函館朝市へ行こう」
せっかくならフェリーを使って北海道入りしても良かったけれど、函館と言えばまずは函館朝市だ。昼も営業はしているけれど、人が一番多いのは朝だから、早起きをして楽しむとしよう。
「おお~これはすごい人の多さじゃな!」
「確かにかなり人が多いですね」
「函館の朝市は有名だからね。それじゃあ一通り回ってみようか」
函館朝市には約250店があって、海産物だけではなく野菜や果物、珍味など様々なものが販売されている。とはいえ一番有名なのはイカ、カニ、ウニ、鮭、昆布などの海産物だ。
たっぷりのカニの身を使った中華まんのカニまん、ブリ節で出汁をとってブリチャーシューを使用したブリ塩ラーメン、釣ったイカをその場でさばいて食べさせてくれるイカ釣りなど、他ではないものも多くあるのでとても楽しめる。
「ぬぬっ、かなり難しいのじゃ……」
「ミルネ様、そっちの方にうまくひっかけるといいらしいですよ」
「むっ、こうか……ぬあ~駄目じゃ!」
そしてせっかくなので、イカ釣りをミルネさんが実際に試しているところだ。小さな水槽にたくさんのイカが泳いでおり、そこにエサの付いていない釣り針を沈め、イカの耳と呼ばれている頭の両側にある部分に針をひっかけて自分たちで釣れようになっている。
何度か針を入れてひっかけようとしているけれど、うまくひっかからずに何度もイカを釣り逃してしまっている。
「やった~釣れたよ、パパ!」
「おおっ、やるなあ!」
「ぐぬぬ……」
ミルネさんの隣でイカ釣りをしていた男の子が見事にイカを釣り上げると、ミルネさんは少し悔しそうだ。普段は大人っぽい仕草をしているけれど、こうやっている時は本当に年相応の女の子に見える。
「やったのじゃ!」
「ミルネ様、お見事です!」
「やったね! かなり大物のイカみたいだよ」
何度か試した後、ミルネさんは大きなイカを釣り上げることに成功した。イカ釣り堀はこうやってみんなで楽しめるから旅行にもうってつけだな。
「おお、まだ動いているのじゃ!」
「綺麗な透明な色をしておりますね。スーパーなどで見かけるイカとは全然違うみたいです」
「獲れたてのイカをその場でさばいてくれるからね。醤油と生姜とイカの内臓を少し加えたもので食べるのもいいね」
そして釣り堀で釣ったイカはその場で店の人がさばいてくれる。新鮮なイカはさばいたばかりだとまだ綺麗な透明な色をしていて、ウネウネと動いている。こればかりは新鮮なイカをさばいたばかりでないと見ることができない。
細切りにしたイカは醤油で食べてももちろんおいしいけれど、こっちの生姜とイカの内臓を加えたもので食べるのもおいしいのである。他にもイカの塩辛、いかめし、イカの沖漬けなど様々な食べ方があって、お酒にもよく合うんだよね。今日の喜屋武さんとの打ち合わせの後はこれとお酒に決定である。
「どの魚も本当に新鮮でおいしいですね」
「うむ。それにしても魚を生で食べるのは本当においしいのう!」
そしてイカ一匹では当然物足りないので、函館朝市の食堂へとやってきた。ここでは多くの店で様々な函館の海鮮を楽しめる。
あまりにもメニューが豊富だから、ここで選ぶのにはとても時間が掛かるんだよね。やはりここは様々な魚を味わうことができる海鮮丼をみんなで選んだ。
「北海道は本当にどの魚もおいしいんだよね」
ウニ、イクラ、サーモン、ホタテ、イカ、カニなどなど。この日本一周の旅の中でも一番楽しみな都道府県だといっても過言ではないからな。さあ、北海道の旅はまだこれからだ。





