第86話 青森県① 青池、竜飛崎
「さてと、それじゃあ気合を入れていくとしますか」
「おーなのじゃ!」
「はい、頑張りましょう」
今日は朝から青森県の白神山地にある十二湖へとやってきている。白神山地とは秋田県から青森県にまたがる13万haにも及ぶ広大な山地帯のことを言い、世界遺産にも登録されている場所である。
白神山地は人為的な影響をほとんど受けていない世界最大級のブナ林が分布している場所で、ここには数多くの動植物が生息および自生している。
「さすがに全部は回らないけれど、それでも結構な距離になるからね」
実は十二湖と言いつつも実際には33個の湖沼があるので、時間的にも体力的にもそれ全部を回ることができない。とはいえ、それをいくつか見て回るだけでもかなり大変なのだ。
なぜ十二湖なのかというと、とある山から見える湖が12個あるから十二湖と呼ばれているらしい。
「今日は天気がいいから気持ちが良いね」
青空の下で緑に囲まれた美しい景色を眺めながら歩いていく。
うん、転移魔法を使って一瞬で目的地に到着できるのはとてもすごいことだけれど、こうやってゆっくりと景色を見ながら歩いていくのも楽しいものである。
八景の池、二ツ目の池、王池、がま池、鳥頭場の池などを回りながら、一番の目的地である青池までやってきた。
「これは美しいのじゃ!」
「ええ、とても綺麗な青色ですね!」
青池はその名の通り青い色で、透き通った青色の池の底には木が沈んでいて、とても幻想的な景色を作り出している。
「他の池とはだいぶ色が異なるのじゃ」
「それにとても透き通った色をしておりますね」
「他の池とはだいぶ異なっているよね。この池の色は自然にこうなったらしいけれど、どうしてこんな色になっているのかはまだ正確には分かっていないらしいね」
青池のこの深い青色はどうしてこんな色になったのか科学的には判明していないようだ。
日本の様々な観光地はどうしてできたのか分からない場所も多々あるのだ。こういう神秘的な場所を回るのも楽しいかもしれない。
「うむ、これはおいしそうなラーメンなのじゃ!」
「注文した時にすごい名前が聞こえたような気もしましたが……」
「まあ気持ちは分かるよ。これは味噌カレー牛乳ラーメンだね。青森の名物ラーメンになっているんだよ」
目の前にあるラーメンは一見すると味噌ラーメンの色に見えるが、そのスープからはカレーの香りが漂ってくる。
1970年代に中高生の間で、いろいろなものとラーメンを組み合わせて食べるということが流行った。その最終形としてこのラーメンが誕生したわけだ。
「ふむ、普通においしいラーメンじゃな。いろいろと入っているようじゃが、なかなかおいしいぞ」
「ええ。美味しいラーメンです。言われてみるとどれもラーメンにあわないスープではなさそうですものね」
「喜屋武さんの言う通り、どれもラーメンのスープとしては見るものだからね」
味噌のコク、カレーの刺激、牛乳のまろやかさに加えて、トッピングされたバターの風味が一体となったラーメンだ。このバランスを作るのにはきっと苦労したんだろうな。
個人的にはカレーの味が結構強く感じて牛乳の味はどこにいったという感じだが、普通においしいラーメンである。
当然と言えば当然だが、このスープがご飯に良く合うんだよね。味の濃いラーメンには白いご飯が鉄板だが、カレーや味噌なんかも白いご飯に会うに決まっているのだ。午前中は結構運動をしてきたから、とてもおいしく感じられる。
「むむ、ここは風が強いのじゃな」
「ええ、かなり強いですね」
「ここは竜飛崎と呼ばれている青森の先だよ。今日は天気がいいから、ここから北海道が見えるね」
この竜飛崎は風が強いことで有名な場所だ。俺も自転車できた時はだいぶ苦労したものである。追い風の時はとても楽だが、向かい風になったら自転車がまったく進めなくなったからな。
ここからは天気がいいと海を越えて北海道が見えるのだ。実際に北海道が見えると、ここまでよく来たと思うよ。
「何かボタンがあるのじゃ」
「それを押すと歌が流れるんだよ」
竜飛崎は津軽海峡冬景色という有名な曲の中に出てくるため、ここにはそれを記念した碑があり、ボタンを押すと歌が流れるのだ。
その歌の中で竜飛崎は竜飛岬とも呼ばれているので、ここを竜飛岬と呼ぶ人も多いらしいな。
そしてここには階段国道と呼ばれる国道がある。急な崖となっているため、車が走れるような道を作ることができなかったため、日本で唯一車の通れない国道があるのだ。
「あとは青森と北海道をつなぐ青函トンネルの記念館もあるよ」
非常に過酷な条件の中で完成したのがこの青函トンネルだ。この記念館ではトンネルの構造や完成までの歴史を学ぶことができるぞ。そしてこの記念館では地下坑道へ行くツアーなんかもあるからおすすめだぞ。





