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第8話 山梨県② ほうとう、武田神社


「ほう、これはいい匂いじゃな!」


「これはほうとうと言って、山梨県の昔からの名物料理だ」


「これがほうとうですか……名前を聞いたことはありますが、実際に食べるのは初めてです」


 たぶん喜屋武(きゃん)さんと同じような人は結構多いだろうな。ほうとうという料理としての名前は結構耳にするけれど、実際に食べられる場所って本当に山梨県に来ないとほとんどないからな。


 ほうとうとは山梨県の郷土料理で、小麦粉をこねて作った幅が広くて短い麺を、カボチャや他の野菜と一緒に味噌仕立てで煮込んだ料理だ。


 麺だけでなく、小さな塊のすいとんを入れることもあるらしい。うどんとは異なり、こねた生地を寝かさないのでコシはなく、麺を最初から煮込むため、スープにとろみがあるのが特徴だ。


「うむ、これまた初めて食べる味じゃが、まろやかで美味しいのじゃ!」


「日本だと大豆に塩と麹を加えて醗酵させた味噌という調味料をよく使っているんだ。今日の朝食に出てた味噌汁もこの味噌を使っているんだ」


 箱根の旅館での朝食にも味噌汁がついてきた。やはり日本人の朝食に味噌汁は欠かせないものである。


「野菜がたくさん入っていて優しい味ですね。確かにうどんとは少し違うみたいです。カボチャが入っているせいか、スープが少し甘みがあります」


「特別に贅沢だったり、美味しいってわけではないけれど、栄養満点で身体が温まるから、寒い時期にはピッタリですよね」


 高級食材が入っていたり、こんなうまいもの初めてたべた……とまではならないが、野菜たっぷりで栄養もある優しい味だ。


 とはいえ、実際の山梨県民はお店に食べに行ったりはしないらしい。基本的には家で大鍋を使って作り、家族で食べるものらしい。


 ちなみに山梨県に住んでいる俺の友人は、ほうとうよりも吉田のうどんのほうが好きと言っていたな。吉田のうどんとは富士吉田市付近で食べられているうどんで、麺が硬くて非常にコシがあるのが特徴だ。


 肉うどんを頼むと馬肉が乗っていたり、すりだねと呼ばれる独特の辛みのある薬味があったりと、普通のうどんとは違う特徴が多く、山梨県の結婚式の締めには吉田のうどんが出てくるらしい。


 ちなみに讃岐うどんや稲庭うどんなど、いろんな地方のうどんがあるが、なぜかここのうどんだけは吉田()うどんと()をつける。以前に友人に吉田うどんと言ったら、のを付けろこのデコ助野郎、と怒られたからな……まあそれほど地元のうどんを愛しているのだろう。


「それじゃあ次の場所に移動しようか」




「ここは武田神社と言って、昔有名だった武将の武田信玄公を祀ってある神社だよ」


「ほう、この国の元国王というわけなのかのう?」


「昔この日本という国はもっとたくさんの国に分かれていたんだ。その中でこの山梨県があった甲斐という国の大名……まあミルネさんの言う通り国王みたいなものだな」


「あの有名な武田信玄を祀っている神社なのですね」


 苛烈な戦国時代で戦をすれば連戦連勝、内政も様々な政策をおこない、民衆の支持もあったというスーパー武将だ。治水工事などもおこない、その堤防は信玄堤(しんげんづつみ)と呼ばれている。


 勝負ごとに強かった信玄公にあやかって、勝運にご利益のあるパワースポットとしても有名な場所である。


「山梨県民は敬意を込めて、絶対に信玄とは呼び捨てにせず、信玄公と呼ぶって聞いたな」


 武田神社のある甲府駅には武田信玄公の像や、その父親の武田信虎公の像まで設置されている。山梨県民は信玄公好きすぎるだろ。


 勝負運ではないが、ミルネさんと喜屋武さんと一緒にこの旅の無事を祈っておいた。




「おお、なんじゃこれは!? 冷たくて甘いのじゃ!」


「「………………」」


 俺達は今、とあるカフェへとやって来ている。


 山梨県で一番有名と言っても過言ではないお土産である桔梗信玄餅、このお菓子を使ったスイーツの桔梗信玄餅パフェを食べている。


 俺と喜屋武さんが驚いているのは、ミルネさんが使っている魔法だ。今の時期は冬なのだが、俺達の周囲は夏の時期のように暑くなっている。これはミルネさんの魔法によって俺達の周囲の気温だけが上がっているらしい。


 パフェやソフトクリームを食べるなら、もう少し暖かい日のほうが美味しいのになと軽い気持ちで言ったら、ミルネさんがこの魔法を使ってくれた。……もはや魔法って何でもありだな。


「冷たくて甘くて舌の上で溶けていくのじゃ! 確かにこれは暖かい日に食べたほうが美味いのかもしれないのう。それにかかっている黒蜜もとても甘いし、このもちもちした茶色い粉のかかった菓子も全部甘くて美味しいのじゃ!」


「あ、ああ……喜んでもらえてなによりだよ」


 ものすごいテンションだな……


 ミルネさんの世界には甘い食べ物自体がそれほどないらしい。そんな人間がいきなりソフトクリームに甘い黒蜜のかかったパフェなんて食べたらこうなってしまうのか……


「……確かにパフェも美味しいのですが、この魔法のほうが気になってしまいますね。パフェを美味しく食べるがためだけに、これほどすごい魔法を使うだなんて……」


 周囲の温度を調整する魔法、これを使えば真冬に冷たい海にでも飛び込めるらしい。魔法の無駄遣い感がものすごい……まあそれを言ったら、転移魔法で日本一周するのも転移魔法の無駄遣いっぽいけどな。


 ちなみに俺も甘いものは大好物だから、この桔梗信玄餅パフェはうまかった。このパフェみたいに信玄餅にソフトクリームを乗せてもうまいかもしれない。


 帰りにミルネさんに宿で食べるおやつとして、桔梗信玄餅をお土産で買っていく。もちろん俺のお金ではなく、喜屋武さんの出してくれたお金だけどな。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

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誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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