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食いしんぼうエルフ姫と巡る、日本一周ほのぼの旅!  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第79話 長野県② 善光寺、木曽路、戸隠そば


「おお、人がとても多いのじゃな」


「ここは善光寺と言って、ここにある御本尊は日本最古の仏像と言われているらしいよ」


 善光寺は約1400年前に創建され、源頼朝や徳川家康など多くの権力者の信仰を集めてきた。とても歴史があり有名なお寺なのだが、実はどの宗派にも属していない無宗派のお寺だ。


 日本の仏教には浄土宗や真言宗などといった様々な宗派がある。しかし、善光寺が創建されたころはまだ仏教の宗派が分かれる前だった。そのため善光寺は宗派の壁がなく、誰でも参拝できることもあって古くから多くの信仰を集めてきたようだ。


 また、善光寺の本堂は国宝に指定されている。


「確か御本尊は見ることができないのですよね?」


「御本尊は絶対秘仏だから、どんな時も見ることができないらしいね」


「そうなのか。それは残念なのじゃ」


 秘仏とは信仰上の理由で非公開にされたまま祀られた仏像だ。お寺によっては決められた日に限って公開される御開帳を行うこともある。


 だが、この善光寺では絶対の秘仏となっており、御本尊が人目に晒されることはない。その代わり、数え年で7年に一度、御本尊の一光三尊阿弥陀如来いっこうさんぞんあみだにょらいの分身である前立本尊を御開帳の時だけ見ることが可能となっている。


 もちろん7年に一度なので、その際は今日の来ている人とは比べ物にならないほどの人がこの善光寺を訪れるらしい。平日の今日でもこんなにこんでいるのなら、7年に一度の日にはいったいどれだけの人が訪れるんだろうな……


 他にも善光寺の入り口にある仁王門には阿吽の像があり、その次に現れる山門は国の重要文化財に指定されている。




「……なるほど、これはなんとも趣深い街並みですね」


「ふむ、妾にとっては普通なのじゃが、皆にとってはこのような建物が懐かしいと感じるのじゃったな」


「そうだね、この辺りの街並みは特に古くてもうほとんど残っていないからね」


 続けてやってきたのは長野県の木曽路だ。江戸時代の五街道のひとつ、中山道は京と江戸を結ぶ重要な街道でその途中にある木曽路は当時宿場街として多くの旅人が泊まっていった場所だ。


 木造建ての昔ながらの時が止まったようなレトロな街並みが続いていく。江戸時代から続く古い町並みそのものがこの木曽路には残っている。また、その街並みの奥には木曽の美しい山々が並び、昔ながらの建築方法で建てられた家々と合わさってなんとも言えない雰囲気を醸し出しているのだ。


 木曽川に沿って深く切れ込む谷間や険しい峠が続く木曽路は山が深く平地の少ない土地柄、独特な文化や風土が残っている。この木曽路に並んでいる店の中には昔からの伝統工芸品を販売している店も多くある。


「ほう、これは美しいのじゃ!」


「これは木曽漆器といって、この辺りで作られている伝統工芸品だね」


 高地にあり、寒冷な気候のこの辺りでは漆を塗る作業に適しているようだ。幾重にも漆を塗って模様や絵が描かれたこの木曽漆器は古き良き日本の文化である。


 他にも江戸時代に木曽の名前を全国に広めた木曽檜や木曽馬などの伝統工芸品は今も木曽の代名詞となっている。それらの伝統工芸品や木曽の街並みを含めて、基礎は日本遺産として認定されている。




「ふむ、これはおいしそうじゃな!」


「ええ、そばのとてもより香りが漂ってきますね」


 晩ご飯は長野県の戸隠まで移動してきて、日本三大そばのひとつのである戸隠そばを頼んだ。


 この辺りには古くから山で修業をする山伏が多く訪れてきた。彼らの携行食料としてそばが戸隠に入ってきたのが始まりと伝えられているようだ。


 戸隠のそばの特徴は、そばの甘皮を取らずにそのまま挽いた挽きぐるみのそば粉を使用しており、水はほとんど切らずに「ぼっち盛り」と呼ばれるひとつのざるに5~6束を馬の蹄のように盛られている。また、ざるであっても海苔は掛けられておらず、薬味には戸隠大根と呼ばれる辛味大根が使用されている。


「おお! 滑らかなのどこしと歯ざわり、そして香りの豊かなそばじゃな!」


「長野県はそばがとても有名だからね。うん、この薬味の戸隠大根も辛味があっておいしいな」


 ミルネさんもだいぶ日本の味というものに慣れてきたようだな。うどんもうまいがそばもとてもおいしい。


 ちゃんと最初はそばの味をしっかりと味わうためにそのまま食べ、少しずつ薬味や付け合わせの地元野菜の天ぷらなどと一緒に食べていく。


 そして香りがとても素晴らしいそばをすべて食べきった後はそばを茹でた際のそば湯をツユで割って最後までおいしくいただいた。


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